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324話 王都

 門を潜り抜けると、まず最初に大きな道がまっすぐ伸びているのが見えた。

 馬車が10台くらい並走できそうなほど広くて……

 実際に、数え切れないほどの馬車が行き来している。


 その左右に星の数ほどの建物が並んでいた。

 それはどこまでも続いていて、地平線を隠してしまうほどだ。


 大きな道の果てに城が見えた。

 かなりの距離があるはずなのに、それでもその大きさ、きらびやかさが伝わってくる壮大な作りになっている。


「うわぁ……ここが王都なんだ」


 馬を操るソフィアの隣に座り、周囲を見る。

 完全なおのぼりさんになっているけど、仕方ないよね?


「わー!」

「オンッ!」


 アイシャとスノウは窓から身を乗り出すようにして、キラキラと顔を輝かせていた。

 共に尻尾がぶんぶんと振られているところを見ると、興奮しているらしい。


「へー」


 僕の肩に乗るリコリスも、興味深そうに王都の街並みを眺めていた。


 ただ、ソフィアはいつもと変わらない。

 興奮する僕達を見て、微笑ましそうな顔をしている。


「ソフィアは驚かないんだね?」

「両親の仕事の関係で何度か来たことがありますからね。でも、最初に来た時は、私もフェイト達と同じような反応をしていましたよ」


 ソフィアも同じと知り、妙にほっとした。


「……この広い王都のどこかに、黎明の同盟が潜んでいるんだね」


 観光で来たわけじゃない。

 どうにかして連中を止めないといけない。


 自然と気が引き締まる。


「フェイト、気持ちはわかりますが、焦ってはダメですよ」

「でも……」

「焦りは思考を狭くしてしまいますからね。私達がやるべきことは、まずは、王都で活動するための地盤をしっかりと整えることです」

「……うん、そうだね。ありがとう、ソフィア」


 彼女のおかげで、少し落ち着くことができた。


 黎明の同盟のこと。

 レナのこと。

 気になることはあるけど、焦っても仕方ない。


 今はソフィアが言うように、しっかりと準備をしないと。


「それじゃあ、まずは宿を探そうか。ソフィア、良いところを知っていたりしないかな?」

「えっと……ごめんなさい。何度か来たことはありますが、その時は宿を利用していないので……」

「そっか、そうだよね。領主館とか貴族の屋敷に泊まるよね」


 そうなると、まずは宿の情報を集めるところから始めないと。


 それなりに長い間、王都に滞在することになると思う。

 しっかりと英気を養えるところで、なおかつリーズナブルな値段だとよし。


 それと、間違いなく黎明の同盟とやりあうことになるだろうから、ある程度、防犯意識が高いところがいい。


「情報収集なら、王都の冒険者ギルドを利用した方がよさそうですね。依頼の斡旋だけではなくて、情報の売買なども行っていますから」

「うん、そうだね」

「私は馬車を預かってくれるところを探すので、お願いしてもいいですか?」

「了解」

「じゃあ、あたしはこっちに残るわね」


 リコリスは馬車に戻った。

 たぶん、宿を探すのが面倒なのだろう。


「じゃあ、また後で」


 待ち合わせ場所と時間を決めた後、僕はソフィア達と別れた。


 やがて冒険者ギルドに到着。

 王都になればギルドの規模も大きくて、貴族の屋敷みたいだ。


 ちょっと緊張しつつ中に入り……


「あれ!?」

「おや」


 見知った顔に出会い、互いに驚きの声をあげる。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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