ゲームの世界のような国王と王妃の恋物語を初めて知りました
リックはその後、用事があるとかで、寮まで送れなくて申し訳ないと謝りつつ帰っていった。
「アミ、凄いじゃない、あんなイケメンとお知り合いだったなんて。絶対にリック様ってお貴族様よね」
「うーん、その辺りはよく知らないのよね」
ビアンカの問いに私は口を濁した。
「何故知らないのよ? あなたのお母様に聞かなかったの?」
「聞いても母は昔の知り合いだとしか教えてくれなかったのよ」
そう、いくら聞いても母はそれ以上は教えてくれなかったのだ。
「あんまりうるさく言うとトレーニング倍にするわよ」
母はそう言いながら、既に倍のトレーニングメニューを書き出してくれていたんだけど……
もう一度会いたいだの、どこに住んでいるのだの聞いても全く答えてくれなかった。
やっと私が手紙を書くのは認めてくれたけれど、返事も帰ってこなかったし……
「住所はあなたが書いたのよね。覚えていないの?」
ビアンカに聞かれて、
「私はリックへって書いただけだったから。通信魔術で送ってくれるって母が言ったから判らないのよ」
「通信魔術ってあなたのいたアンハームからここまでどれだけ離れていると思うのよ。普通の魔術師じゃ到底届かないわよ」
「うーん、でも、母ならおそらく届くと思うんだよね」
何しろ帝国にも通信魔術で連絡していたくらいだから、王都には届くはずだ。帝国にはしつこい男がいるから断りの手紙を送るとかえらく怒っていたから、できる限り関わらないようにしていて詳しくは知らないけど……
「何々、まだ諦めないだ、ふざけるな!」
ちゃんと返事までもらってその返事を燃やしていたから……
「まあ良いわ。またお会いしたときに聞いておいてよね」
「というか、アミ、リック様と付き合うのはやめておいた方が良いわよ」
考え込んでいたエーレンがいきなり忠告してくれた。
「えっ、どうして?」
私の代わりにビアンカが聞いてくれた。
「だってお貴族様と平民のアミじゃ釣り合う訳はないじゃない」
「そんなの判らないじゃない。確か今の王妃様は元々平民出身のはずよ」
「それはそうだけど、王太子殿下は婚約者がいたにもかかわらず、その平民の女の子と恋に落ちたんでしょう。その当時凄まじいゴシップになったみたいよ」
「えっ、そうなんだ」
「あなたこの話知らないの? めちゃくちゃ有名なのに! 本当にアンハームって田舎なのね」
ビアンカが馬鹿にしてくれたけれど……アンハームが田舎でなくて、いや、田舎は田舎だけれど……母がお貴族様が大嫌いで私にそんな話を聞かせないようにしていただけだと思う。
エーレンらによると、元々今の国王陛下、当時の王太子殿下には公爵家の令嬢が婚約者としていたらしい。ところが王立魔術学園に入ってきた平民のディアナという女の子に王太子殿下が恋してしまったそうだ。
最初は淡い恋だったらしい。一過性のものだろうと側近や周りの大人達は思っていたそうだ。
しかし、それを察知した婚約者の公爵令嬢がディアナに嫉妬して注意した。それも相当きつく。それでディアナが泣いてしまい、それを知った王太子が怒って公爵令嬢に文句を言ったらしい。
ゲームとかでよくある話だ。公爵令嬢の行いは婚約者を取られまいとヒロインの前に登場する悪役令嬢そのままだった。ヒロインが耐えて、それを王太子が庇う。面白くない悪役令嬢がさらに酷い虐めを行う。王太子とディアナの恋の前に悪役令嬢が障壁のように立ち塞がって、それによって更に二人の恋が燃え広がったのだとか。それを知った悪役令嬢の虐めは更に激しさをました。
「公爵令嬢はディアナ様を虐め倒したんでしょう。あまりに酷いから最後は王太子殿下が立ち上がられて、公爵令嬢を断罪して王都追放したって聞いたわ。さすがの公爵令嬢もそのショックからその後消息を絶ったんですって。まあ、皆がその処罰を納得するくらい酷い虐めだったから仕方がなかったと思うけれど」
ビアンカはまだ王妃様たちの味方をしていた。
「でも、王妃様は王宮に慣れるまでにとても苦労されたと聞くわ。
中々子供が生まれなくて、陛下は侯爵家の側妃様を娶られたのよ。その側妃様との間に第一王子のディートリヒ様がお生まれになったのよ。その後よ、王妃様が第二王子殿下をお生みになられたのは。
でも、今では長男をお生みになった侯爵家出身の側妃様の方が王宮では力があるそうよ。王妃様のお生みになった第二王子殿下は王位継承争いにおいても不利になっているみたいよ」
さすが商人の娘のエーレンは情報通だ。
「でも、私と王妃様は全く関係ないでしょ」
「それはそうだけど、お貴族様の家はどこともにそんな感じだからあなたもお貴族様と結婚したら大変なことになるわよ」
「判っているわよ」
私は大きく頷いた。そんなこと母が許すわけなかった。
下手したら相手もろとも燃やされるかもしれない。
母はそれだけ凶暴だった。
「本当にわかっているのかな」
「だから大丈夫だって」
「あなたはそうかもしれないけれど、リック様はどうなのかしら?」
「結構アミを見る目が熱かったわよ」
二人して言ってくれたんだけど。それはないと思う。リックは単なる幼なじみだ。
「えっ、そうかな。あの泣き虫リックに恋に落ちる事なんて絶対にないと思うけれど」
私は笑って言い切っていた。
「なら良いんだけど。私は友達のあなたが失意にくれたり、後で苦労するのを見るのが嫌だから」
エーレンが親切心から忠告してくれるのはよく判ったんだけど、何でそこまで気にするのか私にはよく判らなかった。
ここまで読んで頂いて有り難うございました
全く他人ごとだと思っているアマーリアでした……
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