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はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~  作者: さとう
第八章・ヤマト国の英雄『飛天皇武』タケル・クサナギ

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エルク対アサシン

 囲炉裏。

 部屋の中心に穴を空け、灰を敷き詰めて薪や炭で火を起こす、ヤマト国の暖房器具。ここで調理をしたりもするらしい。

 エルクは、不思議そうに囲炉裏を見つめていた。


「室内で火を起こすのか。暖炉とは違うけど、煙とか出ないのか?」

「……あなた、外で何が起きてるかわかってるの? 囲炉裏なんてどうでもいいでしょ」

「いやいや、こんなの見たことないし。ヤマト国の文化ってすげーな」


 エルクは立ち上がり、両手を入口と反対側の壁に向ける。そのまま手を突き出すと、何かが吹き飛び岩に激突するような音が聞こえた。すると、家の裏口が開く。


「ガキが、大人しく───……」


 エルクが右手を向けた瞬間、村人は呼吸しかできなくなった。

 裏口から回り込んだ村人が七人。

 カヤはため息を吐いた。


「やはり、村ぐるみでしたか……ヤト様」

「ええ。エルク、残りは私たちでやるから、手出し無用よ」

「ん、ああ」


 エルクは、念動力で動きを封じた男の口を開け、何かが盛られている料理を無理やり食べさせていた。

 男が料理を食べると、ぐるんと白目になる……落ちたようだ。

 毒ではなく、強力な睡眠薬。


「カヤ、殺していい?」

「いえ、できれば……」

「わかった。じゃあ峰打ちで勘弁してあげる」


 カヤ、ヤトが裏口から外へ飛び出した。

 エルクはどうしようか悩んだが、特に強そうな気配がしないので任せることに。

 だが───……せっかくなので、別の気配に触れてみることにした。

 眼帯マスクを付け、フードをかぶり、気配を消して外へ。そして、空き家の屋根に上る。


「……みっけ」


 エルクたちの空き家から少し離れた家の屋根に、何人かいた。

 

「アサシン……いい機会だ。どんな連中か確認しておこう」


 エルクは念動力で身体を浮かし、アサシンたちのいる家の屋根に飛んで行った。


 ◇◇◇◇◇


 ヤマト国所属のアサシンたちは、急接近する黒い影に気付いた。

 数は1、それに対しアサシンたちの数は4。

 アサシンのリーダー、アカネは驚愕した。


「この距離で気付かれた。全員、散!!」


 アカネを除く3人が別方向に散る。

 だが、黒い影はアカネだけを狙って向かって来た。

 近づくにつれて、その容貌が見えてきた。

 黒いコート、フード、顔の4/1を隠す眼帯マスク。左目しか露出していなかったが、その眼はアカネの眼を見ていた。


「どうも。ジロジロ見てたのお前たちだな?」

「───……!!」


 アカネは気付いた。

 散った三人が、空中で固定されている。


「『異能』か……」

「異能? スキルだろ……ああ、ヤマト語か。それより、あんたらさ、コソコソしながら着いてくるのやめて欲しいんだよね。先生たちは害はないとか言ってるけど、俺は気になるんだよ」

「貴様……他国のアサシンか」

「いや違うし」

「馬鹿を言うな。その格好、その武器、アサシン以外の何だというんだ?」

「これはエマの趣味……まぁ、言ってもわかんないか。それより、遊ぼうか?」


 エルクは、両腕を広げた。

 アカネは両手をだらりと下げ、ユラユラと身体を揺らす。


「異能……『力場』」

「?」


 タンッ、とアカネが跳躍すると、アカネは空中を走り出した。

 わずかにエルクが動揺したのをアカネは感じ、空中で加速し急接近。右手を反らしブレードを展開し、正確にエルクの喉を狙って突いてくる。

 エルクは首をひねって躱し、左手を反らしブレードを展開。アカネの心臓を狙って突きを繰り出す。だが、ほんのわずかに服を掠めただけで傷にはならなかった。

 が……。


「……ッ!?」

「蛇っ!!」

「うおっ!?」


 しなるような蹴りが、エルクの側頭部を襲う。

 エルクは籠手で防御……動きが、急に鈍くなった。

 アカネは空中に足場を作り出すスキル、『力場(エアポート)』で、空中で激しく動く。かく乱攻撃が得意なアカネの真骨頂だ。

 だが、エルクが動揺したままだった。明らかにおかしい。


「どうした? 貴様、口先だけのようだな」

「い、いや……その、胸」

「何?…………ぁ」


 エルクのブレードがアカネの服を掠めたせいで、服が破れていた。

 そして……片方の胸がこぼれていた。そう、アカネは女。

 女性が胸を出したまま戦っていることに、エルクは動揺していたのだ。だが、アカネは胸を隠そうとせず、エルクを無力化しようと襲い掛かる。

 それどころか、好機と考えていた。


「ふ、子供が!!」

「あ~~~……悪い、もう終わりだ」

「何っ!?」


 アカネの身体が空中で止まった。

 エルクが右手を向けただけで、アカネの身体はピクリとも動かなくなった。

 エルクは、近くに干してあった手拭いを念動力で引き寄せ、空中で固まっているアカネの胸に念動力で巻き付けた。そして、未だに空中で硬直しているアサシンたちとアカネを引き寄せ、アイテムボックスに入れておいた縄でがんじがらめにした。


「き、貴様……最初からこうするつもりだったのか」

「まぁね。アサシンってのがどんな連中か知りたかったってのもある。あのさ、この村の現状もあるし……あんたらのことと合わせて、話でもしないか?」

「…………いいだろう」

「た、隊長!!」「我らの任務は……」「よろしいのですか!?」


 部下たちが反応する。だが、アカネは首を振った。


「どのみち、見つかった時点で任務は失敗だ。ガラティン王国のアサシン、そしてあの騎士……相当な実力者だ。あの子供も侮れん」

「あれ、カヤとヤトのこと、知らないのか?」

「カヤ……ああ、御庭番衆か。ヤトというのは知らん」

「……あんたら、何にも知らないのか?」

「我々の任務は『ガラティン王国からの使者を監視せよ』というものだ。相手の情報などは知らん」

「……まぁ、いいか。お、あっちも終わったっぽいな」

 

 ソフィア、ヤト、カヤの三人も、村人を制圧したようだ。

 エルクは、アカネたちを連れて空き家へ戻った。


 ◇◇◇◇◇


「───というわけで、連れてきちゃいました」

「「「…………」」」


 ソフィア、ヤト、カヤの三人が村人たちと戦っている間。

 エルクは監視していたアサシンたちと戦い勝利、縄で縛って連れて来た。

 これには、ソフィアも頭を抱えた。


「アサシンの監視はわかっていましたけど、何も連れてこなくても」

「いや、見られてるの気持ち悪いですし……」

「……アカネ隊長!?」

「やはりカヤか。三年の休暇だと聞いていたが」

「すみません。実は、いろいろ事情がありまして……」


 と、カヤはヤトを見る。

 アカネはヤトをちらりと見て、目を細め……驚愕に目を見開いた。


「ま、まさ、か……まさか、サクヤ様!?」

「そういうことです。私の任務は、サクヤ様を連れて行くことです」

「馬鹿な。死んだはずでは」

「そうね、サクヤは死んだわ。ここにいるのは、式場家の夜刀……私は、ヤトよ」

「…………」


 アカネは驚愕したままだ。

 ソフィアが首を傾げている。


「あの……どういうことですか?」

「そういや、先生は知らないよな」

「……もう、別に話してもいいわ。カヤ、お願い」

「はい。アカネ隊長たちも聞いて構わないのですか?」

「ええ。私の素性を知らずに監視していたようだしね。ふふ、言われたことだけを忠実にやったんでしょ? 相手の素性とか気にせずに監視するなんて、いかにもアサシンね」

「……では、説明します」


 カヤは、これまでの事情をわかりやすく説明した。

 ヤトは、櫛灘家の三女であること。初陣を利用して櫛灘家から逃亡し、死んだことになっていること。そこで式場家に拾われ、ヤトとなったこと。傭兵をしながら生活してたこと。ガラティン王国へ渡り学生となったこと。アドラツィオーネの襲撃によりヤマト国に素性がバレて、カヤに連れてくるように指令があったこと。ガラティン王国が火の宝玉に関する書状を出し、それに合わせてヤマト国に来たことなど。

 ヤトは、はっきり言った。


「私は櫛灘家なんてもうどうでもいい。ここに来たのは、完全に絶縁するためよ」

「…………なんと」

「アサシン、この村の後片付けをしなさい。監視があるなら、隊長であるあなたが私たちに同行しなさい。コソコソ付いてこられるよりマシだわ」

「……御意」


 アカネは、部下三人に村の後片付けを命じた。

 エルクは、未だにポカンとしているソフィアに言う。


「今更ですけど、なんか面倒くさいことになりそうっすね」

「…………ちゃんと二週間で帰れるかしら」

「まぁ、とりあえず火の宝玉に関する書状を優先しますか」


 当然だが、エルクたちは知らない。

 ヤマト国に、アドラツィオーネの神官がすでにいるなんて。

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〇はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
レーベル: CLLENN COMICS / コミックREBEL
著者:さとう (著)
漫画:うなぽっぽ (著), トダフミト (著)
発売日:2024年 7月 21日

【↓情報はこちらのリンクから↓】
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お読みいただき有難うございます!
テンプレに従わない異世界無双 ~ストーリーを無視して、序盤で死ぬざまあキャラを育成し世界を攻略します~
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