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はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~  作者: さとう
第六章・『愛教徒』ラピュセル・ドレッドノートの試練

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体育という名の拷問

 午後の授業は、『体育』だった。

 スキルを使わない身体作りがメインの運動で、どんな強力なスキルを持っていても、体育の授業だけは全員が平等だ。

 エルクたちは、戦闘服ではない学園共通の『運動着』に着替え、訓練場に集まっていた。

 体育の授業を監督するのは、体育教師のジャコブだ。

 筋肉のせいでパッツパツのランニングシャツ、迷彩柄のズボンに鉄板入りブーツ。右腕から背中にかけてファイアパターンの刺青が入り、刈り上げた頭には火傷の跡、そして右目に眼帯を付けていた。

 日焼けなのか、全身が浅黒い……はっきり言って、滅茶苦茶怖い教師だ。

 ジャコブは、整列した生徒をジロリと見て言う。


「ダンジョン実習、ご苦労だった」


 声が低い。渋い声だった。

 ジャコブは口を歪めつつ言う。


「ダンジョン実習で学んだはずだ。お前たちに足りないのは何だ?……そこのお前」

「あ、はい」


 ジャコブはエルクを見て人差し指を差す。

 エルクは少し考え、思ったことを言った。


「迷子になった時の心得ですかね?」

「違う!!」

「じゃあ……ダンジョンの地図?」

「違う!! お前らに必要なのは、体力だ!!」

「体力……」

「そうだ!! どんなに強力なスキルを持っていようが、それを使うのは人間だ!! 特に、身体強化系、武装系のスキルは肉体の強さに依存する。いくら強力な『剣術』スキルでも、使う人間の体力が尽きればそこまでだ!! つまり、お前らに足りないのは体力だ!!」

「なるほど」


 エルクは「尤もだ」と言わんばかりに頷いた。

 ジャコブは片足を上げ地面を踏む。それだけで振動が起き、地面に亀裂が入った。


「体育の授業では、お前らの身体を徹底的に苛め抜く!! 息切れの起こさない心肺機能、鋼の筋肉、そして技を使う技術を、1年で叩きこんでやる!! 覚悟しておけ!!」


 ジャコブの覇気に、半数以上の生徒が青くなっていた。

 ちなみに、エルク以外の者も知らない。ジャコブの『体育の授業』についていけず、毎年何人もの生徒が学園を去っていることなど。

 ジャコブは叫んだ。


「まずは、訓練場の周囲を全力疾走で100周!! できなかったモンにはペナルティを課す!! さぁ行け!!」


 ピシャアン!! と、ジャコブが地面を踏むと亀裂が入った。

 生徒たちは、慌てて全力疾走で訓練場の外へ走り出した。


 ◇◇◇◇◇


 エルクは、本気のダッシュで訓練場の外周を走っていた。

 最初は全員が全力だった。だが、数分もしないうちに、半数以上がダウン……ジョギングと同じような速度になっている。

 エルクに付いてくるのは、数人。


「はっはっはっはっはっはっはっはっはッ!!」

「ひっひっひっひ、ひぃぃっひっひぃぃっ!!」

「ふっふっふっふっふっふっふっふっふっふ!!」

「はっはっはっはっはっはっはっは、っふぅぅぅ!!」

「はーっ、っはーっ!! っはーっ!!っはーっ!!」


 ガンボ、フィーネ、エルウッド、ヤト、カヤの5人だ。全員、呼吸が荒く大汗を搔いている。エルクが振り返ると、信じられないという顔でエルクを見た。

 エルクは、呼吸がほとんど乱れていない。


(ちょろいな)


 そもそも、エルクに体力を求めること自体、間違っている。

 年数にして数百年以上、エルクはマラソンやダッシュに人生を注いで生きた。魂だけの経験でも、その経験は肉体に反映される。たった数十分程度の全力疾走など、エルクにとって歩くのと変わらない。

 ちなみに、二千年分の鍛錬が全て肉体に反映してしまうと、恐ろしい生物に変貌してしまうため、得た体力などはそのままで、普通の体型にしたのはピピーナであった。


「ほう……なかなか見どころのある新入生だ。スキルの使用もない、純粋な体力だな。それと……ペースは落ちているが、喰らい付く連中もなかなかだ」


 ジャコブがニヤリと笑い、顎を撫でる。

 それから、エルクだけが全力疾走となり、他の生徒は全員グロッキー状態となり、外周ダッシュは終わった。

 エルクは、大した汗も流さず訓練場へ。

 すると、大汗をかき肩で息をしているガンボが言った。


「おま、マジで、どうなって、んだ……はぁ、はぁ……体力、おか、しい、ぞ」

「いや、昔からマラソンは得意でな」

「そういう、次元、じゃ、ねぇ、だろ……」


 そんなことを言っても、エルクは疲れていない。

 他の生徒を見ると、エルクを見る目が「信じられない……」という感じだった。

 訓練場でグロッキーな生徒たちを見てジャコブが言う。


「だらしのない連中だ。上級生など、この程度準備運動にもならないぞ。おい、そこのお前……エルクだったな?」

「あ、はい」

「お前は見所がある。では、さっそく次だ。次は組み手を行う!! 二人一組になり、スキル、武器なしで格闘戦だ!! いいか、喧嘩ではない、あくまで格闘戦、武術だ!! 冒険者を目指す者なら、ある程度の武術の心得はあるだろう。それを使え!!」


 生徒たちは、フラフラになりながら構えを取る。

 すると、ジャコブが言う。


「エルク。お前はオレとだ」

「え」

「お前、武術の心得もあるな?」

「はい、いちおう……」

「ふ、面白い……いいか、スキルなしでの武術だ。全力で来い!!」

「……わかりました」


 エルクは構えを取る。

 

「では行くぞ!!」


 ジャコブが両腕を顔の前で構え、エルクに向かって走りだす。

 エルクは左手を前に、右手を胸の前で構え迎えうつ。


「ッシ!!」


 ジャコブの左ジャブを、左手で叩き落とす。


「む……ッシ!! っしっシッシ!!」

「───ッふ」


 エルクの左手がジャコブのジャブを叩き落す。

 三発目のジャブを叩き落すと同時に、エルクはジャコブの懐に潜り込み、身体を反転させて右の肘撃ちでジャコブの胸を叩き、そのまま右手を上げて顔をパシッと叩く。ジャコブは目をつぶってしまう。

 エルクは態勢を低くし、左ハイキックをジャコブの側頭部へ叩きこむ。

 ジャコブの身体が揺れた瞬間、連続で拳をジャコブに叩きつけた。


「っぐ、っが……ぬぅぅっ!?」


 ジャコブはバックステップ。顔を振り、痛みに顔をしかめる。

 エルクは構え、ジャコブを迎え撃つ態勢を作った。


「……ここまでだ」

「あ、はい」


 エルクはあっさり構えを解く。

 気が付くと、生徒たちはエルクとジャコブの演武に釘付けだった。

 ジャコブは、汗をたらりと流す。


「お前、師は?」

「えーっと……神様です」

「はははっ! まぁ、そう簡単に聞けるとは思っていない。まさか、このオレをあっさり返り討ちにするとはな……本気を出したいが、授業の域を超えてしまう」

「は、はい」

「お前たち!! 見ていないで戦え!! 自分を追い込め!!」


 ジャコブの喝で、生徒たちは戦い始めた。


 ◇◇◇◇◇


 エルクとジャコブの戦いを見ていたヤト、カヤは。


「ヤト……今の」

「ええ。あの動き……ヤマト国の『永宗拳(えいしゅうけん)』ね」

「エルクはヤマト国に行ったことが?」

「……ないはず。というか、あの若さで『左方いなし』を完璧に使っている。才能……だけじゃないわ」

「師が優れていた、ということでは?」

「……わからない。カヤ、エルクは要注意。ヤマト国政府に報告すべきかもしれないわよ」

「……同じことを考えていました」


 エルクは、ピピーナと「スキル未使用での殴り合い」を百年以上やっている。その間、世界中のありとあらゆる格闘技を習得していた。もちろん、ヤマト国の武術も学んでいる。

 ジャコブが生徒たちの指導へ行ったので、エルクは一人でいた。

 すると、エルウッドが寄ってきた。


「やぁ、相手がいないならオレが相手をするよ」

「ああ、よろしく」


 二人は構え、軽い組み手を始めた。

 エルウッドの拳を軽く躱すエルク。エルウッドは言う。


「ところで、キネーシス公爵家からの手紙は読んだかい?」

「あ」


 拳を躱し、蹴りを放つ。

 エルウッドは防御した。

 エルクは、キネーシス公爵家の手紙を読んでいないことに気付く。


「ちゃんと読んだ方がいいよ」

「わかってる。帰ったら読むよ」


 エルウッドの蹴りを受け止め、エルクはカウンターパンチを放った。

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〇はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
レーベル: CLLENN COMICS / コミックREBEL
著者:さとう (著)
漫画:うなぽっぽ (著), トダフミト (著)
発売日:2024年 7月 21日

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
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