表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/520

27話 事件の現場にて

 僕はとある作戦を思いついて、それを実行に移した。

 ただ、その作戦は、どうしても時間がかかる。


 その間に第四の事件が起きてしまわないか?

 それは賭けになるのだけど……


 僕は賭けに勝った。


 第四の事件が起きることなく三日が過ぎて、犯人を特定するための準備は完了。

 最後の仕上げをするために、僕とソフィアは領主の屋敷を訪ねた。


 突然の来訪なので、普通は会ってくれないのだけど……

 ソフィアの剣聖の称号が役に立ち、面会に応じてくれることに。

 彼女を利用しているようで心苦しいのだけど、


「大丈夫ですよ。私は、フェイトの力になりたいのですから。剣聖の称号が必要なら、どんどん利用してください」


 なんてことを言ってくれた。

 ホント、僕にはもったいないくらい、素敵な幼馴染だ。


「こちらへどうぞ」


 客間で待たされた後、さらに、メイドさんに案内される。

 そして、領主の執務室へ移動した。


「やあ、ようこそ。私が、この街の領主を務めている、ライト・ロスレイズだ」

「はじめまして。剣聖、ソフィア・アスカルトです」

「彼女の友人の、フェイト・スティアートです」


 ソフィアがスカートを両手でつまみ、優雅にお辞儀をする。


「この度は、突然の訪問に応じていただき、感謝いたします」

「なに。他ならぬ剣聖殿の頼みだからね。多少の無理はしても、話は聞くさ」

「ありがとうございます」


 僕も頭を下げた。

 話のわかる人でよかった。


「それで、今日はどうしたのかな?」

「それは……」


 ソフィアがこちらを見た。

 この後はどうするの? と、目で問いかけてくる。


 ここは僕に任せてほしいと目で合図をして、前に出る。


「ここ最近、街を騒がせている連続殺人事件について、話したいことがあります」

「なんだと?」

「犯人の正体がわかりました」

「それは本当か!? いったい、誰なのだ?」

「それは、これから明らかにします」

「どういう意味かね?」

「犯人は……ここにいます」

「「っ!?」」


 領主が驚いて、続けて、ソフィアも驚いた。

 詳しいことは話していないから、まあ、当たり前の反応だよね。


 後で怒られそう。

 怖い。


「ここにいるだと? 私とそなたと剣聖殿しかいないが……」

「つまり、こういうことです」


 僕は抜剣して、領主に向けて突撃する。


「フェイト!?」


 ソフィアが慌てるものの、今は説明している時間はない。


 領主との間を一気に駆け抜けて……

 彼を無視するような形で、その隣を抜ける。


 そこで剣を水平にして、横に薙ぎ払う。


「がっ!?」


 なにもないところに剣の腹が当たり、なにもないところから悲鳴が聞こえてきた。

 ややあって、やはりなにもないところから、ドサリと、なにかが倒れるような音。


「え?」

「な、なにが……」


 呆然とする二人。

 そんな二人に説明するかのように、僕は、音がした辺りに手を伸ばす。


 たぶん、この辺りだと思うのだけど……

 あった。


「見つけた」


 なにもないはずなのだけど、指差に伝わる感触。

 それを掴み、引き剥がす。


「えっ……なにもないところから人が……?」

「ど、どういうことだ?」

「コイツが犯人なんだ」


 コイツというのは……ミラだ。


「な、なんで……あたしのことが?」

「隠れているつもりでも、けっこうわかりやすかったからね」

「このあたしが、こんな無能に……」

「その無能に、こんな風にされているんだよ」

「うぅ……く、悔しい」


 そこで限界に達して、ミラは気絶した。


「ねえ、フェイト。どういうことなのか教えてくれませんか? さっぱり事情がわかりません」

「うん、そうだね。まずは、そうだな……この魔道具について。見えないかもしれないけど、僕は今、右手に魔道具を掴んでいる。形状からして、ローブかな? かぶると周囲の景色と一体化して透明になる、っていう代物なんだ。弱点は、昼しか使えないということ。えっと、解除方法は……あ、できたできた」


 いじり回すと、ローブを実体化させることに成功した。


「そのようなものが……」

「これを着たミラが……あるいは、シグルドかレクターが犯行を繰り返していた、っていうこと。ミラがここにいるのが、その証拠だね」

「フェイトは、その魔道具の存在を知っていたのですか?」

「うん。以前は、荷物の管理も任されていたからね。シグルド達がコレを持っていたことは知っていたよ。だから、犯人の当たりをつけることができたんだ。もしかしてシグルド達が、って」

「なるほど……ですが、よく見つけることができましたね? 視覚をごまかすだけではなくて、気配も完全に遮断していたように思えましたが……」

「領主さまを狙おうとした時、殺意が漏れたからね」

「殺意が漏れたとはいえ、それは一瞬だったはずですが……それを見逃さないとは、さすがですね」


 たぶん、ソフィアも気がついていたと思うけど……

 事前情報を持っている分、僕が先に動くことができた、ということだろう。

 同じ情報を持っていたのなら、ソフィアの方が先に動いていたと思う。


「でも、どうして領主さまが狙われるとわかっていたのですか? あと、タイミングが……」

「この三日間で、色々な情報をバラまいたんだ。領主さまの身辺警護が薄いとか、そんな感じの。より大きな犯行をさせるように、情報操作をして、そうするように仕向けたんだ。その情報に、ミラはまんまと釣られたわけ」

「私を餌にしたというわけか」

「あ、あはは……すみません」

「まあ、犯人を捕まえることができたのだから、よしとしよう。しかし、なぜ、今このタイミングで襲ってくるとわかったのだ?」

「それは、僕に罪を被せるためかな」


 いまいち動機が不明なのだけど……

 シグルド達は、僕のことを疎ましく思い、社会的に抹殺しようとした。

 そのために今回の事件を引き起こした。


 連続殺人事件を引き起こして……

 適当なタイミングで、凶器を僕の部屋にこっそりと置く。

 後は、憲兵を連れてくれば現行犯逮捕、というわけだ。


 長い間一緒にいたから、彼女のとりそうな行動はよくわかる。


 ……ということを説明した。


「なるほど……元々は、キミが狙われていたということか」

「僕が動けば、彼らも動くと思ったんです。直接、領主さまを尋ねれば、その時を狙って動くかな? という予想もしていました。領主さまを殺して、誰かに目撃させて、自分は逃げる……たぶん、ミラは、そんな計画を立てていたんじゃないかな?」

「つまり、自分のことも囮にした?」

「もう……フェイトってば、そのような危険なことを考えていたなんて。一歩間違えれば、本当に殺人犯として逮捕されていたのかもしれないのですよ? わかっているのですか? フェイトは無茶をしすぎです!」

「えっと……ごめんなさい」


 ソフィアが本気で怒り、本気で心配してくれているのがわかるため、素直に頭を下げた。


「今回の事件、ミラの単独行動じゃないと思う。シグルド達も関わっていて、今なら証拠も隠滅されていないだろうから、色々と出てくるのではないかと」

「うむ、そなたの言うとおりにしよう。すぐに憲兵隊に連絡を取る」


 こうして、シグルド達のAランクパーティー『フレアバード』は壊滅して、犯罪者の烙印を押されることになるのだった。


『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、

ブクマークや☆評価をしていただけると、とても励みになります。

よろしくおねがいします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] いつも思うが、こういう奴らはロクでもないのばかりだな・・。 そして、結果もテンプレ通り。やはりロクでもない。
[気になる点] 領主の館のセキュリティ…ザル過ぎでは? 同じ道具もってる奴等がやりたい放題できてしまう。
[一言] PT壊滅、犯罪者の烙印どころか領主まで狙ったし、全員処刑でわ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ