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アラフォーおっさんのSF無双記~最強コロニーとロボットをもらったので自分と美少女クローンだけの楽園を築く~  作者: 白銀天城


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ロイヤルタイガーと基本方針について

「ハヤテ様、おかえりなさい!」


 帰還すると早速シオンが出迎えてくれる。胸にぬいぐるみを抱えているが、もう悲しみはないようだ。


「おう、こっちは終わったぞ。リゾートコロニー内部はどうだ?」


「ロイヤルタイガーが活躍中です。モニターに出します」


『このコロニーを荒らすものは、何人たりとも許しはしない!』


 映像の中では、金ピカの虎が剣を振り回している。ド派手で獰猛な外見とは裏腹に、その立ち回りは繊細だ。コロニー内で大爆発を起こさないようにしているのだろう。剣の切っ先でうまいことコックピットを貫いたり、横薙ぎでに振ってパイロットのいる箇所までを的確に斬り裂いている。


『はっ! せいっ! どおおりゃああ!!』


「ほー、熟練の腕だな」


「パイロットはこの道10年のベテランです。淀みない操縦はリゾートのエンタメに数えてもいいでしょう」


 敵のコスモクラフトが放つミサイルを、最小限のバルカンで爆発させ、一気に距離を詰めて斬っている。重装甲型の敵は、ビームトマホークで装備を一刀両断だ。見た目の効果もあってシンプルにかっこいい。


『連合だろうと同盟だろうと、このコロニーを脅かすものは敵だ!』


「面白い。いいぞがんばれ」


「このぬいぐるみ、ロイヤルタイガーに似ていますね。モデルなのかしら?」


 シオンが大事にしているぬいぐるみも、確かにデザインが一緒だ。遊園地も含めてコロニーの象徴なのだろう。カイザーネクサスと同じパターンだな。


「戦闘ロボットに親しみをもたせようという作戦ですね。効果は上々。評判もいいようです」


「とても輝いていてきれいですね」


「ああ、全身金ピカだしな……なんちゅう派手なやつ」


 金色だけど、別に純金ではないらしい。装甲のことを考えると妥当だけども。


『遅い! タイガードリル!』


「ロイヤルタイガーは、手首が360度回転します。これによりロングソードでの突きの威力が上がります。これをタイガードリルと呼ぶようです」


「必殺技まで……」


『ロイヤルタイフーン!』


 両手に剣と斧を持ち、炎を吐いて高速回転している。そのまま敵をなぎ倒していく姿はまさに台風である。


『隊長! 援護いたします!』


『お前たちは連合の機体を倒せ。同士討ちを避けろ。コスモクラフトはこちらで叩き潰す! だあぁぁ!!』


 黄色や白のコスモクラフト部隊が、コロニーを守るべく出撃している。そうか、同じコスモクラフトだと区別するのめんどいな。識別信号とか色でなんとかするしかない。皆殺しのありがたみを感じた。


『援軍はどうした! なぜコロニーのゲートが閉まっている!』


『わかりません! 外の味方と連絡が取れません!』


『くそっ、同盟軍の工作か!』


 敵軍は混乱しているようだ。まさか外が全滅しているとは思うまい。必死にマシンガンやビームソードで戦っているが、乱戦になって成果が上がらないようだ。


「確か偶然同じ日にテロっちゃったんだよな」


「示し合わせる意味がありませんから、ただの偶然でしょう。間抜けにも鉢合わせて大混乱していますね。お互いどちらを優先して狙っていいか悩んでいるようです」


「計画も行動もひどいものですね。私達のリゾートが荒らされて……どうしてこんなことをしてまで争うのでしょう」


「軍人ってのは命令があれば動くもんだ。上がアホの銭ゲバなんだろ。企業の争いもあるって聞いたしな」


 地球とコロニーの戦争だが、その内側では企業の覇権争いや、貴族の領土拡大などめんどくさい要素が多分に含まれている。まあ全員欲を出したアホなんだが。


「ああはなりたくないな」


「私も気をつけます」


『ロイヤルガードより報告。コロニー外周への通行不可。システムがパスワードも認証も受け付けません』


『司令部! これはどういうことだ!』


 なんか現場があたふたしているらしい。やっべ隔壁戻してねえじゃん。


「ノイジー、なんか困ってるっぽいから通してあげて。ロイヤルな連中だけな」


「了解。無駄足部隊、通行を許可します」


「これでよし」


 モニターでは特殊車両が飛び回り、サイボーグ軍団が敵軍人を掃討している。ビルの壁を飛び回ったり、猛スピードで行動して懐に入り込んだり、重火器の扱いも手慣れている。シンプルに練度が高い。


「やるねえ。地上部隊はほぼ制圧しているじゃないか」


『撤退だ! 作戦失敗! 全軍撤退する!』


 連合・同盟両軍が撤退しようとしている。だが味方と連絡が取れず、決めていた脱出ルートに走っていた。隔壁を爆破して先へ進むが、当然味方の艦隊はいない。


『どういうことだ! なぜ誰もいない!』


『置いていかれた……?』


『ありえん! 作戦放棄などありえん!』


 原因が無所属の男による皆殺しとは想像できないだろう。ただひたすら困惑しながら、周囲を探索している。だがその時間に特殊部隊に追いつかれた。後は抵抗するなら始末されるだけである。


『地球連合軍、制圧完了』


『こちらロイヤルタイガー。よくやった。こちらも機体はすべて倒した。引き続き敵の掃討と市民の保護を頼むぞ』


『了解』


『外周より報告。敵影なし。連合も同盟も存在しません』


『……どういうことだ?』


 敵の援軍が存在せず、戦艦すらどこにもいない。テロが始まった当初は確かにいた。だが隔壁が閉じ、コロニーも閉じたその短時間に、全員消えているのだ。


『オペレーター、これはどういうことだ! 何かの作戦か!』


『わかりません。外部カメラまで完全に停止しているようです。外で何が起きたのか、外周部隊で探してください』


『コロニー同盟制圧完了。隊長、これからどうしたら……?』


『残党を探す。連中の動きの意味がわからん。何かの前兆かもしれん。市民の救助も急げ』


 どうやら警戒を解かず、さらなる敵を探していくようだ。民間救助も進んでいるが、奇妙な雰囲気をまとっている。せっかく勝ったのに混乱しているな。


「やはりベテラン。油断しないねえ。痕跡が残っていたりしないな?」


「あらゆる記録は抹消済みです。念の為に、敵機の残骸はホーミングレーザーで焼いておきました」


「ナイスだ。まだこちらも警戒はしておけ。万が一俺たちへの手がかりを掴まれても困る」


「ハヤテ様は慎重ですね。とてもいいことだと思います」


 街の瓦礫撤去や火災の消化にも参加しているようだ。器用に動かすもんだな。ああやって助かっているのが、見た目からして裕福な連中である。リゾートコロニーだからね。


「いい機会だから話しておくか。俺はああいう行動は取らない。誰も助けない。助けられたことがないからだ。弱者とはそういう存在であり、一生底辺のまま地獄に落ちる。他人は何も与えない。よって俺も他人に何も与えない。社会に貢献などしてはいけない。他人が得をするようなことを、俺はしない」


「少し、難しいお話ですね」


 話が長くなると思ったのか、シオンが紅茶を淹れてくれる。俺の喉の調子まで気づかえるのは本当に凄いな。初めての経験だよ。これは真面目に話してやらねば。


「いずれわかる。弱者とは必ず生まれる。そして助けたい姿をしていないらしい。お前にもいずれわかる。だから軽率に助けてはいけない。上級国民はもちろんだが、海賊のようになるべくしてなった底辺のクズもいる」


 モニターでは怪我をした金持ちっぽい連中が騒ぎ出している。運よく助かりやがったか。つまらんね。どうせ保証とかでさらに金が入るんだろうよ。


「あいつらを見ろ。あれは金持ちだ。裕福な生活をしている。ここで死んだとしても、一般人を遥かに超える幸福を味わっている存在だ。底辺は100年生きてもあいつらの1%の幸福も手に入らない。せめて俺が助けないことで、やつらの幸せが終わればいい」


 無事救出されたようだ。だが残存部隊がいくら調べても、俺とシオンの痕跡はない。見つからないことが確定したのでモニターを切る。


「自分が多少損をしてでも、相手が不幸であればいいという考え方がありますね。オーナーはその思考が強いのでしょう」


「かもな。俺のせいで他人が得をするのは不公平だ。だが博士は別だ。俺から先に何かを与えずに、俺に何かを与えた。だから感謝の証とでも言うべきかな。望み通りこの世界で好き勝手に生きてやるさ」


 本当に感謝しているよ。そしてその結果、地球やコロニーがどうなろうが、きっと文句は言わないだろう。おそらくこの世界が嫌いだろうしな。


「力は徹底して俺達だけのために使う。コロニーに他人を入れることは認めない。これだけの力だ。一生楽して生きられる。他人に見られなければな」


「見られると奪おうとする者が現れるのですね」


「それだけじゃない。力に責任を要求するやつが出るんだ。大きな力には責任が伴う、とかいう屁理屈でな。そうやって人生を楽しませないように仕向けてくるのさ」


「よく……わかりません」


 シオンは純粋だ。まだ難しいのだろう。だが真に質が悪いのはそういう奴らだ。やつらはゲスの自覚もなく、自分勝手な理屈を押し付ける。


「大きな力を持っているやつはずるい。だから責任が伴うことにして、自分たちのために使わせよう。そのためには自分が弱者であり、救われて当然の立場なんだと相手に伝えているんだ。そして相手が善意から助けることを要求している。決して自分が大きな力を持とうとはしないでな」


「弱者は大きな力を持てないのかもしれません。そういう人もいるのでは?」


「当然いる。だがこの説を唱えるやつの本心はこうだ。自分は弱いんだから、さっさとその便利な力で助けろよってな。それが人間という生き物だよ」


 俺は助けが来るなんて思ったことはない。絶対に俺を助けることのできる力はないと結論付けていた。ある意味正解だろう。人がコロニーに住む時代の、さらに異常な天才でなければ救えなかった。所詮一般人は人間を助けるように作られてはいない。


「シオンもいつか人間に失望して、理解できる日が来るだろう。だがそれは人間が最低なだけだ。このコロニーにいる限り、俺とシオンは楽しく生きられるようにしてみせる」


「私も精一杯毎日を楽しくしたいです。人間がどうであれ、ハヤテ様とともに生きるために」


「ありがとう。とりあえず他人を助けない。深くかかわらない。正体を明かさない。コロニーの技術を与えないし見せない。敵は皆殺し。世界を遊び尽くす。このへんが目標だと思ってくれればいいさ」


「はい!」


 こうしてリゾートを離れ、また宇宙をさすらう気ままな旅に戻るのであった。

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