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221話 即興の連携

 塔の攻略を始めて、二日目に突入した。


 当初の予定では、踏破に三日以上はかかると踏んでいたのだけど……

 ホルンさんが加わったおかげで順調に進み、最上階へ到達した。


 最上階は難易度が高くて……

 たくさんの魔物に、たくさんの罠。

 攻略に手こずったものの、それでも最深部に到達することができた。


「……あれがこの塔のボスみたいですね」


 ちらりと、通路の角から様子を見るソフィア。

 その視線の先には、人骨の魔物、巨大なスケルトンが。


 三メートルくらい、かな?

 手は四本で、それぞれに血に濡れた剣を握っている。

 あれで多くの冒険者を倒してきたのだろう。


「グレータースケルトンですね。死神と同じく、アンデッド系の上位の魔物です」

「厄介な相手じゃな」


 知らない魔物だけど……

 二人の緊張した顔を見るだけで、どれだけの強敵なのか理解できた。


 ソフィアは一流の剣士で、ホルンさんは一流の冒険者だ。

 その二人が警戒するということは、相当に強いのだろう。


「ふふんっ、なによあの骨ころ。バラッバラにして、わんこのおもちゃにしてやるわ!」

「勝手をしたらどうなるか……ふふふ」

「ヒィ!?」


 勝手に突撃しようとしたリコリスに、ソフィアは微笑んでみせた。

 リコリスがびくりと震えて、青い顔になる。


 毎回思うのだけど……

 リコリスの辞書に『学習』の二文字はないのかな?


「ソフィア、あいつはどんな魔物なの?」

「そうですね……魔物でありながら剣の名人で、その身体能力はAランクの冒険者を軽く超える。下手したらSランクに達しますね」

「そんなに……」

「その上、あの大きさ。そして、四つの剣。剣の名手の巨人を四体同時に相手にすると思ってください」

「それは、また……」


 考えただけで気が重くなる。


 とはいえ、目的のミスリルは、おそらくあいつが守る通路の向こうにある。

 ここで引き返すという選択はない。


「さて、どうしたものでしょうか……」

「うーむ……」


 作戦に迷っている様子で、ソフィアとホルンさんは難しい顔に。


 でも……

 そこまで迷うことかな?


「僕に考えがあるんだけど」




――――――――――




「リコリス、お願い」

「オッケー。リコリスちゃん、ミラクルマジカルラッキーパワー、フィジカルブースト!」


 リコリスにお願いして、一時的に身体能力を引き上げる魔法を使ってもらう。

 体が羽のように軽くなり、熱い力が湧いてきた。


「はぁっ!!!」


 僕は、真正面からグレータースケルトンに突撃した。


 かなりの加速だけど、それでも、ヤツが気づく前に攻撃……というわけにはいかない。

 グレータースケルトンは僕に気づいて、四つのうち二本の剣を構えた。


 僕だけじゃなくて、他の敵の存在を警戒しているのだろう。

 魔物にしては知能が高く、賢いヤツだ。


「ぐっ!」


 二本の巨大な剣がわずかにタイミングをずらしつつ、交互に振り下ろされた。


 一撃目は回避。

 二撃目は剣を斜めにして、受け流す。

 うまくやれたと思うのだけど、それでも手が痺れてしまう。

 なんてバカ力だ。


「うむ、よくやった!」


 影からホルンさんが飛び出してきた。

 風のように速く動いて、グレータースケルトンを斬りつける。


 しかし、浅い。

 いくらかのダメージは与えたものの、決定打には至らない。


「むんっ!」


 ホルンさんは気合の入った声と共に、グレータースケルトンの反撃を防いでみせた。

 なんと、二本の剛剣を一本の剣で受け止めている。


 すごい。

 こんな怪物と真正面から激突して、押し負けず、耐えるなんて。

 並大抵の技術、身体能力じゃないとできないはずだ。


「くっ」


 僕もホルンさんも防御に徹することになり、攻撃の手が止まるのだけど……

 それは、グレータースケルトンも同じ。

 四本の剣を全て使い切り、その身を守るものはなにもない。


 だから、これで終わり。


「神王竜剣術、参之太刀……」


 ソフィアが一歩を踏み出した。


「紅っ!!!」


 爆発的な加速で、一気にグレータースケルトンの目の前に。

 その勢いを乗せた突きを放ち、グレータースケルトンの顔をまっすぐに貫いた。


「ギィヤアアアアアッ!!!?」


 グレータースケルトンは悲鳴をあげて、剣を落として、よろめいて……

 そして、灰となって消滅した。


 うん。

 僕達の勝利だ。


 僕とホルンさんが足止めをして、一番火力のあるソフィアが一気に倒してしまう。

 シンプルな作戦だけど、うまくハマったみたいだ。

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◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
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