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不気味なほど綺麗です
卓上には、青い花が一輪置かれていた。
葉と茎にトゲがあり、八重咲きの花弁は分厚く折り重なっている。
「綺麗ですね。綺麗すぎますね。綺麗以外をそぎ落としたみたいです」
「面白いこと言うね」
「不気味なほど綺麗です」
「不気味なんだ」
「だって、これ花びらだから綺麗かもですけど。生き物の歯とかがこんな重なり方してたら気持ち悪くないですか」
「確かにね」
「でもまあ、嫌いじゃないです」
エストラゴンはトゲに触れないようにそっと花を持ち上げ、蝋燭の光で透かすようにゆっくりと眺めた。
「色も香りも形も人好みですが、生き物としては少々歪です」
そのまま、花を蝋燭に近づける。
花弁は、一枚ずつゆっくりと燃え落ちていく。
「嫌いじゃないですとも。実にエスちゃん好みです」




