179 解析
クォデネンツを前にして意気揚々と腕まくりした俺は、すぐに先行研究を知るのが先だと思い直しソデを元に戻した。
幸い、意味分からんルーシ王国の言葉で書かれていた研究資料の大部分は日本語に翻訳されている。ヒヨリと魔法杖職人0933を招聘する契約を結んだ直後から、せっせと翻訳作業をしてくれていたらしい。
俺が蘇生してからルーシに到着するまでの二年強の年月をバッチリ活かしてくれている。
ありがてぇ、ありがてぇ。研究員の人たちに口で説明してもらうのを想像しただけで胃が口からまろび出そうだ。
俺に分かる言語で書かれた研究資料はこの上なく有り難い。
聖堂地下研究室の隅の本棚の隙間に椅子を置かせてもらい、早速資料を積み上げ片っ端から読み漁る。
翻訳ミスと思われる怪しい言葉使いがけっこうな割合で混ざっていたものの、前後の文脈から類推すれば問題なく読み解ける。
クォデネンツが落下し研究が始まってからの90年余で蓄積された研究成果をわざわざ俺のために翻訳してもらい実質タダで読ませてもらっているんだから、細かいケチをつける方が間違っている。
クォデネンツはコアを除くと全長41mの魔法金属製構造物である。総重量推計は800トン(日によっていくらか増減する)。
表面を覆う黒い魔法金属は銅が変成したもので、女王陛下の銅と呼ばれている。
女王銅はグレムリンで中間処理した銅を長期間高密度魔力に晒す事で精製できる。より大量、より高濃度の魔力であるほど変成が早い。
ルーシの女王は青の魔女よりも保有魔力量が多く、全超越者No.1の絶大な魔力を誇る。
その女王の大魔力をもってしても、女王銅の精製には10年近い歳月を要する。
事実上最短で10年。俺が精製しようとしたら余裕で10000年かかりそう。
そんな女王銅の特徴は二つある。
最強の金属強度と、魔法構造保持力だ。
まず金属強度。
これは地球上のあらゆる物質を凌駕する。
耐力、抗張力、圧縮強度、剪断強度、ねじれ強度、疲労強度、衝撃強度など、あらゆる強度測定指標で既存物質を大幅に上回る。絶対不壊というわけではないものの、僅かな変形にも途方もない力が必要で、物理的な破壊は難しい。
耐腐食性も高い。最強の強酸・王水に溶けないのはもちろん、腐食魔法も全く効かない鉄壁ぶり。
耐熱性すらバカ高く、融解温度はなんと12万℃。融かそうと思ったら原爆並の超高温が必要になる計算だ。
総じて中学生が考えた最強金属みたいなスペックをしている。エゲつない。
なお、聖堂地下研究室はこの女王銅で覆われている。壁を壊して侵入するのは不可能だ。場所さえ分かっていれば転移魔法でヌルっと侵入できちゃうんですけどね。
二つ目の特徴、魔法構造保持力に関しては、無詠唱機構に近いものと俺は解釈した。
女王銅は内部で構築された魔力構造を保持する性質がある。
このあたりは魔法学の分野の話で俺には正確な理解が難しい。
ヒヨリに資料を読んでもらい噛み砕いた説明を頼んだところ、要は電卓計算か手計算かの違いだという話だった。
魔王グレムリンからのリバースエンジニアリングで俺が開発した無詠唱機構は、言うなればパソコン。計算式やプログラムを入力する装置だ。計算式を正確に入力すれば、計算そのものは自動でやってくれる。
一方、女王銅は紙だ。計算式を書き留める事はできるが、計算も自分でやらなければならない。紙に計算式を書いても勝手に答えを出してくれたりはしない。
ルーシの女王はこれを利用し、無詠唱魔法を習得している。
青の魔女がパソコンにプログラムを入力するプログラマーだとすれば、女王陛下は紙を使って爆速で手計算ができる数学者だ。二人とも、別のやり方で無詠唱魔法に熟達している。
幾何学構造グレムリンを使った無詠唱魔法は素早く強力な魔法を行使できる一方で、システム不対応の奇天烈な魔法は使えない。
対して女王銅を使った無詠唱魔法は発動が遅く大規模な魔法ほど構築ミスが起きやすくなるが、魔法学的に可能ならばどんな奇想天外な魔法でも組み立てる事ができる。
それぞれ一長一短と言える。
ちなみに電卓計算と手計算は存在しても、暗算に相当する道具を使わない形式の無詠唱魔法は存在しない。
魔力は基本的に複雑な構造に組み立てようとすると散逸してしまう。空中に魔力を組み上げ魔法を構築しようとしてもすぐバラバラになって消えてしまうのだ。
よく分からんが、道具無しで無詠唱魔法を使うのは無理と覚えておけば良いだろう。
クォデネンツを覆う女王銅には発見時点で既に複雑で強固な魔法構造が封入されていて、一切の外部干渉を弾いている。一定時間で全く別モノに変容する魔法構造は解析も破壊も不可能で、この90年間何百回も試みられてきた女王による解析の全てを拒んでいる。
数学における素数鍵暗号のようなものだ。魔法的暗号を突破しクォデネンツ内部を調べる方法は今のところ見つかっていない。
要するに、クォデネンツは執拗なまでに護りを固める魔法金属によってガチガチにガードされている。
コア部分を除き、物理的に分解する事も、魔法的に解析する事もできないのだ。
唯一解析を受け付け、露出しているコア部分は干渉器グレムリンによって幾らか調査が進んでいる。
コアは不可視のバリアを纏っている。目に見えない次元の捻じれが作り出す壁だ。
普通にやっていては触れもしないコアに対し、最初、ルーシ王国の研究者達はひたすら観察を行った。
温度変化は? 周辺気圧を変化させた場合に反応は? 湿度には反応するか? 音は? 放射線暴露は? 強い光を当てたら? 暗闇に置いたら? もしかしたら生き物かも知れない、食べ物や美味しそうな匂いに反応しないだろうか……
条件を変えては記録をつけ、もちろん独特の幾何学構造とその変化規則についても莫大な記録が貯められていった。
その記録から得られた数値を元に数学者達が数式と格闘し、導き出された公式に基づき立体図を作成し、その立体図通りに製造したのが干渉器グレムリンである。
干渉器グレムリンはクォデネンツのバリアを中和して突破し、コアに接触する事で絶え間なく変形変色するコアの動きを活性化あるいは鈍化させる事ができる。
ただし、コアに接触した干渉器グレムリンは最新型でも0.9秒でヒビが入り壊れてしまう。クォデネンツから逆流する魔力の乱流のせいだ。
クォデネンツのコアは内部機構の変数の生成に二重振り子構造を利用しているらしい。その絶え間なく変化する変数に基づく乱流のような魔力のせいで、干渉器グレムリンにランダムな負荷がかかり、極短時間のうちに破壊されてしまうようだ。
理論上は数学的に変数を特定すれば(そしてそれを組み込んだ干渉器を作れば)コア全体のバリアを恒久的かつ安定的に中和し続ける事ができるという話だが、机上の空論でしかない。
ルーシ王国の研究はだいたいここで止まっている。
研究の副産物としてアレコレ技術が生まれているものの、そういうのは本題ではない。
俺の仕事はクォデネンツから技術を抽出する事ではなく、クォデネンツの異変の原因を特定する事だ。
技術抽出は今やる事ではない。手をつけたら自分で自分を止められなくなりそうだし、ひとまず脇に置いておく。
クォデネンツは解析を拒んでいる。物理的にも、魔法的にも。
そういう機構が最初から組み込まれている。
研究資料を読めば読むほど、俺は製作者の意図を強く感じた。
クォデネンツを作ったか設計したかした奴は、本当に解析されるのがイヤだったんだろうな。
魔王グレムリンみたいに高度で複雑だから解析が難しいというよりも、わざわざこれでもかと難しくしている解析妨害を感じる。解かせる気がまるでない。執念深さすら滲み出る難解さだった。
そしてこんなに執拗かつ入念な設計思想があるのなら……
資料の山に埋もれながら考え込んでいると、肩を優しく揺すられた。
思考の海から現実に引き戻され、ヒヨリから揚げパンと飲み物を受け取る。
「そろそろ休んだらどうだ」
「休んでる、休んでる」
「三日も資料読み続けて風呂にも入らんのは休んでるとは言わない」
「そ、そんなに経った? 道理でなんか頭痛がするわけだ」
俺は呆れたヒヨリに香水をシュッとされ、地上の教会に連行され、沐浴室にブチ込まれた。
いや違うんすよ。これは風呂を忘れていたわけではなくて、クォデネンツが面白過ぎて時間を忘れていただけで。
……なんて思っているうちにいつの間にか眠ってしまい、風呂で寝るという死亡フラグを立てた俺は目が覚めた時には服を着てベッドで寝ていた。
右腕は隣で寝ているヒヨリの枕にされて感覚がない。
丸三日時間も風呂も睡眠も忘れていたの、我ながらヤバ過ぎる。
たまに自分の生活力の無さが嫌になるぜ。
料理はヒヨリより俺の方が上手い。掃除だって俺の方が丁寧だ。アイロンがけは本職より上手い。
でも、なんかこう、根本的にダメなんだよな。ヒヨリが世話してくれなかったらワケの分からんところでアホな死に方する気がする。俺って人生苦手なのかも。
俺が人生のパートナーを起こさないようにそーっと枕にされている腕を引き抜くと、不満そうに唸ったヒヨリは寝返りをうった。何かを探してモゾモゾ動き、寝ぼけたまま俺を捕まえて布団の中に引きずり込んでくる。
す、すごい力だ! とても逆らえない。やってる事は可愛いけど、パワーはゴリラ顔負けだぜ。
「ヒヨリ、ヒヨリ起きろ。マジで。腕千切れそう」
「……ん~?」
むにゃむにゃ言うヒヨリの耳たぶを指でつまんでプニプニして目覚めさせ、起こして、二人で遅めの朝食をとる。今日は饗宴魔法で出した和食だ。
窓の外のやたらと良い眺望を見るに、ここは迎賓館の一室らしい。高層マンションもかくやという広々とした眺めだ。
「ヒヨリは何してるんだ? 俺に差し入れとかしてくれる以外」
「女王に女王銅式の無詠唱魔法を習っている。実戦的ではないが、発想の幅が広がって面白いな」
ヒヨリは味噌汁を啜りながら、ボールペンぐらいの大きさの女王銅の塊を手で振って見せた。
「発動が遅すぎて実戦では役に立たん。思考リソースも取られるし。私向きではないが色々学べる」
「ほー。時間かけてもいいから複雑な魔法使うのとかに向いてそう」
「ああ、そんな感じだな。大利はどのあたりまで解析できた?」
「いやまだ研究資料読み込んでる段階だけど。設計思想の一部と、あと魔法文明の限界は分かったかな」
「ほう」
魔王グレムリンもそうだったが、クォデネンツも外見から見て取れる構造や部品サイズの限界が雑魚なんだよな。
もっと小さく、もっと細かくすればいい部分も無駄に大きく作ってある。
断言するが、部品をわざわざ大きくする意味はない。幾何学構造グレムリンの最適体積問題から考えて、むしろ小さければ小さいほどいい。
にもかかわらず大きく作ってあるのは、それが魔法文明の限界だからだ。
あれほどまでに入念に作られているクォデネンツが、サイズ面で手抜きされているなんて絶対に有り得ない。
魔王グレムリンより見るからに高等なクォデネンツですら部品サイズ問題を抱えているというのならば、それは魔法文明が抱える根本的な技術障壁に違いない。
「つまり不器用な文明だったワケだ」
「いやそんな事は無いだろ。大利が常軌を逸しているだけで……いやそうなのか?」
「そうだろ。グレムリン災害前の地球は、俺と同じかそれ以上の加工精度出せる電子加工機械が世界中で何十万台もバリバリ動いてたんだぜ?」
「大利と話してると常識が狂う。でもまあ、そうか」
思えばグレムリン災害前は物凄い時代だった。
唯一無二の神の腕を持つ俺と同等以上の加工ができる物言わぬ機械が工場にズラリと並び、日夜フル稼働していたのだから。
電気さえ使えていれば、きっとキュアノスクラスの魔法杖を一日で何十万本も生産できただろう。
電気文明、化け物過ぎる。神の如き神域加工で暴れ回る俺ですらあの頃はビックリ芸人程度だったからな。エグい。
それから俺達は飯を食いながら懐かしい大昔の思い出話に花を咲かせた。
こういう話が通じる相手も随分減ったもんだ。火蜥蜴たちもフヨウもグレムリン災害後の生まれだし、あと何十年かしたらグレムリン災害前生まれは長生き超越者だけになり、50人もいなくなる。
なんとなく、ヒヨリが身内と長話をしたがる気持ちが少し分かる気がした。
さて。
それから日々は飛ぶように過ぎた。
ヒヨリは「変わり映えのしない毎日」と言うが、俺にしてみれば毎日が発見だ。
既存の研究資料は一ヵ月で読破し、まずは干渉器グレムリンの改良を行った。
クォデネンツに触れると壊れてしまうのはもう仕方ない。壊れない干渉器グレムリンを作るためには原理的に変数の解読が必須で、俺には変数の解読なんてできない。数学は高校レベルまでしか分からん。
そこで俺は技術的な誤魔化しを行う事にした。
干渉器グレムリンをフラーレン構造グレムリンに閉じ込め接続し、魔力の乱流を分散・循環させて自壊までの時間を先延ばしにしたのだ。
女王の命令で渋々設計に必要な計算を手伝ってくれた研究員たちは、親指サイズの精密グレムリン加工を見て口をあんぐり開けたり腰を抜かしたり眼鏡の買い替えに行ったりした後、手のひらを返したように馴れ馴れしくなりやがった。
なーにが「オーリ=サン」だよ! バカ! やめろマジで!
敬意を払うようになったのは大変よろしい。でも近寄るな話しかけてくんな俺の視界に入るなーッ!!
計算代行はありがとう。でも本当、ビジネスライクで無機質なやり取りに徹して欲しい。俺もそうするからさ。お願いしますよホント。
尊敬してくれるっていうなら、尊敬してる人がストレスでゲロ吐きながらぶっ倒れて痙攣するところなんて見たくないだろ?
大利式改良干渉器グレムリンのおかげで、干渉可能時間は0.9秒から8.8秒に飛躍的に伸びた。
複数個作って連続使用しようとしても、最初の一個が壊れた時点で乱流が酷くなり二個目からは触れた瞬間に壊れる。数時間のインターバルを置かないと干渉器の再使用はできないので、一度にクォデネンツに触れられるのは8.8秒に限られる。
その8.8秒を使い、俺はコアの表層を少しずつ分解していった。
8.8秒もあれば、20パーツはバラせる。
慣れたら25パーツだ。
干渉器グレムリンでコアの変形速度を落としているとはいえちょっと動いているから、動いている物を分解するのは難易度高めだ。それにしたってルーシ王国にいる技術者の一人として同じ事ができないのは意外だった。
最初はサボってるのか手を抜いてるのかと思ったけど、本当にできないんだよな。俺が20パーツを分解する間に1パーツすら分解できない。
王国一のグレムリン職人だという老人が分解しようとして欠損させてしまい、皺くちゃの顔をもっと皺くちゃにしてボロボロ泣きながら帰って行ったのを見て、俺はようやくこの分解作業が自分にしかできないのだと理解した。
クォデネンツのコアに使われている部品は魔王グレムリンに似通った物が多かった。見覚えの無い部品もあるが、見覚えのある部品が九割を占める。
しかしこれは部品取り出しや分解が主目的の作業ではない。
表層を剥がし、奥に何が、どんな構造が隠されているのか調べるためだ。
表面だけを観察していた研究員たちは、クォデネンツの異常の原因を特定できなかった。
ならば内部を見る必要がある。
クォデネンツの変形は不規則で予想がつかない。
が、同じ形状が再び現れる事がある。一度分解した箇所が再び現れた時、分解部分はそのままだ。
破損した部分には黒いモヤがまとわりつき数日で修復されるが、無駄に衝撃を与えず綺麗に分解すれば修復されない。
恐らくこれも魔法文明の限界だ。
俺のような異常ド器用人間の存在を想定していない。だから対策もない。
次元防御を突破され破壊されるかも、と考えていても、分解されるかも、なんて思いもしていない。
流石に分解作戦にも限界があり、分解面積をだいたい一円玉サイズにまで広げたら異常が検知されたのか自動修復が発生してしまった。
だが、逆に言えば一円玉サイズ以下の面積までなら分解してもクォデネンツの警戒をすり抜けられるという事だ。
俺は地道に、ヒヨリに私生活と健康を管理されつつ、ひたすら干渉器グレムリンの製造とそれを使った分解作業に注力した。
初夏にルーシ王国に到着してから季節は移り変わり、迎賓館の客室の窓からたわわに実る小麦畑が見えるようになる。
黄金の畑はやがて刈り跡に代わる。
その刈り跡に初雪が降る頃、俺はクォデネンツに何が起きているのか理解した。
どうやれば異常が止まるかも、そもそも止める事が可能なのかも分からない。
だが何が起きているのかは分かった。
クォデネンツのコアの中には外観よりも遥かに広い空間があり、ワケの分からん意味不明な構造がギッシリ詰まっていた。
その内部空間もコアの形状や色彩の変化に対応して広がったり縮んだり捻じれたり切り替わったりして、もう無茶苦茶だ。
無茶苦茶な内部構造の中には、完全初見の幾何学構造グレムリンもあった。
俺の目では捉えられない、魔力が視えないと視認すらできない構造体もあった。
だが分かるものもあった。
まず、耐圧核があった。
構造的には俺が作った小型地殻杖サラマンドラより段違いに高度で高性能だが、設計思想の根本は同じだから分かる。
サターイシュ真地核論に基づき地核の高温高圧を再現するためのものだ。
クォデネンツは内部で魔法金属を生産していた。
生産された種々の魔法金属は成形され、パーツ毎に組み立てられていっている。
もう一つ分かるのは魔王グレムリンだ。
クォデネンツの内部では、魔王グレムリンが製造されていた。
まだ完成度は六割といったところだが、間違いない。
俺がこの手で完全分解した物を見間違えるはずがない。
クォデネンツのコアの中身で分かるものはその二つだけだったが、その二つで十分だった。
クォデネンツはなぜ近年異常を起こすようになったのか?
地球に落ちてから充分に歳月が経過し、地核を模した耐圧核内部で魔法金属が生成され始めたからだ。
クォデネンツはなぜ魔法金属を生成しているのか?
パーツを製造するためだ。
そしてそのパーツの大きさや湾曲、厚さ、形、数から考えるに、それは極めて大きな人間用の鎧だ。
魔法金属鎧は誰のための物なのか?
魔神のためだ。
魔王グレムリンを製造し、コアとして。
新たな魔王を生み出し、魔法金属の鎧を着せるのだ。
魔王は人型の黒い巨人だったという。
全身が黒いぐちゃぐちゃした触手のような物に覆われていた。
恐らく触手の正体は筋繊維か神経のようなものだったのだ。
それはきっと鎧で覆われ、外殻を得て初めて十全に機能する。
クォデネンツは、かつて危うく人類を滅ぼしかけた魔王の完全体……
「魔神」と仮称する超存在を生み出そうとしていた。





