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15.風魔術を教わりました

 令嬢達の襲撃を右から左に流した私達は適当なところで寮の部屋に戻った。


 女子寮は三階建てで貴族と平民では棟が違った。

 私達1年生は当然1階だった。

 ここなら平民しかいないから逆恨みした貴族に襲われる心配もないし一安心だ。


「でも、判らないわよ。貴族に金で雇われた平民がアミを襲ってくるかもしれないし」

 エーレンは私を脅してくれた。

「それはないわよ」

 私はそう言うと、

「おやすみなさい」

 といって自分の部屋に入ろうとしたらエーレンが強引に入ってきた。



「エーレンどうしたの?」

「少し確認したいことがあって」

 エーレンはそう言うとさっさと私の椅子に座ってくれた。

 必然的に私はベッドに座ることになった。

 部屋の中は勉強机とベッドがあるだけだった。

 後小さなクローゼットもあるが私は基本は全て収納ボックスに入れているから使っていなかったし……


「で、何を確認したいの?」

「1つめはこの世界がどのゲームの世界か判った?」

「ううん全然。魔術学園は聞いたことはあるけれど、その手のゲームは一杯出ていたし、私は王子様の名前さえも知らないもの」

「王子は第一王子が5年生でディートリヒ殿下と第二王子が3年生でヘンドリック殿下よ」

「うーん、名前聞いてもピンとこないわ」

「まあ、あなたに確認する私が間違っていると思うけれど、普通は王子の名前くらい知っているわよ」

「だってお母様が貴族が嫌いでその手の話一切教えてくれないのよ」

「うーん、でも、そこまで嫌う理由って何なのかな」

 エーレンが改めて聞いてきた。


「判らないわよ。貴族の話したらとても不機嫌になるから、私も出来るだけ触れないようにしてきたし」

 本当に母は途端に不機嫌になるのだ。

 一度冒険者ギルドに貴族がダンジョンの一つを貸し切りにしろと我が儘言ってきたときは、危うくその貴族は燃やされるところだった。私と父が必死になって母を止めたのだ。

 私達2人がいなかったら確実にその貴族は死んでいたと思う。


「私は思うんだけど、アミのお母様ってとても魔力が多くて魔術も凄いのよね」

「うん。王都に来たらもっと凄い人がいると思ったのに、ヨーゼフ先生以外はまだ出会ったことがないわ」

 私が首を振ると

「ガイスラー先生でも駄目なの?」

「ガイスラー先生の魔力とか詳しいことはあれだけじゃ判らないけれど、おそらくはそうよ」

 私が首を振ると

「うーん、そこまでの人間を魔術学園がほおっておくとは思えないんだけど」

「えっ、それはどういう意味?」

「あなたのお母様、この魔術学園の卒業生なんじゃないの?」

「ええええ! そんなのあり得ないわよ。それだったら私がこの学園に入るの反対するのおかしいじゃない!」

「そこが判らないのよね」

 エーレンが首をかしげてくれたけれど、私は絶対にあり得ないと思った。

 だって貴族嫌いなお母様がこんな貴族だらけの魔術学園で生活できるわけはないんだから。母が暴れたらこんな学園下手したら灰燼と化しているはずだった。

 結局あーでもないこうでもないとエーレンが言ううちに眠くなって私は寝てしまったのだ。




 翌日は1限目から風魔術の実技だった。

 今日は私の転入試験の試験管もしてくれた学年主任のガイスラー先生だった。


 体操着に着替えて第二訓練場に集まる。


「皆おはよう」

「「「おはようございます」」」

「今日は簡単な風魔術を教える。その前にアマーリア。くれぐれも第一訓練場の二の舞をしないように」

それを聞いて皆がどっと笑ってくれたんだけど……わざと壊したんじやないのに!


「はい」

 私は仕方なく頷いた。

 

「では、今日はウィンドカッターだ」

 先生はそう言うと見本になるために前に立ってくれた。


「風の神ヘアイオロスよ。我が身に力を貸してくれたまえ。出でよ、ウインドカッター!」

 先生の声とともに尖った手裏剣のような風が飛んでいき、スパッと標的を両断した。


「凄い!」

「さすがガイスラー先生」

 それを見て皆は歓声を上げていた。


「こんなのは慣れたらすぐに出来る」

 全く照れずに冷静にガイスラー先生は言ってくれた。


 私も出来るんだろうか?

 風魔術も危険だから止めた方が良いとヨーゼフ先生からは言われていたけど、私もとてもしたくなった。先生に朝一で注意された事なんて忘れていた。


「もう一度いくぞ」

 先生は全員を見渡した。

「風の神ヘアイオロスよ。我が身に力を貸してくれたまえ。出でよ、ウインドカッター!」

 先生がやると同時に「ター」

 私も思わずやってしまったのだ。


 シャキン!

 私の出したウインドカッターが先生の頭をかすったのだ。

 そして、先生の髪の毛が切れていた……


「な、何事だ!」

 先生は慌ててこちらを向いた。

「アマーリア!」


「えっ、いえこれは、つい」

 私はしどろもどろになった。


 先生の頭の天辺だけが毛がなくなったのだ。


「何がついだ。当たり所が悪かったら大怪我になるところだったなんだぞ。何もなっていなかったからって大変なことだ」

 ガイスラー先生はそう言ってくれたけれど、確かに先が天辺はげになっただけたで大したことは無かったと思うけれど……

「先生、先生の頭が大変なことになっています」

 吹き出すのを必死に抑えてビアンカが指摘しなくても良いことを指摘してくれた。


「な、何だと!」

 先生は慌てて鏡を出して自分の頭の天辺だけが髪がウィンドカッターで切り取られたのを見て開いた口が塞がらなくなった。


「アマーリア! どういう事だ!」

「も、申し訳ありません」

 我に返ったガイスラー先生が叱責するのと私が頭を下げるのが同時だった。

 皆吹き出すし、エッダなんてお腹抱えて笑っていたけれど、私はそれどころではなかった。

 先生の叱責を一身に受けたのだ。まあ、私が悪かったのは事実だし……

 先生はそれ以来天辺はげと私達の間であだ名がついてしまったのだ……全部悪いのは私だ。


 仕事熱心な先生はそのまま授業を続けてくれたが、私は皆と別メニュウで小さな小指サイズのウィンドカッターを出す訓練を延々させられたのだった……

ここまで読んで頂いて有難うございます。

ザビエル?になったガイスラー先生でした。(今はしりませんが昔は似顔絵が歴史の教科書に載っていた)

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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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