428話 頼もしい援軍?
「リコリス!」
「やっほー、フェイト。こっちも大変なことになっているわね」
リコリスなら、こういう時に絶対に駆けつけてくれると思っていた。
「こっちも、っていうことは……」
「ソフィア達も襲われているわ。狙いは、アイシャとスノウ。それと、マシュマロみたいね」
「ソフィア達は大丈夫!?」
「大丈夫に決まっているでしょ? ソフィアだけじゃなくて、レナもいるのよ。敵に同情するわ」
言われてみると、その通りだ。
ソフィアは剣聖。
レナは魔剣使い。
この二人を打ち崩せる者なんて、僕が知る限り、数えるほどしかいない。
「で、あたしは天使のように優しいから、フェイトのことが気になって様子を見に来てあげた、っていうわけ」
「ありがとう。リコリスのおかげで、助かったよ」
「べ、別にあんたのためにしたわけじゃないんだからね!?」
「なにそれ?」
「ツンデレ。萌える?」
よくわからない。
「ま……こっちも厄介なことになっているみたいね」
リコリスは、周囲を囲む兵士と、その奥に控えるナナカを睨みつけた。
「とりあえず、あの女、やっぱり真っ黒ってことでオーケー?」
「すごいざっくりしているね……まあ、間違っていないけど」
ナナカは聖獣を欲している。
それは間違いない。
問題は、聖獣を手に入れてどうするか? ということ。
それは……
「ナナカは、聖獣を利用しようとしている。この地をさらに繁栄させるために、その力を求めている……違う?」
「正解です」
あっさりと認められた。
ここまできたら隠していても仕方ないと開き直っているのか。
あるいは、どうせ僕達は始末するから、と考えているのか。
どちらにしても、わりと最悪の答えだ。
過去、人間は聖獣を利用して……
その結果、魔獣ジャガーノートが生まれた。
黎明の同盟も生まれることになって、各地で大きな災厄が起きた。
そんな歴史を繰り返すわけにはいかない。
「ナナカ、そんなことは諦めてほしい。聖獣を利用するっていうことは、下手をしたら……」
「魔獣を作り出す、ということを言いたいのですか?」
「知っていたの?」
「ええ、もちろん。聖獣について調べたのですから、魔獣について知る機会も得ると思いませんか?」
「理解しているのなら、どうして……」
「リターンを得るにはリスクも覚悟しなければいけません。それは、当たり前のことでは?」
「そういう話じゃなくて……!」
「私は……」
ナナカは強く。
とても強い口調で言う。
「私の代で、この街を終わらせるわけにはいかないのです。それが、街を治めるものの務めであり、義務なのです」
「それは、どういう……?」
「剣聖さんに敵わないのなら、その弱点を突くしかありませんね。みなさん、フェイトさまを捕まえてください。そこの妖精さんは、どちらでもいいです」
「くっ……!」
問答無用みたいだ。
兵士が再び押し寄せてきた。
「フェイト!」
「うん!」
やっていることはアウトだけど、でも、ナナカが根っからの悪人とは思えない。
なにか事情があるのだと思う。
できるなら説得したい。
ただ、今はこの状況を乗り切る方が先だ。
「でりゃあああ!」
近くにあった椅子を掴んで、そのまま窓に放り投げた。
ガシャン! と窓が割れる。
リコリスを肩に乗せた状態で、窓から外に飛び出した。
ひとまず兵士を振り切る。
それから、ソフィア達と合流して……
「フェイト!」
「え? ……うわっ」
リコリスが指差す方を見ると、巨大な火球が目の前に迫っていた。




