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隣の席の彼女は今日もアホ可愛い  作者: 138ネコ


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第9話

 いつも通りの昼休み。

 昼食を終えた駿介とこのはが、自分たちのクラスで雑談をしていた。


「駿介って普段休みは何してるの?」


「適当だな。ゲームやったり漫画読んだり、たまに真紀の家(んち)のゴローさんの世話手伝ったりか」


「ゴローさん???」


 頭に「?」マークを浮かべるこのはを見て、駿介は自分の言い方が悪かったなと反省をする。

 今の言い方では、このは以外の人が聞いてもおっさんの世話をしているようにしか聞こえないだろう。


「あー、ゴローさんってのは真紀の飼ってる犬だ。ゴールデンレトリバーって犬種は分かるだろ? ソイツだ」


「へぇ、おっきい犬飼ってるんだ! 良いな!」


 犬と聞いて目を輝かせるこのは。

 

「ゴローさんの写真有るけど見るか?」


「見たい!」


 駿介がスマホを取り出し、ゴローさんと書かれたフォルダを開く。

 フォルダの中には、可愛らしい格好から、ちょっと笑えるような格好をしている犬の写真が大量に入っていた。

 駿介からスマホを受け取り、ゴローさんの写真を見てこのはは笑ったり、癒されたりと大はしゃぎである。


「それなら今度の休み、一緒にゴローさんの世話するか?」


「良いの!?」


「多分問題ないと思う。一応真紀に聞いて来るわ」


 教室を出て、真紀に確認しに行く駿介。

 無事OKを貰え、駿介たちは休日にゴローさんを連れて大きな公園に行く事になった。

 そして、迎えた休日。


 駿介の家から真紀の家までは徒歩数分程度。

 駿介としては真紀の家に行ってから公園に行った方が早いのだが、駅でこのはを迎えに行ってから公園に行く事にした。

 ほっといたら、このはが迷子になりそうだからである。

 流石にそれは過保護すぎる気がするが。


「ねぇねぇ。今日お弁当持ってきたけど、ゴローさんにあげたらダメかな?」


「気持ちは死ぬほどわかるが、勝手にあげると真紀が本気で怒るからやめとけ」


「そっか、じゃあしょうがないね」


「代わりにゴローさん用のおやつがあるから、それをあげれば良いさ」


「……うん!」


 ションボリしたり、テンションが上がったりと忙しい奴だと思いつつも、目を細め優しく笑う駿介。

 早く行こうと電車の中で走り出しそうとするこのはを宥めながら、公園までたどり着く。  


 普段着の真紀が、リード片手に公園の隅で座っている。

 その横には、お座りをして待つ犬、ゴールデンレトリバーのゴローさんも一緒である。


「わぁ!」


 真紀、というかゴローさんの姿を見つけこのはが走り出す。

 全くと言いながらも、駿介もそんなこのはの後を追って走り出した。

 なんだかんだで駿介もゴローさんに会うのは楽しいので。

 ペットを飼っていない家庭には、犬や猫は憧れの存在なのだから仕方がない。


「このはちゃん、こんにちわ」


「うん。真紀ちゃんもこんにちわ!」


 人見知りだったこのはが、真紀に元気よく挨拶をする。

 最初の頃は駿介の後ろに隠れたり、おどおどした態度で真紀に接していた。

 それでも真紀は熱心にこのはの相手をしつづけ、今では普通に話せるようになっていた。


 まぁ、アホ可愛く振る舞うこのはが、自分に対しおどおどするのが可愛いと喜んで相手していただけだったりするが。

 普通に話してくれることに対する喜びの中に、一抹の寂しさが混ざると話す真紀に対し、ともが返答に窮したのは言うまでもない。


「ゴローさん、久しぶり!」


 駿介がそう声をかけると、軽く「ワン」と返事が返ってきた。

 そっちこそ元気そうだねと言っているのだろう。ゴールデンレトリバーのゴローさんは賢いので。

 返事に満足した駿介が首元から頭にかけてわしゃわしゃと撫でると、ゴローさんも「へっへっへ」と嬉しそうにしている。


「初めまして、ゴロー、だよね?」


 ゴローさんに目を合うようにしゃがみ込み、このはが声をかける。

 が、ゴローさんは反応をしない。

 もう一度「ゴロー?」と呼びかけるが、今度はプイっと顔を背けてしまう。

 ゴローさんにそっぽを向かれ、ちょっとだけ涙目のこのは。


「このは。ゴローじゃなく、ゴローさんだぞ」


 ゴローさんは自分の名前をゴローさんだと認識している。

 なのでゴローと呼ぶだけでは反応してくれないのだ。少しだけ頑固である。


「ゴローさん?」


「ワン」


「ゴローさんボクにも反応してくれた!」


「ワン」


 全く、その程度の事で泣くんじゃない。ほら舐めて拭いてあげるから。

 そう言わんばかりに、このはの目元をぺろぺろとするゴローさん。

 賢いだけでなく、優しさも備えている犬である。元々の原因はゴローさんの頑固さなのだが。 


「それじゃあ早速遊ぼうか」


 真紀がカバンをごそごそし始める。

 ゴローさんはこのはからさっさと離れ、尻尾を振りながら真紀の周りをぐるぐるし始めた。

 早く早くと言わんばかりに、真紀の背に乗ったりして待ちきれない様子のゴローさん。 

 そんなゴローさんの様子がおかしいのか、このはは笑いながら駿介に話しかける。


「ゴローさん落ち着きなさすぎだね」


「そうだな。落ち着いてじっとするのは大事な事だよな」


「うん!」


 ゴローさんよりも落ち着きの無さそうな少女が、屈託のない笑顔で元気よく返事をした。

 嫌味が通じず、苦笑いを浮かべる駿介。


「駿介、どうしたの? お腹でも痛い?」


「なんでもない。それよりゴローさんと遊ぶぞ」


 真紀がカバンから目的の物を取り出し、立ち上がる。

 手に持っているのは円盤状の物体、フリスビーである。


「ゴローさん、はい!」


 真紀が勢いよくフリスビーを投げると、いつの間にかリードを外されたゴローさんが必死に追いかけジャンプをした。

 見事に空中で口に咥えキャッチを決める。 


 フリスビーを咥え戻ってきたゴローさん。

 駿介がフリスビーをゴローさんから受け取ると真紀と同じように勢いよく投げる。

 これまた見事に空中でキャッチをするゴローさん。


「ヨーシヨシヨシ」


 戻ってきたゴローさんを褒めるように撫でる駿介。

 ゴローさん、体中をまさぐられ満足気味である。

 そして今度は真紀が投げ、ゴローさんがキャッチをし、戻って来てフリスビーを駿介に渡す。


「次、このはもやるか?」


 元はといえば、このはがゴローさんを見たいと言ったから来たのだ。

 ゴローさんと遊ぶのが楽しくて、駿介はそれを忘れるところだった。


「うん!」


 元気よく返事をするこのは。

 自分の番が来なくて拗ねていないか駿介は不安だったが、問題なかったようだ。  


「それ!」


 駿介は勢いよくフリスビーを投げる。

 それをゴローさんが追いかける。そしてこのはも追いかけた。


「えっ?」


 走り出したこのはに対し、駿介は目を丸めた、真紀も目を丸めた、なんならゴローさんも目を丸めた。

 お前が行くのかよ。二人と一匹は、その時心が一つになった。

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