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はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~  作者: さとう
第五章・孤独な蟲王バルタザール

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女神聖教七天使徒『醜悪』のバルタザール④/ダンタリオン

 ガンボたちのチームは、順調にダンジョン内を進んでいた。

 もちろん、魔獣は多い。ガンボがギタイスパイダーに腕を噛まれたが、ギリギリで『鋼鉄化』が間に合いなんとか無傷。カレラはガンボを褒めた。


「やるじゃないか。咄嗟の判断でスキルを使用するなんて」

「食らっちまったけどな」

「だが、無傷だ。ギタイスパイダーの擬態能力はこのダンジョンでは最高レベル。接近し噛まれて無傷というのは、私も聞いたことがないよ」

「…………」

「あ、ガンボ照れてる~」

「うっせえ!!」


 他の三人も笑っていた。

 ガンボはフィーネを追いかけるが、フィーネはケラケラ笑いながら回避。

 緊張感がない。だが、カレラも笑っていた。

 たまには、こういうのも悪くない。


「ははは……ん?」


 ズシン、ズシン、ズシン……。


 何かが、こちらへ向かってきた。

 ボリボリ、ぐちゃぐちゃ、ボリボリ、ぐちゃぐちゃと咀嚼音も聞こえた。

 カレラは剣を抜く。

 ガンボたちも気付いた。


「せ、先生、何か来る……魔獣?」

「みたいだね。大物だ」

「大物……マジかよ」


 フィーネ、ガンボが構えを取る。

 他の三人も、しっかり武器を構えていた。これまでに何度か昆虫系魔獣と戦闘を行ったのが効いているのか、震えあがり何もできないということはなかった。

 だが───……カレラの勘が告げている。


「こっちに気付いている。ヘタに逃げるより、一度相手を見極めてから次の行動に移る方がいい場合もある……闇雲に逃げると相手を刺激しちまうからね」


 こんな時でも戦闘指南。

 だが、カレラは非常に頼りになる冒険者だ。

 ガンボは、自分の両腕を『鋼鉄化』する。

 そして、現れたのは───……得体の知れない『ダンゴムシ』だった。


「……なんだ、こいつは」

「肉、肉……腹減った」

「しゃ、しゃべった!? 先生、魔獣って喋るんですか!?」


 フィーネが興奮する。

 カレラは、冷静に言う。


「知能が高い魔獣と会話できるって話は聞いたことがあるけど……昆虫系では初めてだね」

「肉、肉、肉……」

「だが……こいつとまともな話はできそうにないね」


 人型のダンゴムシことダンタリオンが手に持っているのは、人間の肉だった。

 もう、原形をとどめていない。

 口元が血で濡れている。どれほどの冒険者を喰ったのか。

 カレラは、全員に指示を出す。


「少しでも隙が出来たら逃げるよ」

「……闘わねぇのか?」

「ああ。今は逃げるのがベストだ」


 カレラも、ボブも、マイルズも、逃げを選択した。

 理由は簡単だ。戦わないのではない、戦えないのだ。

 そもそも、これはダンジョン実習。まともな戦闘経験すらない『子供』を連れて、未知の魔獣を相手にするなんて、あり得ない。

 三人が高位冒険者だからこその判断だ。

 もし、F級からE級に上がった冒険者だったら、無謀にも戦いを挑んでいたかもしれない。

 カヤやヤトもF級の実力ではない。だが、他の子供を庇いながらの戦いは無理だ。

 これが、高位冒険者の判断。戦うなど、愚の骨頂。


「グォォォォッ!!」

「来るよ!!」

「オレが前に出る!!」

「なっ」


 ガンボが全身を『鋼鉄化』し、飛び出した。

 すると───ダンタリオンが全身を丸めた。

 まるでダンゴムシ。そして、ダンタリオンが高速で回転し、突っ込んで来た。


「面白れぇ!! ッガァァァァァァァァァ!!」


 ガンボは腰を落とし、突っ込んでくるダンタリオンを真正面から受けた。

 ギャリギャリギャリギャリ!! と、ガンボの身体を抉るように回転するダンタリオン。もし『鋼鉄化』を解除すれば、ガンボは瞬く間に挽肉だろう。

 すると、ガンボの左。ダンタリオンの真横に、『加速』を使ったフィーネの飛び蹴りが突き刺さり、ダンタリオンが吹き飛ばされた。

 さらに、ダメ押し。カレラの剛腕から繰り出された拳が、ダンタリオンの身体をさらに吹き飛ばす。

 カレラは叫んだ。


「逃げるよ!!」


 ガンボは鋼鉄化を解除。そのままダンタリオンを確認することなく走って逃げた。

 ダンタリオンは身体を起こし、雄叫びを上げる。

 そして……再び、獲物を求め歩き出す。


「……なんか、デカい虫ばかり会うな」

「ダンゴムシ……おっきい」

「人間っぽいぞ。な、もしかして俺たち、ダンジョンの奥に進んでるのか? こういう魔獣、さっきまでほとんど出てこなかったよな」

「かもね。ね、もしかしたら秘宝とか財宝見つかるかも」


 ダンタリオンが振り返ると、そこにいたのは……エルクとソアラだった。

 

「肉、肉、肉……肉!!」

「にく?」

「腹減ってんのかな。ま、食われるつもりないけど」

「グォォォォッッ!!」


 ダンタリオンは身体を丸め、高速回転して突っ込んでくる。

 エルクは両手をダンタリオンに向けると、高速回転させたまま念動力で軌道を変え、近くの壁に突っ込ませた。

 エルクはブレードを展開。丸まったダンタリオンの甲殻の隙間にブレードを突き刺す。


「ギュガァァァッ!?」

「おりゃぁっ!!」


 エルクの蹴りがダンタリオンを弾き飛ばした。

 念動力の力に包まれている足での蹴りは、岩石ですら蹴り砕く。

 念動力に頼りすぎるな。というピピーナの教えで、エルクはどんな相手でも念動力でツブさずに、格闘術で倒すことを心がけていた。もちろん、急ぎや面倒な場合は別だが。

 エルクは拳を構え、ダンタリオンを念動力で引き寄せ思いきり殴った。


「ブガァァッ!?」

「もう一丁!!」

「ぶぎゅっ!?」


 顔面が潰れ、ダンタリオンは床にめり込む。

 エルクは右手のブレードを展開。そのまま、ダンタリオンの喉に突き刺した。


「っガ」

「はい、おしまい」

「おお~、エルク、かっこいい」

「ま、格闘系スキル持ちには敵わないけどな」

 

 ブレードを抜くと、ダンタリオンの身体が溶けていく。

 残ったのは、大きな黄色の魔石だった。

 それを拾い、アイテムボックスへ入れる。


「よし、行くか」

「うん」


 エルクとソアラは、再びダンジョンの奥へ進んでいく。

 帰り道を探しているはずなのに、二人は何故かダンジョンの最深部へ向かっていた。


 ◇◇◇◇◇◇


「……みんな、死んじゃった」


 バルタザールの生み出した『蟲人』が、全て討伐された。

 A級冒険者十人分以上の強さはあったはず。だが、産んで数時間もしないうちに、あっさり始末された。

 それほど強い冒険者がいるのか? 


「……ちがう。これ、あいつだ。みんなが言ってた、あいつ」


 バルタザールは、爪をガリガリ噛む。

 そして、立ち上がり……背後にあった、巨大な宝箱を開けた。

 中に入っていたのは、緑色の宝玉。

 不思議な文字が刻まれた、手のひらサイズの宝玉だ。


「あ~~~~んっ」


 バルタザールは、それを飲み込む。

 それは、ダンジョンの『秘宝』だ。

 財宝ではない。この『蟲毒の巣』にある、たった一つしかない秘宝。

 昆虫系ダンジョン『蟲毒の巣』の秘宝、『魔蟲石』。

 存在する全ての昆虫を使役し、自在に強化、操ることができる宝玉。

 まさに、バルタザールのためにあるような宝珠だ。


「ぐひひ、ぐひ……見てろぉ。ぼくが、ぼくがやっつけてやる。女神さま、女神さま……あなたのために、みんなのために」


 ボコン、ボコン、ボコン……と、バルタザールの背中から何本もの『触手』が生えてきた。

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〇はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
レーベル: CLLENN COMICS / コミックREBEL
著者:さとう (著)
漫画:うなぽっぽ (著), トダフミト (著)
発売日:2024年 7月 21日

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
連載中です!
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