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283話 運河の街

 天気はあいにくの雨。

 でも、当初の予定通り街につくことができた。


 中央に巨大な川が流れていて、街を北と南に分けている。

 その他にも小さな水路が街の至るところを流れていた。


 水の都。

 この街……アクアレイトは、そうよばれていた。


「それにしても、ひどい雨だね」


 街中に入ると、雨が一層激しくなった。

 風も強く、傘はもう役に立たない。

 ローブを着て、それで雨を防ぐ。


「嵐が来ているのでしょうか……?」

「馬車は、まずは対岸に渡らないといけないんだっけ?」

「そうですね。ですが……」


 ソフィアは暗い雨空を見上げて、ため息をこぼす。


「この天気では、対岸までの船は出ていないでしょう」

「先に宿を探した方がよさそうだね」


 テンションが下がる僕とソフィア。

 その一方で、


「きゃー♪」

「オンオンッ!」


 アイシャとスノウは楽しそうだった。


 たぶん、二人にとって初めての嵐。

 怖いって思うよりも先に、未知の体験を楽しいと感じているんだろう。


 怖がるよりはマシなのだけど、でも、注意しないと。

 嵐で怪我をすることはよくあるから、しっかり二人のことを見ておかないと。


「って……あれ? リコリスは?」

「あら?」


 ソフィアと一緒に小首を傾げた。

 いつの間にかリコリスが消えていた。


「ぴゃあああああ!?」


 振り返ると、街灯に必死の形相で捕まり、吹き飛ばされそうになっているリコリスの姿が。



「「リコリス!?」」


 僕とソフィアは、慌ててリコリスを助けに向かうのだった。




――――――――――




「し、死ぬかと思ったわ……」


 無事、リコリスを救出して……

 それから宿に移動して、濡れた体を拭いた。


「嵐怖い嵐怖い嵐怖い……」


 小さなタオルにくるまるリコリスは、ガタガタと震えていた。

 ちょっとしたトラウマになってしまったみたいだ。


「大丈夫?」

「クゥーン」


 アイシャとスノウがリコリスを慰めている。

 二人に任せて、僕とソフィアは情報収集をしよう。


 部屋を出て、一階の食堂兼酒場に移動する。


「おや、お客さん。風邪は引いてないかい?」


 宿の女将が気さくに話しかけてくれた。

 部屋を貸してくれるだけじゃなくて、ずぶ濡れになった僕達のためにタオルも貸してくれた良い人だ。


「タオルを貸してくれたおかげで大丈夫そうです。ありがとうございました」

「なに、いいってことさ。困った時はお互い様だからね」


 気の良い笑みを浮かべる女将。

 まずはこの人に話を聞いてみよう。


「街の北に渡る船に乗りたいんですけど、チケットはいつ頃売っているんですか?」

「街の北に? それは……」


 さっきまでの笑みが消えて、女将は苦い表情になった。


「えっと……なにか問題が?」

「問題もなにも、この嵐だろう? 船は出せないよ」

「今すぐに、なんてさすがに思ってませんよ。嵐の後に乗りたいんですけど……」

「そっか。あんた達、旅人だからわからないのか。嵐は収まらないよ」

「嵐が収まらない……?」

「それはどういう意味ですか?」

「……この街は、もう終わりだよ」


 そう語る女将は、絶望の感情を瞳に宿していた。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[気になる点] テンションが下がる僕とソフィア。その一方で、 「きゃー♪」「オンオンッ!」 アイシャと『リコリス』は楽しそうだった。 ・・・・・・ 『』の部分読んだ感じ『スノウ』の方ですよね?
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