13.子爵令息と対決しました
なんとか私が解放されたのはお昼休みになってからだった。
私はお昼を食べに教室に戻ったのだった。
「大丈夫だった、アミ?」
「もう最悪よ。学園長はガミガミ言うし、学年主任のガイスラー先生には怒られるし、果てはオールドミスまで出て来て、もう最悪だったんだから」
私はビアンカとエーレンに愚痴りながら昼食の載った食器を持って食堂の中を空いている席を探していた。
「ここなら良いわ」
「やっと空いていたわね」
私達は食堂の端でやっと空席を見つけた。
「おい、お前ら、そこは俺達1年B組の席だぞ」
座ろうとしたら横から偉ぶった男が出て来た。
「えっ、そんなのいつ決まったのよ?」
「ちょっとアミ」
「相手はお貴族様よ」
エーレンとビアンカが注意してきたが、
「関係無いわよ。私達が先に座ったんだから私達の席よ」
私がむっとして言い返すと、
「おい、お前、それが貴族である俺様に言う台詞か」
「貴族か何か知らないけれど、ここは私達が先に座ったんだから私達の席でしょ。いつから食堂を一年B組がしきっているのよ」
「何だと、生意気な」
「おい、バッヘム、こいつ、ライナーに逆らった平民女だぜ」
「ライナーって?」
「この前、平民女なんかに負けてコテンパンにされた男爵家の」
「ああ、あの軟弱ギレッセン男爵のところの息子か?」
「平民女、貴族界で最下層の男爵に勝った位で威張るなよ」
男達が私を睨み付けてきた。
まあ、でも、一年生に凄まれても可愛いものだ。
今世、母に散々どやしつけられことに慣れている私には男の子達の視線を受けてもびくともしなかった。まあ、私は前世の記憶もあるし……
それに、私は先生方から散々怒られていい加減に気が立っていた。
だから必死にエーレンとビアンカが止めようと合図してくれていたんだけど、止まらなかった。
「ふうん。何か口だけはご立派なお貴族様ね。何なら3人まとめて燃やしてあげましょうか」
「な、何だと貴様、このバッヘム・ブルーメ子爵令息様に逆らうというのか?」
「何だ。それだけ威張るからせめて公爵令息とか伯爵令息かと思ったら高々子爵令息だったの? 男爵も子爵も貴族界では最下層なのは変わらないじゃない!」
「あ、アミ、流石にそれはまずいわよ」
「駄目だってアミ」
エーレンとビアンカが注意してきたけど遅かった。
「な、何だと平民女。子爵家を男爵家なんかと同列にするのか!」
「もう許さん。決闘だ!」
バッヘムとかいう子爵令息が申し込んできた。
「良いわよ。受けて立つわ」
「ちょ、ちょっとアミ」
「二日連続はまずくない?」
「そうだ。謝るなら今のうちだぞ」
子爵令息の周りの男達が言ってくれたが、
「それを言うなら、そちらの方よ。私、今、散々怒られて気が立っているのよ。ライナーの時は手加減できたけれど、今度は出来ないかもよ。それでも良いの?」
「ちょっと、アミ!」
「なに言い出すのよ!」
「上等だ。放課後、訓練場だ!」
「判ったわ」
必死にビアンカとエーレンが止めろと合図するのに私は無視して決闘を受け入れたのだ。
「もう、アミはどうしてそう決闘したがるのよ」
「相手は子爵様よ。男爵家のライナーとは格が違うんだから」
エーレンとビアンカが教室に帰ってきてからもブツブツ言ってくれた。
「どうしたんだ?」
アーベルが横から聞いてきた。
「アーベル、聞いてよ。またアミが決闘申し込まれたのよ」
「またか? 凄いな」
「それも今度は子爵家よ」
「まあ、男爵家も子爵家もお貴族様には違いないしな」
「凄いじゃない。アミ、男爵家に次いで子爵家までのしたら、今度は伯爵家よ。頑張ってね」
確か某公爵家で父が料理長をしているエッダが脳天気なことを言ってくれた。
「ちょっとエッダ。それはしゃれにならないから」
「アミなら公爵令息までやりかねないわよ」
エーレンとビアンカが好きな事を言ってくれるんだけど、さすがの私も公爵令息までは手を出さないわよ!
そう言っても二人は信じてくれなかった。
放課後になった。
「な、なんだこれは?」
「誰だよ、こんなのしたのは?」
一年B組の面々が驚いて訓練場を見ていた。
一緒に来てくれたC組の面々が一斉に私を見た。
そう言えば私が天井を壊してしまったんだった。
訓練場の入口に立ち入り禁止の看板がデカデカと出ていたのだ。
「平民女。貴様、俺様と決闘するのが嫌になってこんなことをしたのか?」
バッヘムはとち狂ったことを聞いてきた。
「そんな訳ないでしょ。文句は私にファイアーボールを大きく作れって言ったアッヘンバッハ先生に言ってよね」
私はやった自分のことは棚に上げて担当教官のせいにした。
「どうするんだよ? これじゃあ訓練場が使えないじゃないか!」
「第二訓練場にすれば良いんじゃないか?」
アーベルが横から提案してくれた。
「ああ、あの狭い所か」
「あんな小さいところでやるのか」
「無いよりましだろう」
私達は連れだって第二訓練場に来た。
「「「おおおお」」」
「ついに勇者が来たぞ」
そこには既に多くの観客が集まっていたのだ。
バッヘム等は驚いていたが、
「さあ、皆さん。ついに貴族キラーのアマーリアさんに子爵家のホープ、バッヘムが挑む、貴族対平民の対決、方や訓練場をも一瞬で破壊し尽くした怪物、アマーリア嬢に対して貴族のメンツを守るために果敢にも立ち上がったバッヘムが挑みます」
アナウンサー宜しく、確かこの前、私とライナーの賭博をしていた先輩が皆に叫んでいた。
「おい、バッヘム、頑張れよ!」
「バッヘム様!」
会場の貴族達が声援を送る。
「対するは平民の期待の星、アマーリア嬢です」
ブックメーカー先輩が私を紹介してくれると、
「「「うわーーーー」」」
大声援が起こった。
「アミちゃん頑張れ!」
「第二訓練場まで壊すなよ!」
変な声援まで聞こえる。
「凄い、いつの間にかアミが本命になっているわ」
エッダが感心してくれた。
「さあて、アマーリア嬢は第一訓練場に続いて第二訓練場まで壊すんでしょうか? さあ、張った張った」
またいきなり賭けの会場になっているんだけど。オッズは私が1に対してバッヘムが10なんだけど……
「おい、お前ら、俺にか懸けろ、平民女にこのバッヘム様が負けるわけにはいかん」
バッヘムが、一年B組の連中に賭けさせているんだけど……
「おい、平民女、いい気になっているなよ。俺は水魔術の天才と言われているんだ。ここでお前を地面に沈めてやるぜ」
「返り討ちにしてあげるわ」
私はやる気満々だった。
「では、両者よろしいですか?」
私とバッヘムは背中合わせに立った。
「では決闘開始します。一歩、二歩、三歩」
今度はバッヘムは卑怯な手は使わないみたいだった。
同じ歩数で歩いているのは一緒だった。
そして、10歩歩いたときだ。
「水の神オーケアノスよ……」
バッヘムは詠唱を唱えだしたのだ。
こいつは馬鹿なんだろうか?
決闘でそんな悠長な事をしていたら勝てるわけはない。
「ウォーター!」
私の叫び声と共に大容量の水が発生してバッヘムに向かって飛んで行った!
ダーーン!
大量の水はあっと言う間にバッヘムを吹っ飛ばしてフェンスに叩きつけていたのだった。
ここまで読んで頂いて有り難うございました。
貴族というども子爵家では、全くアマーリアの敵ではありませんでした……
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