4月24日(火) 晴れ
写真を並べて比較するととてもよくわかった。
リュウの姿の写真をアルバムにして横並びにしてみると、その姿が全く変わっていることがわかる。
初めて会ったときの写真だと、完全に子供だった。服がボロボロで髪の毛もボロボロのヤンチャな感じのする女の子だ。言われなければ男の子と勘違いするほどだった。
しかし日付が進むにつれ、その姿はだいぶ女の子らしくなってきた。特に19日・20日あたりでは完全に少女の見た目になっており、リュウ個人のかわいらしさが窺い知れる。見た目もかなり小ぎれいになっていた。
そして昨日だ。もう完全に女の子である。学校の同級生でいたら1番目か2番目に人気の高そうな綺麗な女の子がいた。幼いながらもその見た目は完全に美少女のそれである。
ついでに撮った近所の桜の写真も、わずか9日で三分咲きから七分咲き、そして満開から今日はもう散り始めている。人間が桜の花と同じ速度で成長するわけがない、当たり前の話だけど。
髪型がボブくらいの長さで一定だったこと、そして何より大きさが小さすぎて判別がつかなかったことがすぐに気づけなかった原因だと思われる。まさか時間の流れ方が違うとは思ってはいなかった。
たった1日で街の様子が変わるからもっと早くに気づくべきだった。アリの巣だと2日もあればほぼ完成形まで巣が出来上がるので、それと同じように考えている節があったようだ。相手は小さいとはいえ人間なのだから、そんな訳ないのに。合点がいった。
また、昨日のリュウに教えてもらったことにより、さらに理解が深まった。
ガラスケースの中の人が妙に早く動いて見えるのは、時間が加速されているからであって、彼らが僕より早く動いている生き物ではないこと。
ガラスケースの中に手を入れようとすると妙な抵抗感があるのは、時間の流れに差があるせいで、空気による抵抗がより大きくなるせいだということ。
22日の日曜日の午前中にガラスケースに手を突っ込めなかったことと、無理やり手を沈めたら抜けなくなったこと、そしてミニ人間たちの動きがあり得ないほど加速されていたことは、理由までは不明だが、ガラスケースの中の世界の時間がさらに加速されていたせいでその影響が大きかったからだろうという推測がたつことなどが挙げられた。
大学へ行っている間、ほとんど集中できずにずっとガラスケースのことを考えていた。そのおかげで何度も怒られたが、代わりにこういう推論を立てることができた。
このガラスケースの中の世界は時間が加速されている。理屈はわからない。なぜ日曜日のときはさらに超加速されていたのかもわからない。わからないことだらけである。
初めてガラスケースの中が別の世界と繋がってしまったと気づいたときと同じ恐怖心を覚えた。時間の流れが違うってなんのマンガだよと思ったからだ。現実的でない。
そして同じくらい好奇心もやっぱり沸いてきた。変な血流が脳に巡っているのを感じる。怖いと感じるのと同じくらいあの異世界に夢中である。
というわけで今日もガラスケースに飛びついた。仮説の証明がしたかったので、一秒でもはやくリュウと会いたかったからだ。まずはいつも通り街の外観を観察する。
街の様子は大きく変わっていなかった。後程リュウから聞いたところ、人口は少し増えたそうだ。
しいて変更されたところがあるとすると、僕が作った川の周辺にたくさん小屋や畑ができていて、たくさん人が出入りしていたこと。恐らく治水工事をしているのだろう。土をいじってる姿が完全にアリと同じで、失礼ながら少しだけ笑ってしまった。
あと工事現場に建物が完成していた。僕が作った遊水池を真似したのだろうか、中央の池と同じくらいの大きさの水たまりと、リュウの家より少し大きめの建物が建っていた。形もよく似ている、がこちらの方がすごく綺麗だった。遠目でもよくわかるほどに整えられていた。
昨日の街の写真と比較すると、結構細かいところが増築・改築されていた。あとで間違い探しでもしてみようと思う。かなり楽しみだ。
中央の池を見ると、やはりリュウがいた。今日は祈っているミニ人間の数は二人だけだった。
周辺には見物人がたくさんいるけれど、池の畔で座って首を垂れているのは二人だけなので、ちょっと異様な光景に見える。
手を伸ばすと、今日は二人とも僕の手に乗ってきた。
リュウらしきヒラヒラした服を着た方が台を使ってさっと登り、指の腹に捕まって座りこんだのに対して、もう片方は露骨に怯えているようだった。時間が加速されているはずなのに指の上に乗る動作が遅い。
ガラスケースの底まで手を伸ばしてジッとしているのは辛いのでさっさと乗ってほしい。
二人を持ち上げて、二重蓋の上に降ろした。自分の身長と同じくらいの高さがある指の腹の上から軽々と飛び降りるリュウと、へっぴり腰で降りたあと透明な二重蓋の床に怯える男性。
写真を見比べた後だからか、よくよく見るとリュウの姿がだいぶ成長しているのがわかる。
最初は豆粒のように小さく、指の腹の半分の大きさもなかったのだが、今は小指の先端と同じくらいの大きさがある。それに頭身もだいぶ伸びていて、可愛くなっていた。
ここまで近くないと判別がつかないけれど、なるほど、たしかにリュウは女の子だ。僕は頬をポリポリと掻いたあと、もう一人の男性の方を見る。
初めて見る人だった。しかしその男性になんとなく見覚えがある気がして、リュウの手が触れると同時に質問する。
この人がエルバードとかいう人?
「はい、そうです。この人がエルバードさんです。エルバードさんがどうしてもお話したいことがあるそうです」
なるほど、一昨日リュウの記憶からの再現で後姿だけを見ていたから、見覚えがあったのだろう。納得した。
で、話ってなんぞ?
僕がリュウに質問すると、リュウがエルバードさんとやらに何か声をかけた。
エルバードさんはへっぴり腰を伸ばし、服装を正し、丁寧にお辞儀をした後に僕の手に触れてきた。サイズ差が大きいにも関わらず足がブルブル震えているのがわかる。
リュウが少し躊躇いながら場所を譲る。エルバードさんが集中しているらしく、目を瞑った。
そして攻撃を受けた。
この感触には覚えがあった。リュウに初めて意思疎通の魔法を使われたときの衝撃。頭の中に何かがパーンと弾ける感触があった。めちゃくちゃビックリしたし、ちょっと頭が痛かった。
今回は運が悪かったようで、少し指を動かしてしまった。僕にとっては痙攣の如き僅かな動きだったけれど、近くにいたミニ人間にはたまったもんじゃなかったらしい。エルバードさんが後頭部からすっころんだ。
「あ、すみません!」と反射的に声を出して謝罪するも、言葉は通じてないはずだった。
エルバードさんは頭を押さえて倒れ込み、リュウは慌てて彼を解放する。下手に動くと潰してしまいそうなので、僕は何もできずにただ見守っていた。
やがて落ち着くと、リュウが僕に話しかけてくれた。理由を説明する。
「あの、エルバードさんも魔法の練習をして、自分で直接神様とお話したかったそうです。ただ、神様とは大きさが違うせいか、調整が難しいみたいで……」
詳しい説明をしてもらった。
曰く、大きさが違うから強い力を込めないと意思疎通の魔法が通じないらしく、下手に力を込めると魔法が強くなりすぎてしまうらしい。聞いてみると、ただでさえ難易度の高い魔法の一種らしく、それを高威力で微調整するのはかなり難儀な技術が必要らしい。
……リュウが当たり前のようにいつも使ってくれてたから、そこまで難しいものだとは知らなかった。
「あー、えっと、その、練習しましたから……」
リュウが顔を少し背けた。僕は起き上がっているエルバードさんを見て、じゃあやっぱりリュウに間接的に会話するしか方法がないのかな、と問うた。
リュウは頷いた。
「大丈夫だと思ったのですが、やっぱりダメだったみたいです。すみません、御迷惑をかけてしまって……。エルバードさんを説得して私経由で話を通しますね」
そうするとリュウが僕の手に右手を置き、左手でエルバードさんと握手した。
リュウが翻訳者代わりに間に立って会話するのかと思ったら、リュウ経由で魔法を使って間接的に意思疎通できるようにするらしい。そんな器用なこともできるのか、と僕は驚いた。
リュウは照れたように笑った。
「えっと、お話してもよろしいですか? というか今度は通じてるのかな?」
初めて聞くはずなのに聞き覚えのある男性の声。特徴のない普通の男性の声色だが、言葉遣いが柔和なせいか耳触りが良い。ただし緊張のせいか、若干言葉尻が揺れている。
リュウと手をつないだまま片膝を立てて首を垂れている。
「……お初にお目にかかります、偉大なる神よ。御使いたるリュウからは名もなき神と聞き及んでおりますが、善神セルバンディアか人神サーティス、またはその使徒様ではないかとお見受けしております。彼の神の御威光にたまわれることこの身において最上の幸せ、神には(長すぎるうえ言い回しが難しすぎたためメモが追い付かず、ここまで。この後2分ほど挨拶が続いたけれど以下省略)」
自分より年上と思しき男性がこちらを敬う姿勢を崩さず、流暢に難しい言葉を延々話されると途中で止めることができない。
僕は引きつった半笑いのままエルバードさんの何言ってんだかよくわかんない挨拶を聞き流してた。
直接手を触れているリュウとは違い、エルバードさんと僕の間では言葉以外は通じていないらしい。
長々とした挨拶を終え、なんか不快な思いをされていたらどうしようと怯えながら僕の返事待ちをするエルバードさん。あんな難解極まる御大層な挨拶をされたあとなんと返事をしたらいいのかわからないで言葉に詰まっている僕。
お互いに間合いを見計らっているのをリュウが間に入って説明をしてくれた。
「ええと、私は神様は神様じゃないらしいって言ったんですけど、街の人やそれ以外の方からしたらやっぱり神様にしか見えなくて、じゃあどの神様なのかっていろいろ勝手に言い合ってるんです。善神か人神だと言ってる人が多いので、エルバードさんもそういう風に扱うべきだってずっと挨拶の練習してて……」
大した事はやってないつもりだけど、冷静に考えれば神の一種だと思われるのも納得である。
ちょっと関わりすぎたのかもしれない。面白いからと言って文字通り手を出しすぎているのかも……。
僕がちょっと悩み始めたのを察したのか、それとも思考を読んだのか、リュウが慌てて弁明を始めた。
「か、神様が悪いわけではありません! 神様がいらっしゃらなかったら街はこんなすぐに発展しませんでしたし、移住者に笑顔も増えませんでした。最近活発化しているという魔物もここら辺には近寄らないみたいですし、沈まない太陽のおかげで畑の作物もよく取れますし、本当に助かっているんです。それに私も……」
リュウが何かを言いかけて、急に頭を振る。
1日1年だとしたらリュウは12歳のはずだ。12歳の少女に慰められている現状が情けなかったので、笑って誤魔化した。
そんな悩んでるわけじゃないよ。それに喜んでもらえたのなら何よりだ。
僕の返事にリュウも笑い、しかしすぐに表情を曇らせた。
「ただ……そのせいで少し厄介なことが起きてしまってまして……。その、正堂教会の方をご覧になっていただけませんか?」
厄介なことというのがなんだかよくわからないし、正堂教会という単語も初耳だったのでよくわからなかった。
そのことを伝えると、リュウは大雑把に教えてくれた。
「その、エルバードさんが言ってたんですけど、この地に神の御手が現れるという話がティムゾン大陸中にかなり広まっているそうなんです。先程申し上げた通り、最近魔物の動きが活発なのと、すごく強い新種の魔物が現れたそうで、神様の御力やご加護を授かりたいという人がとても多いそうです」
ああ、だから移民がめちゃくちゃ増えて、急激に街が大きくなったのか。
「はい、そうなんです。そして神の御力が実際に目に見える形で存在する、という話を聞きつけた正堂教会の方々も街にいらっしゃってるんですけど……。とにかく見ていただければわかるかと……」
私は高すぎてよく見えないのですが、とリュウは申し訳なさそうに謝りつつ、教会の場所を教えてくれる。場所は昨日工事中だった場所、つまりリュウの家の真逆の場所だった。
そういえば今日はよく見ていなかった、とリュウ曰く完成済みの正堂教会とやらを覗いてみた。見てみて眉根を寄せた。
リュウの家と全く同じものがそこにあった。白が目立つ立派な建物があること、僕が作った池のような丸い人工池が作られていたこと、妙に人が集まっているところなども同じだった。
ただ違うところもいくつか見受けられる。池の周りに囲いができており形がやたら綺麗に整えられていること、集まっている人が全員黒の目立つ同じような服を着ていること、広い池の周りに何十人もの黒服たちが祈りを捧げていることが違った。なんかちょっと怖い。
また、リュウの家とその前にある池の方も異常があった。正堂教会の制服なのだろうか、黒服を着た人たちがリュウの池の前に押し寄せていて、何かしていた。抵抗している人達も見える。
そのうち一人には見覚えがあった。成長していてちょっとわかりづらかったが、間違いなくカチくんだ。あれは無視していいのだろうか?
距離が遠すぎて見えないリュウに僕が見た映像を見せてやる。するとリュウが慌てて説明を続けた。
「正堂教会の人たちが、私たちの方にも加護がないのはおかしいって頻繁に抗議してくるようになったんです。去年は工事中だったからともかく、今年もご加護がないからって怒ってるのかも」
加護って、手を伸べることでいいのかな? そんだけ?
「えっと、たぶんそうです。神意ある御手を独占するとは何事か、と言われたことがありますので……。だからもしよかったら、あっちの池の方にも手を伸ばしてあげてくれませんか? そうすれば喜んでくれると思いますし……」
オッケー、それくらいならやって大丈夫だよ。じゃあリュウとエルバードさんを戻すついでに、あっちにも手を……。
「あ、それで、その。エルバードさんにも直接のご加護をいただけないでしょうか? 商人業とこの街の取りまとめ役を同時にしてくれてるのですが、神の寵愛がない者に神の街を統べる資格なし、って言われてたんです。そのせいで言うこと聞いてくれない人がいるみたいで……」
つまり今回は、エルバードさんに加護を与えて、あっちの正式な方の教会にもちょっかい出せばいい感じなのかな? わかったすぐにや……。
「横から発言する無礼をお許しください。もしよろしければ提案を受けてはいただけないでしょうか?」
急に男性の声が聞こえたのでビックリする。リュウと魔法で会話しているときに別の人の声が割り込んでくるのは初めてでかなり驚いた。
畏まりすぎていて逆に対応しづらいエルバードさんではなく、慣れていて話しやすいリュウとばかり会話していたから、すっかり存在を忘れていた。そちらに注目する。
相変わらず片膝を立てて頭を下げている。正直そういうのやめてほしいんだけど、言っていいモノか迷う。
相変わらずまだるっこしい言い草で何か言ってくる。が、もう複雑な言い回しすぎて何だか全く分からない。教養がないと暗に言われているようで妙に居心地が悪い。
リュウが察してくれたようで、エルバードさんの言葉を仲介するついでに翻訳してくれる。副音声のように解説がついてきた。
「正堂教会の人たちが、私たちの方が正式なのだから場所を譲れとか、リュウの身を引き渡せとかよく言ってくるそうです。ちゃんとした長ではなくただの仲介人なのだから言うことを聞けって……。だから正堂教会の方には加護を与えないでほしいそうです」
……ほぅほぅ、なるほどねぇ。
ほぼリュウの方の話しか聞いてなかった。しかし言いたいことはわかったので満足する。
……要するに、権力持ってたはずの正堂教会さんがここでは端役扱いで面白くないと。それでなんか我儘言うようになってきたから余計に調子づかせるような行為はしちゃダメと。
なんとなく言いたいことは理解したのだが、困ったことが一つあった。僕は困った気持ちを押し隠さずリュウに質問する。
何してほしいかわかったけど、加護ってどうやって与えればいいの?
僕の質問はすでに考慮済みだったのだろう。リュウとエルバードさんが一瞬顔を見合わせ、その後また御大層な言葉と副音声で解説してくれる。
「エルバードさんと相談したんですけど、街の名前をつけてほしいんです。そうすれば神様が実際にいて、私たちを見守ってくださるという証明になりますし」
……ほうほう、街の名前つけですか。
そういえば集落から村、街へと急激な進化をしていったけれど、その名前を聞いたことがなかった。
リュウからの補足情報によると、神が実際にいるのに神が街の名をつけず、勝手に人間だけで決めてしまうのは無礼なのではないかという意見が住人の大多数の意見だったそうだ。確かに街の特産物マシューや開拓の手伝いなんかもよくやっている僕を無視して勝手に名付けるわけにもいかない、とリュウたちも悩んでいたらしい。
気が利かない僕が悪いのか、変に遠慮するリュウが悪いのか、気を利かせすぎてる住人たちが悪いのか。僕は反対側の手で頭を掻きながら、リュウに言うべきことを言う。
……僕、そんな気が付くわけじゃないから、そゆことは早めに教えてね。
「……はい、わかりました。ごめんなさい」
いや、僕もごめん。何で街の名前ないのかなぁとは思ってたんだけどそういう理由とは気づかなかったから……。
というわけで名前を考える。この名づけに関して、僕は少し困ってしまう。
名前を付けること自体は好きである。アリの巣観察をする際、女王アリの群体に名前をつけたり、マーキングした個体に名前を付けるのはよくあることだからだ。
問題はネーミングセンスが絶望的なのだ。だいたい「メッチャオオイ女王アリ」とか「戦争用クロアリーズ」とか「迷子実験用アリさん1号」とか変な名前をつけている。まさかミニ人間たちにこのネーミングセンスで街の名前を付けるわけにはいかず、どうしたものかと悩んだ。
悩んでる僕に、リュウがさらに追い打ちをかける。
「あの、もし可能でしたら、その、名前をつけた証拠のようなものも頂けると嬉しいです。私たちが勝手に名付けただけだと思われると、神様の名づけじゃないと文句を言われるかも……。あ、無理だったらいいです!」
……赤ちゃんが生まれたときみたいな習字でもしてやれば証明になるだろうか。
習字の半紙の大きさは今の街の大きさとだいたい同じくらいだ。四角形と円形と形こそ違うけれど、街一つ覆うほど巨大な紙と文字が降ってきたら、さすがに誰でも神の名づけを信じてくれるだろう。
ただ、習字の道具がない。実家に戻ればあるかもしれないが、時間がないしさすがに面倒くさい。
僕はその後30分近く悩み、その間リュウやエルバードさんに相談するも「私たちが考えた名前だとバレちゃうかも。神様らしい特別な名前をお願いします」とハードルを上げて返されてしまった。
過去の記録やパソコンの画面や写真を見て、何か良いのはないかと考え、妙案に辿り着いた。僕は財布を取り出す。
「……えっと、これが街の名前ですか?」
ダメかな?
「いえ、すごく良いと思います。言葉の響きも変わっていて、素敵です。それに、フフ、この花が名前の元になっているのって素敵ですね」
リュウは少し戸惑いつつも、満面の笑みだったので喜んでくれたのだろう。エルバードさんもわかりづらい言葉で感謝を伝えてくれている。
僕はリュウとエルバードさんを先に池の畔に降ろし、その後マシュマロとある物を近くの空き地に置いた。
街の名前になったソレを見つめる。たくさんのミニ人間たちが集まって物珍しそうにソレを見上げていた。僕にしてはなかなか良いセンスだと満足する。
街の空き地に置いたソレ。銀色に鈍く光る丸いもの、日常的によくお世話になる汎用硬貨、表面に咲くは日本が誇る三つ子の花。
街の名前は「サクラ」になった
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……だというのに申し訳ないことに、更新ペースが遅くなります。ちょっとリアル忙しくなってきて……。
なんとか2日に1回ペースは維持したいと思ってます。スマヌスマヌ m(_ _)m




