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168話 希少種

「わたし、つよい?」


 アイシャは、どことなく誇らしげだった。

 現状を理解していないけれど、でも、すごいということは理解したらしい。


「そうですね。アイシャちゃんは強くて、そしてなによりもかわいいです」

「はぐ」


 ソフィアがアイシャを抱きしめた。

 えへん、と胸を張る娘がかわいくて仕方なかったのだろう。


「アイシャの魔力がとんでもないのは、もしかして獣人だから?」

「そう、ね……」


 ライラさんは歯切れ悪い反応だ。


 ややあって、頭を振る。


「ううん。いくら獣人でも、ここまでの魔力はないわ。あるわけがない」

「そうなんですか?」

「私は少し魔法を使えるからわかるんだけど、これ、本当に規格外なんだもの。獣人は強い魂を持つけど、でも、ここまでなんて……あ、いや? 一つ可能性があるか……」


 なにか思いついた様子で、ライラさんは指先で顎を撫でた。


「もしかしたら、この子は希少種なのかも」

「希少種?」

「獣人は珍しい種族なんだけど、その中でもさらに希少な獣人がいるの。人前に姿を見せることはほとんどない……というか、記録では数度しか目撃例がないわ」

「そんな獣人が……」

「見た目は普通の獣人と変わらないんだけど、その魂の質は桁違い。普通の獣人の数十倍の……ううん。数百倍の力を持っていると言われているわ」


 とんでもない話だった。

 まさか、アイシャにそんな秘密があったなんて……


 でも、納得はできる。

 それほどの力を持っているのなら、黎明の同盟から狙われても不思議じゃない。


 まあ、なにを目的としてアイシャの力を求めているのか?

 そこはわからないんだけどね。


「その希少種の名前は……神子、と呼ばれているわ」

「……神子……」


 女神さまの子供……?

 そんな意味にもとれるのだけど、でも、本当のところはわからない。


「まとめると、アイシャは貴重な子、っていうことでオーケー?」


 リコリスがそんなことを言う。

 身も蓋もない言い方だけど、でも、間違ってはいない。


「……」


 ふと、アイシャが暗い顔に。

 どうしたんだろう?


「どうしたんですか、アイシャちゃん」

「……おかーさん……」


 アイシャは迷うように口を開いたり閉じたりして……

 ややあって、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「わたし、怖い?」

「え?」

「わたし、変なじゅーじん、みたいだから……怖い?」


 どうも、自分が希少種ということを知り、不安になっているみたいだ。

 そのせいで、自分が嫌われるかもしれないと思いこんでいる。


 でも、それはありえないこと。


「そんなことありませんよ」

「ふぁ」


 ソフィアは女神さまのように優しい笑みを浮かべると、そっとアイシャを抱きしめた。

 そのまま、頭をなでなでする。


「アイシャちゃんが希少種というものだとしても、なにも関係ありません。アイシャちゃんは、私のかわいいかわいい娘ですよ」

「……おかーさん……」

「うん、ソフィアの言う通りだよ。僕は、アイシャのことが大好きだよ」

「……おとーさん……」


 アイシャは、ソフィアを抱き返してその胸に顔を埋めて……


「うー……」


 ちょっとだけ泣いた。


 そんな僕達のことを、ライラさんは温かい顔で見守っていた。




――――――――――




 またなにかわかったら連絡する。


 そんな言葉をもらい、僕達はライラさんの家を後にした。


「ん~♪」


 右手は僕、左手はソフィアと繋いで、真ん中にアイシャ。

 頭にリコリスを乗せて、アイシャとてもうれしそうに楽しそうに鼻歌を歌っていた。


 元気になって良かった。

 やっぱり、子供は笑顔が一番だよね。


「……フェイト」


 僕にだけ聞こえる声で、ソフィアが小さく言う。


「……アイシャちゃんのことですが」

「……うん。もっと、色々と調べてみないとね」


 アイシャが、希少種という獣人であるらしいことはわかった。

 でも、それだけ。

 なんで黎明の同盟から狙われていたのか、そこは不明だ。


 原因がハッキリしないと、今後の安全を確保することが難しい。

 僕達がなんとかしないといけない。


 ……ただ、がんばりたいと思っているのは僕達だけじゃなかった。


「おとーさん、おかーさん」

「はい、なんですか?」

「えっと……お願いがあるの」


 思わずソフィアと顔を見合わせてしまう。

 アイシャがおねだりをするなんて、初めてのような気がした。


 できるなら叶えてあげたいけど……

 いったい、どんなお願いなんだろう?


「わたし……魔法を覚えたい」

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さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[一言] 先生へ メダパニって (笑) いらっしゃる様なので、補足致します。 リコリス → 遊び人 → 賢者 (今ここ) → 大賢者 (予定) あくまで自分の脳内設定及び願望 (笑) となって居…
[気になる点] リコリス ・・・ 賢者 → 大賢者 (予定) ソフィア ・・・ 剣聖 → 剣神 (予定) アイシャ ・・・ 魔法使い (予定) → 大魔導士 (予定)         ・      …
[一言] まさかスーパーアイシャになるのか?
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