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305話 革命

 日が変わり、いよいよ作戦決行の日になった。


 僕達は、あらかじめ鉱山に先回りした。

 他にもアルベルトが用意した人達がいる。


 物陰に潜み、領主がやってくるのを待つ。


「いよいよですね。フェイトは緊張していませんか?」

「うん、大丈夫」


 これでも、それなりの修羅場はくぐり抜けてきたつもりだ。

 だからなのか、自分でも驚くくらい落ち着いていた。


「……アイシャとスノウは大丈夫かな?」

「リコリスが一緒なので、問題は……いえ、一緒だからこそ問題なのでしょうか?」

「あはは、ひどいね」


 アイシャ達は、街の宿で待ってもらっている。

 巻き込まれたら大変なので、さすがに一緒に連れて行くわけにはいかない。


 一応、リコリスが護衛についてくれているんだけど……

 うーん、心配だ。


「……あのさ」

「はい、なんですか?」

「甘い、って言われるかもしれないけど……できれば、あまり相手を傷つけたくなくて」


 領主を守る人はたくさんいる。

 お金で雇われていたり、領主に忠誠を誓っていたり。


「悪い人もいるかもしれないけど、でも、今回の敵は同じ人間で……できるなら、あまり……」

「甘いですね」

「うっ」


 バッサリと言われてしまう。


「気持ちはわからないでもないですが、そのような甘い感情を持っていると、いざという時、命取りになりますよ」

「それは……」

「敵は、敵。非情にならなければ、こちらがやられてしまうかもしれません」

「そう……だよね」

「ですが」


 ソフィアがにっこりと笑う。


「私は、そんなフェイトが好きですよ」

「……ソフィア……」

「わかりました。傷つけないというのは無理ですが、なるべく命はとらないようにしましょう。フェイトは、そのために全力を尽くしてください。私がサポートします」


 とても頼もしいけど、でも……


「いいの、かな? 僕は、ソフィアを無理に危険に晒しているかもしれなくて……」

「これくらい、危険なんてことはありませんよ」


 ソフィアはドヤ顔で言う。


「なにしろ、私は剣聖ですからね」

「……」

「それくらい、なにも問題ありません。ちょちょいとやってみせましょう」

「……」

「ど、どうして黙ってしまうのですか?」

「ううん、なんでもないよ……うん。ありがとう、ソフィア」


 僕のパートナーは、とても頼りになる。

 そして、とても優しい人だ。

 なんだかんだ言って、ソフィアも僕と同じ気持ちでいてくれているんだと思う。


「がんばろうね」

「はい」


 よし、気合が入ってきた。


 入ってきたんだけど……


「合図、遅いね?」


 時計で時間を確認する。


 領主が鉱山にやってきたら、アルベルトが合図を送ってくれるはずなんだけど……

 その合図が一向にない。

 予定時間を過ぎているのに。


「トラブルでしょうか?」

「そうやって言葉にすると、本当にそうなりそうな気が……」

「大変です!」


 若い男性がこちらに駆けてきた。

 アルベルトの執事の一人で、連絡係を務めている人だ。


 汗をたくさん流すような勢いで、ものすごく慌てている。


「どうしたんですか?」

「それが、その……! アルベルトさまとは別の者がクーデターを起こしてしまい、街が戦場に……!!!」


 ……とんでもないトラブルが起きていた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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