10. 兄としてのプライド
10. 兄としてのプライド
オレは夢を見た。どこかわからないが、とても幸せな気分になった。隣にいるのは……誰だ?
目が覚めると、カーテンの隙間から、眩しい朝日が差し込んでいた。枕元のスマホを手に取り、時間を確認すると朝7時を回ったところだ。
今日は日曜日なのに……ずいぶん早起きをしてしまったようだ。二度寝をする気にはなれず、リビングに向かう。
リビングの窓から見える空は、まだ薄い藍色を残しつつも、徐々に明るさを増していた。遠くの山並みが、朝日に照らされてシルエットのように浮かび上がっている。鳥たちのさえずりが、静かな住宅街に響き渡っていた。
「せっかくだから、怜奈の分も朝食を作ってやるか。」
冷蔵庫を開け、食材を確認する。昨日の残りの野菜とベーコン、卵がある。これなら簡単にオムレツが作れるだろう。手際よく野菜を切り、ベーコンを炒める。卵を溶き、牛乳とチーズを加えて混ぜ合わせる。フライパンにバターを溶かし、卵液を流し込む。手早くかき混ぜ、半熟になったら具材を包み込む。ケチャップで飾り付ければ、彩り豊かなオムレツの完成だ。
トーストを焼き、サラダを盛り付け、コーヒーを淹れる。食卓に並べれば、なかなか豪華な朝食になった。
時間は8時を回る。朝食の準備が出来たタイミングで、怜奈が寝ぼけ眼を擦りながら起きてくる。
「おう、おはよう」
「へ?」
怜奈は、状況が飲み込めないといった表情で、目をぱちくりさせている。
「朝飯作ったから、一緒に食べようぜ?」
「これは夢?私まだ寝ぼけてる?」
「お前はちゃんと二本足が地面についてるぞ」
「じゃあなんなの!?おにぃが料理作るとか気持ち悪いんだけど!?しかも私の分まで……熱でもあるんじゃ……」
「お前の兄貴はそんなに信用ないのか」
「いや……なんか怖い……」
「おいこら。さすがに傷つくからやめてくれ。まぁいいから座れよ」
「うわぁ……」
「なんだその顔は?文句あんのか?」
「いや……なんか変なものでも食べたんじゃないかって」
「そこまで言うか?」
「おにぃが……おにぃがおかしい!どうしよう!」
「おかしいのはお前だ。なら病院行けよ」
「おにぃが正論言ってる!?」
……あとでボコしておこう。そんなやりとりをしながら、オレと怜奈は朝食を食べる。
「なぁ怜奈。お前さ。彼氏いるの?」
「セクハラ」
「いや……兄としてだな?」
「そう言うおにぃこそどうなの?高校生になったんだから、いい加減彼女でも作れば?どうせ出来ないと思うけど?」
怜奈は、なぜかムカつく顔をしながらマウントをとってくる。ほう……なら戦争だ。
「バカ野郎。オレにだってそう言うお相手くらいいるぞ?」
「え?あっ……二次元は入らないよ?」
「知ってるよ!なめんな!」
「どうせブスでしょ」
「いやもう超絶美少女!身長がこのくらいで、黒髪のロング……」
オレは、つい高宮さんの特徴を言いそうになる。待て待て!なんでここで高宮さんが出てくる!別に付き合ってないだろオレ!そんなオレの慌てぶりを見てか、怜奈がニヤつきながら声をかけてくる。
「ほら嘘だ」
「嘘じゃねぇよ!」
「じゃあ明日学校終わったら連れてきてよ」
「え?」
「なに?」
くそっ……妹のくせに生意気な……でもオレにも兄としてのプライドがあるんだよ!とか思ったが、オレはなんて浅はかな事をしてしまったんだ。こんなことになってしまった以上、高宮さんを連れてこないわけにはいかないじゃないか。
「わかった……絶対に連れて来る」
「大丈夫?なんか引くに引けない顔してるけど?」
「そんな顔してねぇし!」
「ふーん。なら楽しみにしてるね?嘘ついたら今年いっぱいアイスおごってもらうから」
「鬼畜すぎるだろ……いくらアイスが安いとは言え、破産するわ」
「じゃあやっぱり嘘なんだ」
「嘘じゃねぇって!」
「ふ~ん。あっそ。まぁ期待しないでおくけど」
「それはそれで腹立つな……」
こうしてオレは、まだ許可すらとれていない高宮さんを家に連れて行くことになった。
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