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423話 魅了

「聖獣? えっと……確か、おとぎ話でそのようなものを聞いたことはありますが」


 ナナカは小首を傾げつつ、思い出すようにして言う。


 とぼけている?

 それとも、本当に知らない?


 その境目を見極めるように、じっとナナカを見る。

 すると、ナナカも僕をまっすぐに見た。


「……」


 綺麗な瞳だ。

 ありきたりな表現だけど、キラキラと輝く宝石のよう。

 吸い込まれるような感じで、このままずっと見ていたいと……


「……っ……」


 僕は今、なにを考えていた?

 どうして、こんなにナナカのことで心がいっぱいに……?


「フェイト様、どうかされましたか?」

「……ううん、なんでもないよ。それよりも、ごはんにしようか。ほら、リコリスもお腹が減ったよね?」

「……」

「リコリス?」

「あ、うん。そうね。いっぱい食べましょ」


 リコリスの様子がちょっとおかしい?


 気になったものの、でも、今は追求しない方がいいと思い……

 そのまま三人で食事を楽しんだ。




――――――――――




「では、私はこれで」


 屋敷へ戻り、ナナカと別れた。


「……フェイト、こっちに」


 それからすぐに、リコリスに別の場所に連れて行かれた。

 誰もいない裏庭に到着したところで、こつん、と頭を叩かれる。


「いた!?」

「ふむ。今度は反応があるわね」

「ちょっと、リコリス……なにをするのさ」

「フェイト、危ないところだったわよ」

「え?」

「あの女、フェイトにチャームの魔法をかけていたの」

「チャームって……魅了の?」


 異性の心を掴み、己の虜にする。

 術者の力量で効果は左右されるものの……

 基本、相手の心に干渉するため、危険な魔法として認識されている。

 特別な許可を持っていない限り、普通は使用禁止だ。


「そういえば、食事の時に変な感じに……」

「あれ。あたしがフェイトの頭を叩いていたの。今、やったようにね」

「それじゃあ……」

「あの時、フェイトが正気に戻ったのはあたしのおかげね! ふふんっ、リコリスちゃん、ナイスプレー」

「そうだったんだ……ありがとう、リコリス」

「そ、そうやって素直に感謝されると調子が狂うわね……」


 リコリスは素直になれない照れ屋さんだ。


「僕、危ないところだったんだ……リコリスは、チャームの魔法についてどれくらい知っているの?」

「パーフェクトスーパースペシャルリコリスちゃんに知らないことはないわ!」

「そういうボケはいいから」

「ぼ、ボケって……まったくもう、情緒ってものがないんだから。チャームにかけられたとしても、相手に惚れるとか、そういうことはないわ。あったとしても、一時的なものね。それ以上のものを求めるのなら……効果を永続させたいなら、それこそ大規模な儀式が必要になるわ」

「さすがに、ナナカはそんなことをしていないから……簡易的なチャーム?」

「だと思うわ。ただ、一時でもかかると厄介よ。その場は相手の支配下に置かれるようなものだから、なんでも言うことを聞いていたと思う」


 その話を聞いて思い浮かんだことは、ナナカは、なにかしらの情報を僕から引き出したかったのではないか? ということだ。


 効果が永続的でないなら、僕を惚れさせても意味がない。

 言うことを聞かせようとしても、やはり意味がない。

 そんなことをしたら、我に返った後、一気に信用を失う。


 でも、話を聞くだけだとしたら?

 大して記憶に残らず、後々に影響する確率は低い。


 そんな推測を口にすると、リコリスが賛同してくれた。


「たぶん、フェイトの考えている通りね。あの女、フェイトからなにかを聞き出したかったんだと思うわ」

「いったい、なにを……」


 考えて、閃いた。


「もしかして、マシュマロのことかな……?」

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] ガブリエルの魅了的な…奴か しかも意識だけで抵抗できないとなると、以外に戦闘において厄介だな…(某誰か風)
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