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はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~  作者: さとう
第六章・『愛教徒』ラピュセル・ドレッドノートの試練

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女神聖教七天使徒『愛教徒』ラピュセル・ドレッドノート⑤/本体を叩け

 エルクは、襲い掛かる『使徒』たちを次々と撃破する。

 両手に『念』を込め、向かって来る使徒たちに向かって放つ。そして、建物の上から魔法やスキルで攻撃してくる使徒相手には、小石を飛ばしてぶつけたり足元を破壊して落下させたりする。

 そして、使徒が持っている武器に干渉。剣や槍を念動力で取り上げて飛ばしたり、大勢で向かってくるなら、校舎の壁を切り取り押しつぶした。

 五十名ほど倒し、エルクはつぶやく。


「キリがないな……攫われた生徒たちだけなら、まだまだいるだろうけど、いきなり全員を投入するとも思えないし……むぅ」


 さらに、不思議なことが起きていた。

 エルクが倒した生徒たちが、気を失ってから数十秒後に溶けるように消えてしまうのだ。まるで、負けたら安全なところへ消える仕掛けを施してあるような。


「まぁいい……襲ってくるなら、潰すだけだ!!」


 使徒の次は、攻撃特化のナイトが数十体に魔法特化のビショップが数十体。防御特化のルークが数十体に、ポーンが百体以上……いくらグラウンドが広くても、この数相手では狭く感じた。

 だが───……エルクには関係ない。


「数で俺をどうにかできると思ってるなら───それは悪手だ」


 ◇◇◇◇◇


「───……っつ」


 ラピュセルは、チクリとした痛みに胸を押さえた。

 チートスキル『愛迷宮(ブリリアント)神の試練(ラピュリントス)』は、ダンジョン精製の能力。発動すれば無敵に近いが───弱点もある。

 それは、ダンジョンの破壊。

 ダンジョンが破壊されれば、そのダメージは全てラピュセルに還る。

 だが、普通はあり得ない。そもそも、ダンジョンというのは特性上、破壊できないのだ。

 あり得ない。本来ならあり得ない……でも、エルクの『念動力』は、校舎を破壊しグラウンドの大地を砕く。そのダメージが、ラピュセルの身体に還っていた。

 チクチクと、小さな針で胸を刺すような痛み。大したダメージではないが……痛いのは痛い。


「……チッ」


 ラピュセルは舌打ちし、チラリと宙に浮かぶチェスの駒を見る。

 ひとつのダンジョンに一度ずつしか押印できない特別な駒。『キング』と『クイーン』

 こうして考えている間にも、エルクは『ダンジョンモンスター』を破壊していた。


「…………」


 しばし、考える。

 『計画』は順調に進んでいる。ロロファルド、エレナはよく働いている。

 ラピュセルの『試練』も、順調に進んでいた。

 そして───ラピュセルのいる『大聖堂』のドアが開く。


「大聖堂……ん? おい、誰かいるぞ!」


 入ってきたのは、数名の男女。

 教師を含めた、二学年の生徒たちだ。

 二年生を担当する教師のマックスは、ラピュセルを見て厳しい顔をする。


「お前……何者だ」

「私は、ラピュセル・ドレッドノート……あなた方に『試練』を与えし、女神聖教の神官です」


 ラピュセルは、聖母のような笑みを浮かべた。

 女神聖教。

 教員の間では最も警戒する名前で、生徒の間では『S級危険組織』として知れ渡っている。

 マックスは、生徒たちに言う。


「全員、戦闘態勢───ダンジョンの魔獣と同じか、それ以上と考えて行動しなさい。相手が人間の姿をした魔獣、そう思い確実に始末するように」


 二年生たちは、武器を構えスキルの使用準備をする。

 新入生とは違う。実戦を経験し、経験を積んだ冒険者としての姿があった。

 マックスは、生徒に命じる。


「あいつが、この異常事態の犯人に違いない。全員───戦闘開始!!」


 二年生たちは、ラピュセルに向かい、攻撃を開始する。


「───……ふふっ」


 ラピュセルは妖艶に微笑み、両手を広げた。


 ◇◇◇◇◇


 グラウンドに集まった『ダンジョンモンスター』を、エルクは全滅させた。

 やや地形が変わってしまったが、エルクは見ないことにした。

 そして、叫ぶ。


「お~いっ!! もう終わりかぁぁぁっ!?」


 ───……だが、返事はない。

 エルクは舌打ちし、眼帯マスクとフードを外し深呼吸。


「くそ……このままで、本体に近づけるのか」

「エルク……」


 シルフィディがエルクの周りを飛ぶ。


「ごめんね。あたしもここがよくわからないの……まるで、ごちゃごちゃに絡まった糸みたいな」

「わかってるよ。ありがとな、シルフィディ」

「うぅ……」


 落ち込むシルフィディを、人差し指だけで撫でる。

 なんとか対策を考えなければ。エルクがそう思っていると。


『皆さん、初めまして。私は女神聖教、『愛教徒』ラピュセル・ドレッドノートです』


 エルクの動きが止まった。

 

「この声……」

『我が「試練」を乗り越えた者たちには、『新たなる世界』への道が開かれることでしょう……さぁ、皆さん、私の元へ───……』


 声が途切れた。


「ラピュセル・ドレッドノート……女神聖教の神官。こいつが学園をダンジョン化した奴か」


 さて、どこを目指せば到着するのだろうか。


 ◇◇◇◇◇


 ヤトは、ミゲルの部下を一太刀で斬り伏せていた。

 大したことはない───……と言いたいが、全員のスキルレベルが異常なまで高い。新入生たちのスキルレベルは平均で10~30程度。スキル進化した生徒は、全体の二割もいないはず。


「チッ……女神聖教が何かしたのね」

「はぁッ!!」


 剣士の少年の振り下ろしを六天魔王で受け流し、両腕を切断した。

 確かに強い。だが、まだヤトのが強い。

 ヤトの遠慮がない一太刀は、四肢のどれかを必ず切断した。なので、使徒たちも迂闊に近寄れない。

 そして……ソアラは、肩で息をしていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「クヒヒ、どうした? ずいぶん息が上がってるじゃねぇか」

「…………むぅ」


 ミゲルのスキル。

 ミゲルは、背中から四本の『触手』が生えていた。

 対して、ソアラの両手には三本の鉤爪が、皮膚を突き破るように伸びている。

 互いの共通点……ソアラは舌に、ミゲルは背中に『紋章』のようなものが浮かび上がっていた。


「驚いたぜ。まさか同類とはな」

「わたしも驚いた……でも、なんか嫌」


 ミゲルのスキル、『嫉妬(エンヴィー)』……ソアラと同じ、七つしかないレアスキル。

 レベルという概念がないスキルであった。

 能力は、背中に生えた《触手》の操作。感情によって触手の数が変わる。


「お前も、あっちのお前も合格だ。くひひ、ラピュセル様の最終試練を受ける資格があるぜ」

「最終試練……なに、それ? さっきも、放送で言ってた」

「簡単さ。女神聖教に入るに相応しいかどうかの試練ってやつだ。最初に攫った連中は、あくまで今回の『試練』で使う寄せ集め……本当の誘拐は、こっちの方だ」

「なっ……」

「人、いないだろ? 数千人いるはずの生徒……いくらダンジョン化した学園内でも、誰とも会わないのは不自然だろうが。すでに、『選別』をして女神聖教本部に送られている」

「そんな……」

「ま、使える生徒だけしか攫ってないけどな。三学年が留守ってのもイタかったわー」

「……っ」

「さーて、ここまでだ。お前たちには最終試練を受けてもらうぜ───……じゃあな」


 ソアラを触手で弾き飛ばし、ミゲルは近くのドアを開けて消えてしまった。

 そして、ヤトが斬り伏せた生徒たちも消え、残った生徒たちもドアを開けて消えて行く。


「───……聞いていたわ。どうやら、かなり厄介なことになってるわね」

「…………」

「……なに?」

「へんなの。ヤト、なんだかうれしそう」

「…………そう?」


 ヤトは、この状況が楽しいのか───笑っていた。


 ◇◇◇◇◇


 ミゲルは、ソアラたちを撒くと同時に触手を消した。

 仕事は大体終わり。ソアラには言っていないが、最終試練を突破した生徒はまだ三十名もいない。ほとんどの使徒は倒され本部へ送られ、ミゲルたち聖使徒も撤退が近い。

 

「くひひ、楽しくなってきたぜ」


 ミゲルは薄暗く笑い、帰るために『撤退』スキルを持つ部下を呼ぶ。


「さ、撤しゅ


 次の瞬間、ミゲルの全身が硬直した。


「みーつけた……」


 そこにいたのは、黒い案山子、翼を広げたカラス。

 そうではない……女神聖教が最も危険視する『八人目』の神官候補にして、最大の裏切り者である少年、エルクだった。

 ミゲルは、指一本動かせない。ニヤけた表情のまま凍り付く。

 そして気付く。部下が全て倒れていた……念動力による当身で、気を失っていた。

 エルクはフードと眼帯マスクを外し、ミゲルの肩をポンと叩いた。


「ラピュセル・ドレッドノート。こいつのいる場所に案内してもらおうか」


 貼り付けたようなエルクの笑みに、ミゲルは屈服してしまった。

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〇はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
レーベル: CLLENN COMICS / コミックREBEL
著者:さとう (著)
漫画:うなぽっぽ (著), トダフミト (著)
発売日:2024年 7月 21日

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
連載中です!
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― 新着の感想 ―
[良い点] やっべえな くっそ面白い今ぴか一だな 更新頻度もクオリティもやばすぎ 天才作者様
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