沸き立つ感情に揺れたりしない
本日の投稿分になります、宜しくお願いします。
※2021年9月25日 加筆修正致しました。宜しくお願い致します。
※レマイア領中央領公館滞在中 野盗殲滅作戦終了
<エスセス>の部隊に接敵した者達は、全てが壊滅したと本人から連絡が届いている。現在は同じ部隊の騎士達が、それら野盗達の生死の確認を進めている。
その騎士達は<エスセス>の言葉を信じなかった訳ではないが、眠るような様相で地に伏している盗賊達はもしかして?・・確認をとれば取る程に陰鬱が深まってはいたが。
しばしの時間を待てば目が覚めそうな骸だなんて、特殊な病状の果てでしか知らないのだから仕方がない。病の果てに召された者に生気は残らず、苦難からの解放が幸と喜べるかは当事者の思慮によるだろうけども。ここで顛末を早々に愚考しても仕方ないが、安堵し表情をする者達に迎え入れられた事で俺の気は安らげた。
それでも未だ接敵中の者達に申し訳なく思い、ある程度の体裁は作らなければならない。ここに居る者達の全てが<エスセス>と俺が遠距離でも連絡が取れる事を知らないからだ。知る事が良い事を運ぶだけでも無いから、知らぬまに過ごす陰鬱な時間は我慢して貰おう。
ここに領主家の錚々たるメンバーが顔を揃えている、なら出迎えには礼を返すのを忘れてはならない。これに気を配るのは地位の優先順位も含まれるし、貴族の子息に必要な素養だけに収めては後々にしこりも残るからな。
焦らず順繰りに礼を終え席に着こうと、サナーの前まで移動したらそこに止まる・・いや留まってしまった。サナーを背に椅子へと身体を向けたら、俺の服を掴んだ者がいる。いや~誰だとは言えない状況だから、サナーの右側に少し戻ったままその場に立つ。
掴まれた場所が右側なので、この場所ならサナーのしている事が見えない筈・・それにサナーに近寄ったから位置的な隠蔽が出来たと思う。 <エスセス>達は間もなく帰還するのだから、そんな長い時間をこのままで過ごす事はない。
俺は素知らぬ振りをしたまま、野盗殲滅の状況管理者に中間報告を促す。当然、アイコンタクトでお願い的な・・懇願かも?良く解らない祈りに似たものを送った。KYだったら後でぶっ飛ばす!勝てないのは知ってるけど。
「・・これで残るは最後の部隊ですか。しかし・・セブレスの所は彼1人で全てを止めたのですか?4番隊の騎士隊長が報告をしていますから、間違いがある事は無いでしょうけど、闇間を巧に利用したとしても訓導者と双璧していそうです」
今回の指揮官の立場であり先陣の部隊長も務めたアトレアが、これに屈託の無い称賛を口にする。彼等の部隊は無難に戦勝しているが、そこには軽症者が幾人かが出ていたからだ。
それは無様な軽症だと聞いた、武器の取り扱いやら味方同士等々なのはちょっとどうかと思う。初めての交戦で荷が多かったと・・兵卒なしからずだろうか?そんな者達にまで気配りしていたら被害を膨らまし兼ねないから、その場の指揮官に難の咎めはされないだろうが。
「闇間での工作が巧を相しました。地面を水で目眩ませた事が、今回の肝にも成っているのでしょう。水面の目下で土属性の魔法は、隠蔽としてかなりの効果がありました。奴等の視覚を乱す事で、こちらの策に導けたと思います。あの場所が知略に適したのも、良い結果に成っています」
俺は間を置かずに口火を切った。俺達が交戦した内容を話せるのは自分だけなのだから、間をおけば・・2人はそこで何を?今ここで一番聞いて欲しくない、言い訳に困るところを触れられると非常に不味い。そんなの面倒だと切って捨てれないからな。こちらは色々と表に出したくない事が多いから、そのまま主要道路を進行して頂きたい。寄り道は困ります。ツアコン者も雇ってません。
この大陸シーリエスは数百年の間、戦争と呼ばれる物は起こっていない。魔王軍との戦いを戦争と呼べるかも知れないが、内陸地での騒乱とかは及んでいないのだ。その状況で交戦の熟練者に成れるのは、今は冒険者か野盗ぐらいだろう。ちょっとやぱっかったと思い直したよ。それの訂正が一つ出来た、沿岸部の際では魔王軍の弱小組と今も継続して戦っていたわ。。そう半端・・半魔族だったか、そんなのは半端者と変わらんけどな。
そんな下位組織が幾ら頑張っても、その上の者達はそこでは生きていけない・・何の為の争いなのか全く解らない。生存を危ぶまれるからそれ以上の侵攻は無しなんだぜ。それなのに上からの指示があるからと行動している、上の奴等は暇潰しをしているのか?何かの戦略ゲームじゃないよね?それに強い駒は出せないから、切り札もありゃしない。良く解らない罰ゲームじゃないか。そこは攻守ともに。
そんな事をつらつらと考えていたら<エスセス>から連絡が入った、彼女が引き連れた部隊も各所へと移動に入ると。その場に出来上がった、骸の山の処理が出来たのだろう。
そんな朗報の後に今度は凶報が続いた、賊らしき者達数人がこの領公館へと向かっていると。このらしきと認識が示したのは、領公館の方面に近づいているだけかも知れないからだ。今の時間帯は冒険者達の早立ちがあってもおかしくはない。
商人や冒険者用に検問所にも、少数人だが配備されている。それでも前日には、その旨の連絡をしておく事と但し書きはあるが。それが届出された者達なのかは、書類が回されている検問所の者達しか解らない。その時折りに出遅れる事は不備かも知れないが、検問所の突破が行われてもこちらからの救援が間に合わないのも事実だ。
そんな事が起こったのであれは、まずは身を守る安全確保を優先させている。死んでしまえば元も子もないからな。
ただ今の状況はかなり難しい、どこぞの誰が氏の行動をここで報告するのは出来ないからだ。そんな情報の出し具合が色んな物を背負う事になるからだ。俺が感知出来る範囲までは様子を見るしかないだろう。その賊を<エスセス>に始末させるのも不味い、そいつらが賊なのかも確定していないのだから。
また、確定してもそれはそれ。何を遣っても謎が深まるばかりなんだぜ、ご都合宜しくの探偵はいない。伸縮自在の人物もな。カミさんに弱いのは俺くらいだし。死にぞこないの爺も見かけないよ!うちのお父様は、若作りじゃないから。
違う戦場の妄想をつらつらと思考を走らせながら、領公館の警備配置を[空間範囲探知]で再確認する。要所要所の出入り口は、しっかり担当者達が立ち番をしていた。
だがその受け持ち人数はそれ程多くない、敵対者の人数を考慮すれば応援者を送る事も考える必要があるか。まず野盗の襲撃者を認定してからになるから、そこを考えただけで間に合いそうも無いが。応援者として用いる者達の待機位置も、そこそこ遠いのだから最初の接敵は現状と変わらずになるな。このまま敵として交戦するのであれば、通路を警備中の者達だけで何とかして貰うしかない。その者達の判断で交戦する事に成るから、場所が決まれば直ぐに救援に赴く事は出来るな。
・・・・・
そんな予想は直ぐに覆えされた・・俺達が集まっている応接室に、割りと近い部屋の窓枠を簡単に破壊して突入されたからだ。
「・・はぁぁ・・先程の奴等はやはり盗賊でした」
俺の言葉がこの場の者達の視線を釘付けにした。俺の能力である程度の範囲なら、察知出来る事はみんなに知らせている。それならと・・
「敷地に飛び込んでから、躊躇なく突破する場所にまでの到達が早過ぎます。ある程度の仮説訓練をかなり熟したみたいですね。通路の突き当りに、そろそろ到着でしょえか」
「・・早いな・・公衆の便宜が分を悪くしたか」
それは必要に応じたからであって、それを利用されるのは甚だ迷惑である。領民と領主が条件によっては胸襟が開ける場所があるのだから。住居が敷地内に設置しているのがどうかと・・。それに今は状況を精査しても対処に届かない、かなり少ない選択を強いられる事に成った。
「・・兄様・・」
俺の右側・・出入り口の近い位置の方に居たセリオウスの手を取り、彼の父親のアトレアへと促す。現状の緊張感に、先程まで醸し出していた眠そうな様子が消えていた。この手の特別な日に、彼は遭遇したくは無かっただろうに。さらにアトレアの隣に居たキュルスは、それで反対側へと移動している。その場所に陣取っていた、執事サグシェスの後ろあたりか。
その位置はサグシェスに庇われる為では無く、執事仕事の護衛になる体面を慮ってのものだ。あの時は庇われて・・面倒くさい体面の為に、当のキュルスが動き辛くなるのだがこれは仕方がない。
領主ロブントの回りには、この場に居る5人の女性達が集まってくれた。こんな状況で出来たハーレムサークルは全く羨ましくないぜ。使用人2人が肉壁として働く前に、ロブントは領主としての立場を捨てて彼女等の前に出るだろう。それは自分の父親としての威厳を見知っているから的外れでは無い筈。
この場で状況や報告の確認をしていたので、皆は武器となる剣は持っているが防具は外して置いて来ている。女性陣とて内密に忍ばせているとは思うが、使用人達が有り得ない大きさの武器を出したら後世に語り継いでやる。
そこも俺の希望だが使用人特有のスカートの下から何かを出す特技を見せてくれるのなら、出来る限り特大の物で驚かして欲しい。それも異世界ならではの物、誰でも持てそうな物は空気の無い部屋へ送るよ。俺はたまにしかその対象にならないからな。
そんな期待はあるけど、テロになりそうな爆発系はノーです。一緒に巻き込まれるの確定しちゃいますから。良く有るよね?イヤイヤながらのお約束。ここで何かを色々考えてもフラグは断てない!回収班じゃないし。
ここの部屋側へと開く扉は内鍵などは無い、一体式の鍵などはまだ開発されていないからだ。誰もがこの場を不在にした時にだけ、この部屋の外鍵を使って戸締りをする。一応はここでの騒ぎを騎士達に知らせられるが、そんな喧騒が届けられればと再度とびらを確認したが、自分の記憶に違わず鍵は付いていなかった。
部屋の中にある調度品で入口を塞いぎ籠城する手もないわけでは無いが、機能的に扉が内開きなので効果が見込めない。押し合いへし合いはちょっとした笑いを誘えそうだが、その後の混戦には被害の普及が読めな過ぎるからな。この場で皆の配置に不満を抱かなかったロブントは、ここで士気を高め始めた。領主の家族達や臣下にこの場を機運で乗り切る為に、ここで鼓舞出来るのは、ロブント・レマイア伯爵しか居ないからだ。
さて・・と思う、ここでどう対処するのが最善なのか?今まで俺の能力を聞き齧りだけで判断されていたから、特別な感情にも晒される事はなかった。
しかしだ、この状況は待ってはくれない。1人で対処するのなら至極簡単な訳だが、乱戦の中では誤魔化しも難しく思いもよらない不幸な事が起こるかも知れない。
そんなちょっとした俺の逡巡が直ぐに消される、俺の後ろに控えて居たサナーが庇う様に前に出たからだ。これこそ意表を突かれた?その動きは想定されていたが、その警護が必要なのはお母様じゃないのか?
「おぼっち・・旦那様、決して私の前に出ませんように。例え身を挺しても必ずお守り致します」
その、俺の魂に刻まれる様な言葉が紡がれたから。





