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はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~  作者: さとう
第五章・孤独な蟲王バルタザール

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女神聖教七天使徒『醜悪』のバルタザール⑥/バルタザール変異体

 少年は、生まれた時から『醜い』少年でした。

 潰れたような顔、小さな目、裂けたような口、成長しても伸びない身長。

 その醜い少年は、両親から愛されず、生まれた村では虐められていました。

 少年は、毎日泣いていました。

 誰が悪いのか? 自分が悪いのか? こんな醜い顔に産んだ親が悪いのか?

 答えは出ません。

 どんなにつらくても、少年は生きていました。

 石を投げられ、一緒に暮らしたくないという親は少年を納屋に放り込み、粗末な食事しか与えず、ほぼいない者として扱いました。


 そんな少年の友達は、『昆虫』でした。


 納屋には、たくさんの昆虫がいました。

 芋虫、羽虫、トカゲにミミズ。

 昆虫たちは、少年を『醜い』だの、『気持ち悪い』だの言いません。

 少年は、昆虫たちと友達になりました。


 ◇◇◇◇◇


 身体の一部を昆虫化させた『バルタザール変異体』は、背中の触手を器用に操り、エルクに向かって飛ばしてきた。

 エルクは、両手のブレードを構え、向かって来る触手を躱しつつ斬りつける。


「だりゃっ!!」

「ふひひひ、ふふひ」

「───……なっ」


 だが、切られた触手は一瞬で再生。

 バルタザール変異体は、身体に生えた蜘蛛の脚で高速移動し、壁を這う。

 さらに、背中から巨大な『翅』が生えた。


「ブばぁぁぁぁぁぁっ!!」

「げっ!?」


 バルタザール変異体は、口から大量のナメクジを吐き出す。

 あまりの光景に、エルクは青くなり、念動力で身体を浮かして高速で回避する。

 念動力で身体を操作する『念動舞踊(テレプシコーラ)』を使い、バルタザール変異体が吐き出すナメクジを回避し、右手をバルタザール変異体へ向ける。


「おっぼ!?」


 念動力による衝撃波で、バルタザール変異体を吹き飛ばす。

 壁に激突するが、バルタザール変異体はまるで意に介していない。

 なんと、尻から糸を出し天井へ。ゴムの伸縮のような速度で一瞬で天井へ消えた。


「なんでもありかよ!?」

「くひ、くひひ……『ヒルの雨』」

「うげっ!?」


 バルタザール変異体の口があり得ないくらい開き、そこから大量の『吸血ヒル』が吐き出された。

 部屋を埋め尽くすほどのヒル。

 気持ち悪い。だが、エルクは慌てない。

 両手をパシンと合わせ、落ちてくるヒルに向かって念動力を発動。


「気持ち悪いのは───……」


 念動力の力場が、ヒルをかき集める。

 一塊になったヒルは球体になり、空中で回転する。


「お返しするっ!!」


 エルクが右手で投擲するポーズを取ると、ヒルの塊がバルタザール変異体へ向かって飛び、天井にぶら下がるバルタザール変異体へ直撃した。


「ぶべぁ!?」

「ほらもう一丁!!」


 糸が切れ、バルタザール変異体は落下。

 エルクは飛ぶ。

 落下するバルタザール変異体へ向かって飛び、その顔面に強烈なカウンターパンチを食らわせた。


「がびゅっ!?」


 念動力を纏った拳が顔面に直撃、陥没した。

 バルタザール変異体は再び壁に激突。顔からボタボタ鼻血を出し、涙を流しながら顔を押さえていた。

 エルクは右手の短弓を展開、矢を装填して構える。


「ぶ、ぎゅぅぅぅぅぅ!!」


 バルタザール変異体は背中の触手を無茶苦茶に操り、部屋を破壊し始める。

 エルクは、天井に向けて短矢を放つ。

 念動力を帯びた矢は弧を描きながら飛び───……シャンデリアを支えている鎖を断ち切った。

 落下するシャンデリアをエルクは念動力で強化。


「もう、その辺にしとけッ!!」

「っっっ!?」


 巨大なシャンデリアが、バルタザール変異体を押しつぶした。

 身体が半分潰れ、バルタザール変異体は口からゴボゴボと芋虫を吐き出す。


「えへ、えへへ、えへへ……う、ぉげっ」


 口から吐き出したのは、緑色の宝玉。

 このダンジョンの秘宝、『魔蟲石』だ。

 バルタザール変異体は、笑っているのか苦しんでいるのかわからない声で言う。


「まけ、ちゃった」

「…………」

「あのね、あのね、外……女の子、だいじょう、ぶ?」

「……え?」

「このダンジョン内の蟲、ぜんぶ呼んだ。ぜんぶ呼んで、エルクを襲わせようとした。でも、でも……そのまえに、まけちゃった。そとの女の子、だいじょう、ぶ?」

「……ソアラ!!」


 と、エルクが振り返ると、ドアが吹き飛ばされた。

 エルクは瞬間的に構える───……が。


「……つかっちゃった」

「ソアラ……?」

「使いたくなかったのに……っぺ」


 ソアラは(・・・・)口から蟲の脚(・・・・・・)を吐きだした(・・・・・・)


 ◇◇◇◇◇


 スキルには、それぞれ格付けが存在する。

 一般系スキル、商業系スキル、戦闘系スキル。

 『計算』や『裁縫』といった商業系スキル。『鋼鉄化』や『加速』などの戦闘系スキル。そして、『念動力』は一般系スキル。一般スキルの中でも、最弱の部類となる。

 最弱である理由が、レベル。

 念動力の最大レベルは10。さらに、『スキル進化』もしない。ゆえに最弱。


 だが、これらのカテゴリに含まれない、特殊なスキルがある。

 

 無傷で現れたソアラ。

 扉の奥、つい先ほどエルクとソアラが別れた空間には……おびただしいほどの『蟲』が、残骸となって転がっていた。

 これには、エルクもバルタザール変異体も驚く。


「ソアラ。無事……なんだよな?」

「うん。スキル、使っちゃった」

「う、そ……なん、で?」

「……わたしのスキル、気持ち悪いから」


 ソアラが口を開けると、牙が生えていた。

 そして、舌には……紋章のような刺青が刻まれている。


「わたしのスキル、『暴食(グラトニー)』……なんでも食べれる。食べれば食べたぶんだけ、身体能力が上がるの。生物を食べれば、すっごく強くなるの」


 そう、ソアラは食ったのだ。

 襲い掛かる蟲を、その口で、そのスキルで。


 スキル『暴食』

 現在、七つしか確認されていない『レベル表記のないスキル』であり、スキル進化もしない、所有者が世界で二十名もいない、超レアスキル。

 ソアラは俯く。


「気持ち悪いよね。わたし」

「ソアラ……」

「…………」


 エルクも、バルタザール変異体も何も言わなかった。言えなかった。

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〇はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
レーベル: CLLENN COMICS / コミックREBEL
著者:さとう (著)
漫画:うなぽっぽ (著), トダフミト (著)
発売日:2024年 7月 21日

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
連載中です!
気に入ってくれた方は『ブックマーク』『評価』『感想』をいただけると嬉しいです

― 新着の感想 ―
[一言] まぁ女で暴食はキツいわな、これで食べた分だけ体重もしっかり増加するならデメリットに比重が傾きすぎ。
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