475話 VSソフィア・その4
「もっともっといくよ!」
ソフィアが混乱しているうちにたたみかける。
そう決めて、僕はさらに前に出た。
突き。
もしも直撃したら、木剣だとしても大怪我をしてしまう。
……なんて、物騒な考えは捨てることにした。
余計なことを考えていたらソフィアに勝つことはできない。
地面を強く踏みしめて。
勢いを乗せて、高速の突きを放つ。
「くっ……!?」
ソフィアは横に避けようとして……
しかし、完全に避けることができない。
まだ動揺が残っているらしく、動きが鈍い。
体を逃しつつ、木剣を盾のように構えた。
僕の突きを受け流す。
ダメージはない。
ただ、剣を保持するために手に力を入れて……
そのせいで全体のバランスが崩れて、わずかに体勢を乱していた。
チャンスだ。
僕はさらに前に出た。
「はぁあああああっ!!!」
「その程度で……!」
全力の追撃。
直撃すれば、彼女の力を奪うことができるだろう。
ただ、ソフィアも伊達に剣聖を名乗っていない。
地面を叩くような勢いで踏みしめて、すぐに体勢を立て直した。
その上で僕の攻撃をしっかりと受け止めて、流れるような動きでカウンターに繋がる。
横薙ぎの一撃。
ともすれば、死神の鎌のように思えるほど鋭いもので……
背中がゾクリと震える。
ダメだ。
ここで恐怖に負けたらいけない。
心に喝を入れて、逃げ出したい気持ちを我慢した。
その上で、こちらもカウンターを繰り出す。
木剣を縦に構えることで、横薙ぎの一撃を受け止めた。
剣から衝撃が伝わり、手が痺れる。
痛い、辛い、厳しい。
でも、こういうことは慣れている。
負担は無視。
戦いだけに集中。
ソフィアだけを見て、無心で剣を振る。
「これは……!?」
「届かせて、みせる!」
距離を取り。
全力で駆けて、その勢いを乗せた一撃を叩き込む。
防がれてしまうのだけど、気にしない。
位置を変えて、ソフィアの死角に回り込む。
その上で、再び速度をつけた斬撃を繰り出していく。
その繰り返し。
ヒット&アウェイだ。
なんて泥臭い戦いだろう。
華麗な演舞とは程遠い。
がむしゃらにしがみついているようなもので、華麗さなんてものとは縁がない。
でも。
他人からどう見られているか、とか。
見栄えを気にする、とか。
そんなものはどうでもいい。
今はただ、試合に勝ちたい。
剣の師匠であるソフィアに、今の僕を見てもらいたい。
そして……
「乗り越えてみせる!」
ありったけの力を込めた全力の一撃。
それは……ソフィアに届いた。
彼女は木剣を手放すことはなかったものの、しかし、威力に耐えることができず、上に弾かれてしまう。
体勢も大きく崩していた。
今が最大の、そして最後のチャンスだ!
◆ お知らせ ◆
新連載です。
『ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?』
https://book1.adouzi.eu.org/n6423iq/
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