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163話 拗ねる剣聖

 昼は海を満喫していたのだけど……


「むう」


 夜。

 みんなで一緒にごはんを食べるのだけど、ソフィアの機嫌は斜めだった。

 ムスッとした表情で、私怒っています、とわかりやすくアピールしている。


「えっと……ソフィア?」

「なんですか?」

「昼間のことはごめんというか、僕にその気はないというか……」

「フェイトはなんの話をしているのですか?」

「その……謝罪を」

「謝られる理由がわからないのですが。そもそも、私は怒ってなんていませんが」


 ウソだ。

 ものすごい不機嫌そうにしている。


「おとーさん、おかーさん……ケンカ?」

「大丈夫よ、アイシャ。あれはケンカっていうよりは、ちょっとしたじゃれ合いのようなものだから」

「じゃれ合い?」

「そうよ。ソフィアも意地悪というかひねくれているというか……フェイトも大変ねー」


 不安そうにするアイシャをリコリスがなだめていた。

 すごく助かるのだけど……

 ソフィアがひねくれているというのは、どういう意味だろう?


「フェイトは、私より、あのレナという女性の方が好みなのでは?」

「そ、そんなことないよ!」

「本当に?」

「本当に!」


 無実を訴えるように、ソフィアの目をじっと見つめる。


「……っ……」


 一瞬、ソフィアがニヤリとしたような?


 でも、今はムスッとした表情に。

 見間違えだったのかもしれない。


「なら、言葉と行動で証明してくれませんか?」

「言葉はわかるけど……行動っていうのは?」

「答えを提示したら意味がないでしょう? フェイトが自分で考えてください」

「うーん」


 言葉は簡単だ。

 ソフィアに対する想いをそのまま口にすればいいと思う。


 でも、行動と言われても……


 抱きしめる……とか?

 いや、でも。

 人前でそんなことをするのはどうかと思うし、そもそも、いきなり抱きついたりしたらセクハラになりそうだ。


 なら……


「そ、ソフィア」

「はい」


 緊張しつつ、考えた内容を実行する。


「僕が好きな女性は、これまでもこれからも、ソフィア一人だけだよ」

「……そうですか」

「それを証明しようと思うんだけど、ちょっといいかな?」

「はい、どうぞ」


 ソフィアの手を取り、そっと手の甲にキスをする。

 騎士などが主に忠誠を捧げるためのキスだ。


 僕の場合は、ちょっと意味合いは違うのだけど……

 でも、彼女のために全部を捧げる、という想いは本物だ。


「……」


 ソフィアは目を丸くして、


「ふふ」


 鈴を転がすように笑う。


「フェイトってば、どこでこんなことを覚えたんですか?」

「えっと……」


 ついつい言葉を濁してしまう。

 アイシャに読んであげた本の中で、こんなシーンがあったというのはちょっとどうかと。


「たぶん、本などで見かけた、という感じでしょうか」

「うぐ」


 読まれている。


「ですが、とてもうれしかったです」


 ソフィアはにっこりと笑う。


 よかった。

 どうやら機嫌が治ったみたいだ。


「あー……フェイト? ソフィアが不機嫌そうにしていたの、アレ、演技よ」

「え?」


 ふと、横からリコリスが口を挟んできた。


「ど、どういうこと?」

「多少、不機嫌になっているのは事実だろうけど、それは演技。フェイトにあれこれしてほしいから、わざとあんな態度をとっていたのよ」

「そ、そうなの……?」


 ソフィアを見ると、ペロッと舌を出されてしまう。


「すみません。フェイトに甘い言葉をささやいてほしくなり、つい」

「……そ、そういうことなんだ」


 がっくり。

 体の力が抜けてしまい、床に膝をついてしまいそうになる。


 ソフィアとケンカなんてしたことがないから、どうしようかと慌てていたんだけど……

 まさか、全部演技だったなんて。


「でも……そっか。そうだよね」


 ソフィアは演技と言うけれど……

 でも、不機嫌になったことも事実らしい。


 そうさせてしまったのは、僕がレナにハッキリとした態度をとれなかったからだ。

 心配させることのないよう。

 不機嫌にさせないよう。

 次、出会うことがあれば、きちんと対応しないと。


「僕、がんばるよ、ソフィア」

「はい、期待していますね」


 こちらの考えていることを察した様子で、ソフィアはうれしそうに微笑む。


「雨降って地固まる、っていうヤツかしらねー」

「雨……?」

「ケンカをして仲直りして、もっと仲良くなる、っていうことよ」

「おー。おとーさん、おかーさん、仲良し」


 アイシャはうれしそうに、尻尾をパタパタと振る。


「ところで……あたしとアイシャ、今夜は部屋を別にした方がいい? フェイトとソフィアは、二人で熱い夜を過ごしたいんじゃない?」

「「変な気をつかわないで!?」」

「くひひ」


 一番上手なのはリコリスかもしれない。

 ニヤリと笑う彼女を見て、そんなことを思うのだった。

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さらに新作を書いてみました。
【おっさん冒険者の遅れた英雄譚~感謝の素振りを1日1万回していたら、剣聖が弟子入り志願にやってきた~】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。
― 新着の感想 ―
[良い点] 有り得ない鈍感さは 5年にも及ぶ奴隷生活で さらに磨きが掛かった様ですね ・・・ 本気で怒っている訳じゃ無いのは 発言からも丸分かりなのに ・・・ (微笑) [気になる点] レナは組織の…
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