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382話 最終決戦・その3

「……邪魔をするナ」


 ジャガーノートが低い声でそう問いかけてきた。


「喋った……?」

「神様のようなものですからね。人語も解することができるのでしょう」


 いつでも動けるように構えつつ、ジャガーノートとの対話を試みる。


「あなたは昔、聖獣と呼ばれていたんだよね? 神様のように崇められていた」

「そうダ」

「人間と共存をしていた。獣人も一緒に」

「そうダ」

「そして……酷い裏切りを受けた」

「そうダ!!!」


 ジャガーノートが吠えた。

 怒りと憎しみと、そして悲しみが凝縮された咆哮だ。


「人間は我から全てを奪っタ! 我は様々なものを与えてきたというのニ、連中は我から全てを奪ったのダ!!!」

「それは……」

「なればこソ、我は人間から全てを奪い返ス! 奪われたから奪ウ、当然の話だろウ? 自然な流れだろウ?」


 同情する。


「今度は我の番ダ! 人間の全てを奪ウ! 老若男女関係なク、我の牙と爪で殺してくれよウ! 奴らが築き上げたものを叩き壊してくれよウ! それだけの権利が我にはあるはずダ!!!」


 同情してしまうけど……


 でも、ダメだ。

 ジャガーノートの復讐は正しいかもしれないけど、でも、正しくない。


「悪いけど、邪魔をさせてもらうよ」

「なんだト?」

「あなたの復讐は正当な権利があると思う」

「ならバ……」

「でも、復讐のために手段を選ばないのは間違っている!」


 ジャガーノートは復讐のために獣人を犠牲にした。

 黎明の同盟なんてものを作り上げて、獣人を贄にして、魔剣を作り上げた。


 ……仲間で、家族のはずの獣人を犠牲にしたんだ。

 いや、殺した。


 それを認めるわけにはいかない。

 それだけは認められない。


「あなたはもう、手段と目的がごっちゃになっているんだ。殺せればそれでいい。そのためにはなんでもする……子であるはずの獣人も犠牲にした」

「……うるさイ」

「仲間を犠牲にしてまで果たす復讐が正しいなんて、そんなことあるもんか」

「……黙レ」

「同情はする。でも、あなたの行動は認めない。仲間を犠牲にすることが正しいなんて、絶対に認めない!」

「黙れと言ったゾ、人間がぁああああア!!!」


 ジャガーノートが吠えて、戦闘態勢に戻る。


 結局のところ……


 堕ちた聖獣の心は黒一色に染まっていた。

 憎んで憎んで憎んで、もう殺すことしか考えられない。

 なにをしても、仲間を犠牲にしても、とにかく殺す。殺し尽くす。


 それだけ。


「……悲しい存在ですね」

「うん」


 殺すためだけに生きる生物なんていない。

 でも、ジャガーノートは殺すことしか考えていない。


 なら、その歪な執念を断ち切ろう。

 悲しみはここで終わらせよう。


 そのために……


「あなたを……討つ!」

「やってみロ、人間如きガ!」


 第ニラウンド開始だ。


 ジャガーノートはその巨体を活かして、突撃をしかけてきた。

 かすっただけで終わりだろう。


 大きく跳んで避けて……

 同時に攻撃を繰り出した。


「無駄ダ。我に刃ハ……ナッ!?」


 僕とソフィアの剣がジャガーノートの足を切り裂いた。

 予想外の痛みにジャガーノートの動きが止まる。


「今まで適当に攻撃をしていたと思った? 残念、違うよ」

「どれだけ強靭な毛皮だろうと、同じ箇所を攻撃され続けたら、いつか綻びが生じる。私達の狙いに気づくことができなかったみたいですね」


 何度も何度も足を攻撃して、そして、その防御を突破した。

 確かなダメージを与えることができた。


 いける。


 自信が湧いてきて、小さな笑みを浮かべた。


「うっとうしイッ!!!」


 ジャガーノートはブレスを吐こうとして……


「よいさーっ!」


 どこからともなく矢のように飛んできたレナによって、頭部をはたかれた。

新作始めてみました。

『執事ですがなにか?~幼馴染のパワハラ王女と絶縁したら、隣国の向日葵王女に拾われて溺愛されました~』

こちらも読んでいただけると嬉しいです。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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