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『後日談』の30

 「テルヤ。黒い人は待たなくていいのか?」

 「待ったら戦うことになるのでいいです……」


 やる気のない照也の返答を受けて、ゼロさんも適当そうに納得している。グロウさんに武器を探してくるよう求めたのは、単純にグロウさんをどけたたかっただけの都合であって、戦う為ではなかったようである。すると、グロウさんが戻ってきたら面倒なことになる訳で、その前に俺たちは体育館からずらかった。


 その後も体育祭のスケジュールと校内地図を見ながら、クラスメイトの出場している様々な競技へと応援に走った。太居君の出てる大食い競争。細井君の出てる棒高跳び。悪井君の出てるチキンレース。諸井君の出てる巨大つみ木くずし。更井君の出てる100キロマラソン。他にも多数。


 「岩田君の岩投げ合戦……最後の一投まで目が離せなかった」


 『岩投げ合戦』って、どんな競技だよ……そう怪しみつつ見に行った俺だったのだが、まさかの白熱した試合に思わず涙がこぼれた。あれはぜひ、映像で見ていただきたいばかり。しかし、この作品はアニメではないので、残念ながらお見せできない。う~ん……非常に残念だ。


 「やっと会えた……みんな、午前の競技は、これで終了だね」

 「お前……太郎。今まで、どこにいたんだ」


 玉入れ競争の最中、人波に流されて行方不明になっていた太郎が、2時間後にやっと姿を現した。ヤチャは大きいからすぐ見つかったんだけど、彼は小柄だから探すにも大変だったんだ。とにかく、みんな無事でよかった。


 「んじゃあ……お昼、どうする?」

 「俺、ゼロさんがお弁当を作ってくれたから、一緒に食べる」


 照也のやつは、彼女の手作り弁当をいただくらしいぞ。いいなぁ。一方、俺は持参した母ちゃん弁当。これはこれで非常に美味い。太郎は昼飯を買いに行くらしいし、それまではヤチャと2人で食べていようかと思う。


 「あああぁ!」

 「な……なに?ヤチャ」

 「……」


 おせちでも入ってそうな重箱を開けて、ヤチャが大きな声を発している。まさか……中身がなかったのか?俺も少し背伸びして、ヤチャの弁当を拝見した。


 「……」


 いや、これでもかというくらい、あれやこれやと野菜が詰まっている。肉はササミっぽいものがちらほら。若干、炭水化物が足りない気もするが、ええと……そこまで問題はなさそうである。じゃあ、どうしたというのか。


 「た……た……」

 「……?」

 「……たりない!量が足り……ない!帰る!うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」


 重箱を片手に持ったまま、ヤチャは学校の窓から飛び出して帰宅した。俺から見ると、量は十分にあった気がするけど、あの巨体には物足りなかったらしい。この場でリア充の照也とは別れて、俺は太郎と一緒に売店を探しに行った。


 「売店売店はっと……40階か」


 エレベーターに乗って40階へと移動し、食堂らしき場所に到着。すごい数の生徒がいる。パンやおにぎりを求めて殺到している生徒、それなだれの如くだし、テーブルも見た限りでは全て埋まっている。あの混雑に参戦しなくていいと考えたら、ちゃんと弁当を持ってきてよかったと心底から思ったよ。


 「席も空いてないし、学校のてっぺんにあった競技場で食べよう。買うのに時間がかかりそうだから、友世は先に行ってて」


 「お……おう」


 太郎の体格では生徒たちに押し入るにも時間がかかるだろうし、これだけ混んでいては食堂でご飯を食べるのも困難そうと判断した。お札を握りしめて勇敢に飛び込んでいった太郎を見送ってから、俺は学校の頂上にあるグラウンドへと向かった。


 学校の頂上のグラウンドというのは、開会式の行われていた場所である。今は競技も行われておらず、グラウンドにも観客席にも人はまばらだ。ここなら、一休みするにはちょうどいい。


 客席へ続く階段を上がって、そちらからグラウンドをながめてみた。午後の競技に備えて体を温める為に走っている人や、柔軟体操をしている人もいる。ステージ上にある大きなモニターには、現在の各チームの点数が表示されていた。


 『1組 345点』

 『2組 86点』

 『3組 58点』

 『4組 352点』


 それなりにいい勝負にはなっているらしい。だがしかし、2組と3組に関しては……あえて言及はしない。


『後日談』の31へ続く

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