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【抄録】魚々島 洋 VS 松羽 烏京
抄録:抜き書き。
本作では、試合および物語のハイライトを指す。
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「オレの師匠は隻脚だぜ。
片足で戦う方法くらい教わってる。下がってな、忍野」
「おまえに泳ぎ一つ教えられなかった、無能な師か」
「いや、まったくだぜ」
烏京の横やりに、洋は白い歯をこぼす。
「あのジジイ、オレが泳げねえと見切るや、海を脅しの道具にしやがった。
『魚々島は海で命を賭ける。おまえも船で命を賭けろ』つってよ。
トラウマ抉られまくりで、もう一生泳げる気がしねえ」
烏京は息を呑んだ。
片足を潰され、勝ち目のない状況下で、継戦を選ぶ。
そんな悲壮さは微塵もない。これから戦に出るような顔ではないか。
シュルルル……ル。
巻き戻る《鮫貝》の白線が、2メートルを余して止まった。
掲げた洋の腕に誘われ、頭上で回り始める。
速度を上げる──唸りを上げる。
「魚々島を出る時、その師匠が言ったんだよ。
『おまえは陸一番の魚々島になれ』ってな──」
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