第121話の1『スポーツマン』
《 前回までのあらすじ 》
俺、時命照也はギャルゲー主人公なのだが、なぜだかバトル漫画っぽい世界に飛ばされてしまう。魔王城へと潜入し、なんとかかんとか最初の敵を倒すことに成功する。だが、まだ魔王は姿を現さない。そんな俺の元へ、手紙のついた弓矢が撃ち込まれた。
矢文の文字が墨と筆で書いてあり、読み辛いくらい達筆なのはともかくとし……ヤチャの怪力握力でクシャっとされた手紙はもう、シュレッターにかけたも同然の状態である。それでも辛うじて、『体育』という文字だけは探し出すことができた。体育……体育っていったら、体育館くらいしか思いつかないけど。
「体育館に行けばいいのかな……」
「ああ?どこだよ。それ」
「多分、あの最初に入った広い部屋に来いってことだと思う」
「ああ……あそこか。まあ、いいんじゃねぇの?」
グロウのやつ、遊びに行きたい気持ちを隠しきれていないのだが、まだ体育館にあったバスケットボールが気になっているのだろうか。これがもし学園を舞台にした作品だったら、彼は意外とスポーツマン系のキャラだったのかもしれない。すると、仙人はおじいさん先生だし、ゼロさんは先輩だし、ルルルは俺の妹なんだが……ヤチャとゴウさんは想像がつかない。
「行く……ぞぉ!」
呼び出された場所が解ったと見て、ヤチャが真っ先に階段を降り始めた。どこからともなく矢が飛んできたからして、今は俺も先頭を歩く自信がない。リーダーはヤチャに任せよう。
「……ふははは。こっち……だぁ!」
「ヤチャ……そっちじゃないぞ」
ヤチャが玄関の方へ行こうとするので、引き止めて階段から左の通路へと曲がる。やっぱり俺が先導した方がよさそうだから、なるべくは横に並んで歩くよう努めた。校舎から体育館へと続く扉は開きっぱなしになっており、体育館にも灯りがついていて白い光が漏れ出していた。誰かいるのか?
「……」
こっそりと体育館をのぞき込む。人影がある。その人物は……こちらに向けて弓を引いている。
「やばいっ!」
弓矢が飛び出すより早く、俺は危険を察知して扉の影に隠れた。すぐに弓矢が飛来。俺の後ろにいた仙人の肩に撃ち込まれた。
「うおっ……」
「せ……仙人!」
ささった矢を引き抜き、仙人が肩を押さえてしゃがみ込む。ひとまず扉を閉めて、仙人のケガの深さを見る。
「い……痛いですか?」
「……あ。わしのここ、毛だから。痛くはないぞ」
矢が刺さった部分は本体ではなく、体毛の盛り上がりだったらしい。仙人は犬の獣人だから体は毛におおわれているのだけど、思ったより毛深い事実が発覚した。なのに、なぜ頭頂部だけは毛がなくなってしまったのか。その点、別の疑問は深まった。
『おいっ!お前!』
「……?」
何か知らない声がした気がするが、俺が振り向いた時には拳を振り切ったヤチャの姿と、ちょっとだけ開いている体育館の扉しかなかった。一体、誰の声だったのだろう。
「テルヤァ!あやしいやつだぁ!」
「あやしいやつ?」
また弓矢が飛んで来はしないかとビビりながらも、俺は体育館の扉を大きく開いた。弓を引いていた人物は全身を西洋の鎧に身を包んでおり、肌や体は全く見えない。今は弓を降ろしつつ、カブト越しに俺たちを見ている。その他には、1……2……3……6人の黒いスーツ黒ボウシの集団がいる。黒スーツの1人は壁に殴りつけられているが、あれはヤチャがやったものだと思われる。
『勇者。なかなか、あなた来ないくて、催促のをしたところです』
「……?」
弓矢を撃った人物が俺に語り掛けてくる。あの人が矢文の差出人か。すると、周りの人たちも敵なのは間違いないだろうけど、どうして体育館で待っているのだろうか。
『私がエリザベス・シャーベット。魔王様の誓いで、勇者のお相手するわ。この、私と、エリザベス親衛隊!』
外国人っぽい、ややぎこちない日本語で自己紹介をしてくれる。やっぱり、2人目の敵もミスコンテストの参加者か。彼女の周りにいる6人の黒スーツは親衛隊らしい。相手はエリザベスと親衛隊をあわせて、俺たちと同じ人数。ただ、俺とルルルは基本的に戦力にならないし……敵の情報も少ない。戦って勝てるのか?
「オレサマだけで十分……だぁ!」
真っ向勝負と見て、ヤチャが腕を鳴らしながら足を進める。エリザベスも弓矢を隣の黒スーツへと手渡した。それと同時に彼女の手に丸いものが現れ、それがヤチャへ向けて大砲の如く投げつけられた。
「……ぬっ!」
ズドンと重い音を立て、ヤチャが丸い玉を受け止めた。あれは……なんだ?
『いざ。バレーボール勝負よ!』
え……バレーボール?
第121話の2へ続く






