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はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~  作者: さとう
第六章・『愛教徒』ラピュセル・ドレッドノートの試練

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異変のはじまり

 授業を終え、エルクは寄り道せずに寮へ戻った。

 寮に戻ると、ソフィアが談話室のソファで静かに眠っている。テーブルの上にはたくさんの本があり、どうやら勉強をしているようだった。

 エルクは、静かに談話室を横切る……が、ソフィアは起きてしまった。


「ん……ああ、寝ていたようです。お帰りなさい、エルクくん」

「ただいまです。すみません、起こしちゃって」

「いえ。ん~~~……っ」


 大きく伸びをするソフィア。

 眼鏡をくいっと上げ、いつものように微笑んだ。


「さて、勉強はここまでにしますか」

「あの、ソフィア先生は何の勉強を?」

「いろいろです。正規教員になるには、難しい試験を突破しないといけませんから」

「大変ですね……」

「ええ。でも、やりがいがありますから。ところでエルクくん、早い帰宅ですね」

「はい。今日、新しく寮に入る子がいまして。授業が終わったらすぐに来るって言ってたんで、出迎えをしようかと」

「なるほど。ソアラさん、でしたね?」

「はい」


 エルクは自室へ戻り、荷物を置いて私服に着替えた。

 すると、エルクが一階に戻ると同時に、ソアラが荷物を抱えて寮へ来た。


「やっほー」

「エルク、やっほー!」


 ソアラと、ソアラの頭に座るシルフィディだ。

 シルフィディは、寮内を飛び回り、ソファにダイブして転がった。

 ソフィアは、ソアラに挨拶する。


「初めまして。この寮の監督教師、ソフィアです」

「はじめまして。ソアラです。よろしくです」


 ペコっと頭を下げると、シルフィディがソファから飛んでソフィアの目の前へ。


「あたし、シルフィディ! よろしくねっ!」

「はい。よろしくね」


 ソフィアは、シルフィディの小さな頭を優しく撫でた。


「女子寮ですので、私が案内します。部屋はこちらです」

「はーい」

「はーいっ!」

「それと、ささやかですが、今夜は入寮パーティーを開きますから、期待しててくださいね」


 ソアラとシルフィディ、カヤの入寮パーティーだ。

 その後、ソフィアと一緒に寮内を案内し、マーマを紹介した。

 そして、エマやニッケス、ヤトとカヤ、ガンボにフィーネが帰宅。ソアラと、改めてカヤを紹介。マーマが腕を振るい、歓迎パーティーを開いた。 

 エルクたちは、大いにパーティーを楽しんだ。


 パーティーの翌日、学園が大惨事になるとも知らずに。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 ガラティン王国郊外。

 正門へ続く街道を、百名以上の人間が規則正しく歩いていた。

 それは、女神聖教の部隊。

 一隊二十名、計五部隊。二十名の隊を率いる、五人の『女神聖教』の聖使徒。

 使徒の中でもワンランク上の使徒。それが聖使徒。

 聖使徒の一人にして『聖典泰星』部隊隊長のサリッサは、女神ピピーナの紋章が刻まれたローブを着て、笑顔を浮かべていた。


「フフッ……ついに、ついに初陣ですわ」


 サリッサの浮かれっぷりが気になったのか、兄にして『飛天皇武』部隊隊長のロシュオは言う。


「おい、真面目にやれよ。これは、女神聖教にとって重要な任務だ」

「知っていますわ。それに、ダンジョンで無様な姿を見せたお兄様に、『真面目にやれ』と言われましてもねぇ……?」

「何ぃ?」

「ふふ、フフフ……エルクお兄様は、私が屠ってみせましょう。『念動力』対策はバッチリですから」

「へっ、生爪剥がされて泣いてたお前が、兄貴を屠るだと?」

「ええ。まぁ、楽しみにしててくださいませ。ピアソラ様の『チートスキル』で進化した、私のスキルを」

「けっ」


 ロシュオは吐き捨てるように舌打ちする。

 すると、『虚無』部隊の隊長である少年カイムが言う。


「貴様ら、少しは黙って歩けないのか? この、裏切り者の血筋が」

「「あ?」」


 裏切り者の血筋。

 それは、女神ピピーナの愛を受け取りながら、女神聖教に属さない『八人目』にして、チートスキルで同胞を屠る悪しき『死烏(スケアクロウ)』エルクの弟、妹であるロシュオとサリッサを侮蔑する言葉。

 ロシュオとサリッサが殺さんばかりに睨むが、カイムは鼻を鳴らす。

 すると、『聖女』部隊隊長である少女アマリリスが仲裁に入った。


「もう、いい加減にしなさい!! これから大事な任務なのに、喧嘩しちゃダメでしょ? メッ!!」

「「「…………」」」


 ロシュオ、サリッサ、カイムは「メッ」と子供を叱るように笑みを浮かべるアマリリスを見て呆れていた。今時、誰も「メッ」なんてやらない。

 それを見ていた『愛教徒』部隊隊長の少年ミゲルは「クックック」と薄暗く笑う。


「くっだらねぇ。クヒヒ……お前らみんな、死んじまえばいいのに」

「おいミゲル、お前今なんつった?」

「別に……」


 ロシュオがキレるが、すぐにアマリリスが割って入り「メッ」をする。

 それがウザったいのか、頭をボリボリ掻いてアマリリスから離れた。

 そして───……目的地に到着。


「指示があるまで待機。始まったら……暴れていいんだよな」


 ロシュオが確認するが、誰も返事はしない。

 総勢約百名の『女神聖教』の使徒たちは、静かに待ち続ける。


 ◇◇◇◇◇◇


 ガラティン王国の宿屋で、ロロファルドとエレナは串焼きを食べていた。


「あーんっ……ん、いい塩味だねぇ」

「あなた、緊張感ないわねぇ」


 エレナが苦笑するが、ロロファルドは串焼きを掴み口の中へ。


「腹が減っては戦が出来ぬ……だっけ?」

「ヤマト国の『コトワザ』だったかしら。何事も準備が大事……そんな意味だったかな」

「うん。これから楽しくなるんだ。いっぱい食べておかないとね」

「ふふ、そうね」

「エレナ。ラピュセルの試練だけど……」

「知らないわよ。というか、何が試練よ……ラピュセル、ほんと頭おかしいわ」

「あ、やっぱりそう思ってた?」

「ええ。でも、信者を増やすにはちょうどいいわね。ラピュセルの『チートスキル』は、こういう『お遊び』にはピッタリだから」

「ん、そーだね。っと……はぁ、お腹いっぱい」

「食べたら行くわよ。夜明けと同時に、始まるわ」

「ん……ふふ、エルクさん、楽しみに待っててね」


 ロロファルドは、串焼きの串をポキッとへし折り、ニヤリと笑みを浮かべた。


 ◇◇◇◇◇◇

 

 夜明け。

 太陽がゆっくり登り、エルクの部屋のカーテンの隙間から日が差した。

 ちょうど隙間からの光が、エルクの目を照らしエルクは、ゆっくり目を開けた。


「ん、ふぁぁぁぁぁ……う~、昨日騒ぎ過ぎた」


 昨日は、歓迎会だった。

 たくさんのご馳走、ミニゲームで大いに盛り上がった。

 ソアラは楽しんでいたし、カヤも……笑っていたと思う。

 新しい仲間。エルクは、学園生活がまた楽しくなった。

 ベッドから起きると、足下からシルフィディがコロンと落ちた。


「ぅぅ~……いっぱい寝すぎたぁ」

「そりゃよかった。ほら、起きろ」

「はぁ~い」


 シルフィディは目を擦り、フワフワ枯葉のように舞う。まだ眠いのだろう。

 エルク苦笑し、顔を洗うため洗面所へ向かおうとドアを開けた───……。


「───……え?」

「…………え」


 ドアを開けると、そこにいたのは……全裸のヤトだった。

 全裸、全裸だった。

 上も下も何も付けていない。濡れた髪を拭くため、両手を使いタオルで拭いている。

 腕を上げているため、身体がばっちり見えていた。


「…………」

「…………」

「……………………っひ」


 エルクは無言でドアを閉めた。


「…………ああ、夢か」


 エルクは静かに頷き───……その場にしゃがみ込む。

 顔が真っ赤になっていた。

 初めて見た、異性の肌。

 上も下も、ばっちり見てしまった。

 

「な、なまなま、なまなま、しい……っう」


 鼻血が出そうになった。

 おかしい。夢にしては生々しすぎる。


「…………も、もう一回だけ。うん、やましい気持ちはない。夢だと確認するため。うん」


 エルクはもう一度、静かにドアを開けた。


「うおっ!?」

「…………」


 ドアの先にいたのは、全裸で今まさにパンツを履こうとしているニッケスだった。

 どうやら着替え中……エルクは静かに笑い、ドアを閉めた。

 恐ろしいくらい、頭が冷えた。


「……おかしい」

「ね~エルク、ね~ね~」

「ちょっと待った。おかしい……なんだこれ? 夢なのか? 部屋のドアがおかしい」

「エルクってばぁ~」

「あ~もう、なんだよシルフィディ」


 シルフィディは、眠そうに眼を擦りながら───……言った。


なんか(・・・)ダンジョンの中に(・・・・・・・・)いる感じがするー(・・・・・・・・)

「……は?」

「あのね、あたしがいたダンジョンと同じなの。このへん全部、ダンジョンみたい」

「ダンジョンって……ここが?」

「このへんぜ~んぶ」

「この辺って……学園が?」

「うん。そのドア、へんなところに繋がってるよ」

「…………」


 エルクはようやく、これが夢ではないと自覚した。

 そして、思いつくのは一つ。


「女神聖教……ああもう、こんな大規模な力、他にないだろうが」


 エルクは、戦闘服を引っ張り出す。

 机の上に置いておいた、歓迎会の残りのクッキーを口に入れ、残り物のジュースをがぶ飲みした。

 シルフィディにも食べさせる。


「ん~おいしい!」

「シルフィディ。たぶん敵が来た。俺から離れるなよ」


 戦闘服を着て、眼帯マスクを付けてフードを被る。

 籠手を装備し、手首を何度か反らしてブレードを確認し、コートの内側に収納している短矢を確認する。そして、首をコキコキ鳴らし、肩をグルグル回した。


「ったく、朝っぱらから学園を巻き込んでの襲撃か……誰だか知らないけど、やってやろうじゃねぇか」

「エルクエルク、あたしもお手伝いするっ!」


 ダンジョン化したガラティーン王立学園。

 エルクはドアノブに手をかけ、深呼吸をして勢いよく開けた。

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〇はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
レーベル: CLLENN COMICS / コミックREBEL
著者:さとう (著)
漫画:うなぽっぽ (著), トダフミト (著)
発売日:2024年 7月 21日

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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
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