【SS】それはきっと、唯一の
婚約者時代の秋のお話。
その日どころではなくここ最近、王宮筆頭魔法使いエギエディルズ・フォン・ランセントは、多忙を極めていた。
まず、前提として、最近、魔族の活動が活発化しており、ヴァルゲントゥム聖王国各地で、その被害が多発していた。
騎士団や魔法兵団を派遣して討伐すれば済む話では、という話ももちろん出たが、魔族のは近年まれに見る繁殖力を見せており、一度討伐してもまた次が……と、いたちごっこが続いていた。
そこで持ち上がったのが、結界術の研究の推進だ。
魔宝玉に魔法式と魔力を封じることで、恒久的な結界術の行使が可能になれば、魔法使いを派遣せずとも結界術は機能する、とは理論上は正しい。
その机上の理論を現実にするために、まずエギエディルズは現在その研究に携わるよう命じられたのがつい先日。
純黒の王宮筆頭魔法使いともあろう者がたずさわった研究結果ならば、魔族の被害に悩まされる地方の国民も納得するだろう、という上層部の意図が透けて見える。
だが、『魔法使い本人がいなくとも効果を発揮し続ける結界術』という命題は、エギエディルズの知識欲と探求心をおおいに刺激し、特にここ数日は弟子であるウィドニコルも交えて最後の大詰めを迎えようとしていたのである。
そこまではよかった。
だが話はそれでは終わらなかったのである。
結界術の研究と並行して持ち込まれる、部下が担当する新たな魔法体系研究の確認と校正。
これはまあいつものことである。
ただちょうど近く王都にて規模の大きい学会が催されることもあり、その数が尋常な数ではなかっただけだ。
そして何故かこのタイミングで、魔法学院への臨時講師として教鞭をとってもらえないかという依頼だ。
いくら『黒持ち』と呼ばれる髪を持つ学生を数多く内包する学院とはいえ、純黒と呼ばれるエギエディルズほど見事な黒髪を持つ者はいない。
恐れられ怯えられ、授業になどならないだろうと固辞したのだが、エギエディルズが在学中から学院長を務める、かつて自らも筆頭魔法使いの座についていたタヌキじじぃ……失礼、好好爺が「ちぃとばかり、目に余る学生たちがいましてなぁ」といくらエギエディルズが断ろうとしても断らせてくれなかったのである。
要は「圧倒的実力差で痛い目を見せてやってほしい」という依頼だ。
期間としては三日間であったが、畏怖と憧憬と忌避が入り混じる視線を浴びながら教壇に立ち、くだんの『目に余る学生たち』には実戦経験でおごり高ぶった鼻っ柱をぼっっっっきりと折るを通り越して木っ端みじんに砕いてやったが、それにしても国王陛下に拝謁するときよりも気疲れした。
あとは当たり前に普段の通常業務もこなさねばならなかったし、ああそうだ、そういえばアレだ、例年この時期の恒例の神殿との提携業務において、神殿の上層部との会議が度重なったのもこの忙しさの要因の一つだった。
神殿従事者は光魔法の使い手であり、エギエディルズのような一般的な――エギエディルズを『一般的』と呼んでいいのかは疑問が残るが――魔法使いとはまた異なる魔法体系をその身に宿している。
互いの魔法体系を知識として理解し、体感することで、自身が最も得手とする魔法をより追求する、という名目で、神殿の若い神官達と、黒蓮宮の若い魔法使い達の交流を目的とした会議と、ついでにその後の宴がこれまた数日続いたのだ。
当然、王宮筆頭魔法使いとして、魔法使い側の監督役がエギエディルズである。
そんなこんなで、とにもかくにも、ここ最近、エギエディルズは本当に多忙を極めていたのである。
心身共に疲れ果てている自覚はあるが、それを表に出さないために余計に仕事を回されることも理解していたが、ここで「疲れているから他に回す」なんて真似ができるならば今のエギエディルズは存在していない。
というわけで、本日、深夜。
すっかり夜のとばりが下りて、青い月と数多の星々がうるさいくらいにさんざめいている。
本来ならばもう黒蓮宮の研究室に泊まり込みで諸々を進める気だった。
だが、ウィドニコルに「師匠、本当に本当に今日は帰った方がいいです。お願いします。帰ってください……!!」と涙目で土下座せんばかりに頼み込まれては、さすがのエギエディルズもその願いをむげにすることはできなかった。
無理矢理押し切られるようにして取らされた弟子であるウィドニコルのことを、これでもエギエディルズはそれなりにかわいがっているのだ。
ただしそのかわいがり方はあまり他人に理解されるものではないけれど。
静まり返った王宮をふらりと後にし、エギエディルズが向かったのは、自宅であるランセント邸ではなく、婚約者であるフィリミナ・ヴィア・アディナが住まうアディナ邸であったのは、これはもう本当に本人も驚くほどに無意識の所業だった。
――顔が、見たい。
どうして、と思うまでもなく、自然とそんな願いが胸に落ちてきた。
一度自覚してしまえば怒涛のように願いは膨れ上がり、顔が見たいばかりでは済まされなくなる。
――顔が見たい。
――声が聞きたい。
――触れて、確かめたい。
実際に彼女に触れたことなど、この数年、数えるほどにもない。
けれどそのあたたかさを、やわらかさを、今の疲れ切ったエギエディルズは確かに求めている。
そして同時に、はたと自覚した。
――これは、まずいな。
疲れすぎて自制心が吹っ飛んでいる。
どちらにしろこんな深夜にアディナ邸の扉をノックするわけにもいかないのだから、ここはもうすごすごと帰宅するより他はない。
本当は会いたくて会いたくて会いたくて、あの穏やかな声が聞きたくて、叶うならばいっそ抱き締めてしまいたいのだけれど、まあ無理な話である。特に最後。
抱き締めたことなど、一度も、ない。
そんな情けなくふがいない自分に落ち込んで、一気に疲れがぶり返してくるようだった。
エギエディルズはアディナ邸の門扉の前でこれ以上ないほど深く長い溜息を吐く。
「……帰るか」
その気になれば転移魔法により一瞬で帰宅できるが、疲れでやけにのぼせたような頭を冷やすためにも、もう夜風に当たりながらゆっくり帰宅する方がいいだろう。
最近は同じ屋敷に住まう養父とすらまともに顔を合わせられていない。
今夜くらいは、彼に、甘えさせてもらってもいいだろうか、などとエギエディルズがきびすを返そうとしたそのときだ。
「……あら?」
本来聞こえるはずのない声が、聞こえた。
それをそうと認識するよりも先に、身体が動いた。
背中を向けようとしていた門扉を振り返ると、その向こう、アディナ邸本宅の扉が開かれていて。
そして、そこに。
「フィリミナ?」
「はい。そうおっしゃるあなたは、もしかしなくてもエディではございませんか」
ぱちぱちと大きく瞳を瞬かせながら、いつもは丁寧に編み上げられている髪を夜風に流し、夜着に厚手のショールを一枚羽織っただけの、エギエディルズの『婚約者』が――――フィリミナ・フォン・ランセントが、バスケットを片手にこちらに歩み寄ってくる。
繰り返しになるが、現在、深夜である。
午前零時を過ぎ、獣すら眠りに就くような静かな夜だ。
だというのに、そんな無防備な姿で、穏やかに微笑みながらフィリミナは、門扉越しにエギエディルズの前までやってきた。
「ごきげんよう。よい夜ですね」
「あ、ああ」
あれだけ聞きたいと思っていた声。
あれだけ見たいと思っていた笑顔。
門扉越しではあるが、その気になれば触れることなどひどくたやすい。
頭が真っ白になりそうだった。あまりにも疲れすぎていて、都合のいい夢を起きたままみているのかとすら思えた。
「……こんな夜に何をしている。いくら敷地内とはいえ、名家の令嬢が一人で外に出るなど褒められた行為ではないぞ」
そして結局口からまろび出たのは、こんな憎まれ口である。我ながら酷い。
本当はただ一言「深夜に外に出て、何かあったらどうするんだ」と言えばいいのに。
ただ、自分が心配でならないからそういう真似はやめてくれと、素直に言えればよかったのに。
フィリミナとて何の理由もなく屋敷から出てきたわけではないのだろうし、きちんと最低限はわきまえているからこそ、いくら婚約者とはいえエギエディルズをすぐに門扉の中に招き入れるような真似はしないのだろう。
それなのに自分はこの言いぐさだ。せっかく、久々に、まともにその顔を見られたのに。
――――まあ、申し訳ございません。ではわたくしはこれで。
なんて言われて、さっさと屋敷の中に戻られてしまったら、後悔するのはエギエディルズのほうなのに。
考えれば考えるほど自分の失言が悔やまれてならず、それに伴って自身の美貌が非常に凶悪なものになっていくのを感じているのだが、本当にどうしようもない。
けれどフィリミナは、いつもと同じように、ころころと軽やかに笑うのだ。
「まあ、申し訳ございません。少し眠れなくて、庭で少し気分転換をしようと思いましたの。中庭にすればよかったのでしょうけれど、ほら、ご覧になって。あそこの銀木犀がちょうど見頃なんですよ」
すいとフィリミナが指差したのは、ちょうど門扉近くに、左右に門番のように植えられている銀木犀だ。
小さな白い花がささやかに咲き、月と星の光にぼんやりと浮かび上がっている。
「金木犀ほど目立つ色でも香りでもありませんが、わたくしは毎年これが楽しみで……」
「知っている」
「あら、ふふ。ええ、そうでしたわね」
知らないはずがない。
幼い頃に、そう、それこそ出会ったばかりのころに、フィリミナが教えてくれたこの季節の証なのだから。
金木犀ほど華やかな色でもなく、その花の数も少なく、香りは近付かなくては解らない。それが銀木犀だけれども、フィリミナは「わたくし達だけにこっそり秋のお知らせをしてくれているみたいで素敵でしょう?」と誇らしげにしていたことを、今でもなおこんなにも鮮明に覚えている。
「エディ」
「なんだ」
「随分お疲れのようですね」
「……そんなことは」
「あら、わたくしの目をごまかそうとしても、そうはいきませんよ」
きりりと顔を引き締めて、フィリミナは「フェルナンからも聞いておりますの」と駄目押しをしてくれた。
あの未来の義弟は、基本的にエギエディルズのことをとんでもなく毛嫌いしているが、それ以上にもうとんでもなく姉のことを溺愛している。
近頃エギエディルズの足がアディナ邸から遠のいていることについて、わざわざエギエディルズの代わりに姉に説明したのだろう。
未来の義弟は、そういうところがなんとも詰めが甘くて、いかにもフィリミナの弟だな、といつもエギエディルズは思うのだ。
話はずれたが、そうか。
明らかに顔に出るほど、疲れが出ているか。
それとも、フィリミナだからこそ、気付いてくれたのだろうか。
自分に都合のいい理由を取って付けようとする自身がどうにも情けない。
それでもなお、顔を見て、声を聞けただけで十分なはずなのに、もっともっとと求めてしまう自分がいる。
一番の望みは、『婚約者』から『夫』に格上げされることだけれど、それよりも今は目先の欲を取ってしまいそうで、けれどそんな真似をしたら。
――きら、われる?
滅多なことをしない限り、フィリミナならば「あらあら」と笑って済ませてくれるだろうが、それに甘えるのはあまりにも愚策だ。
そもそも今のこの自分の状態では、『滅多なこと』ばかりではないそれ以上のことを求めてしまいそうである。
目の前に、フィリミナと自分を隔てる門扉が存在することに、安堵と歯がゆさが同時にこみ上げてきて、つくづくやっていられない。
「エディ、少しよろしいでしょうか」
「……?」
「動かないでくださいましね」
首を傾げそうになったところをこらえると、するりとフィリミナの手が、門扉の柵の間から伸びてきた。
思わず目を見開くエギエディルズの頬に、そっと彼女の手が寄せられる。
あたたかく、やわらかく、不思議と甘い匂いのする手。
その手がたしかないたわりを込めてエギエディルズの頬を撫でていき、親指がそっと目の下をたどり、そして静かに遠のいていく。
名残惜しい、もっと、もう少し、と確かに願ってしまったエギエディルズを置き去りに、フィリミナは「もう」と唇を尖らせた。
「ほら、お肌もこんなに荒れて。クマまであるではありませんか。ちゃんと眠れていないのでしょう? 食事もおろそかになっていらっしゃるのでは? せっかくエディはとてもお綺麗なのですから、あまりもったいない真似はなさらないでくださいな」
「薄皮一枚剥げば人間の顔など誰もが似たようなものだろう」
「またそんな情緒のないことをおっしゃって!」
仕方のないひと、と小さく溜息を吐いたフィリミナが、ずっと手に下げた状態になっていたバスケットから、小ぶりの水筒を取り出した。
覚えがあるものだ。
エギエディルズが魔力を込めた魔法石を仕込み、中身の温度を好きなように設定できるようになっているちょっとした優れものである。
それを門扉の柵の隙間から差し出され、反射的に受け取る。
中身が確かにあることを感じさせるぬくもりと重み。
フィリミナの穏やかな笑みの中に、確かな心配と懇願が混じった。
「わたくしが先ほど作ったスープが入っておりますわ。今夜はこれを飲んで、まずは睡眠を優先なさってくださいな。夜のお散歩も素敵ですけれど、今あなたに必要なのは、十分な休息です」
「そんな暇はない。解っているだろう」
「…………ええ、そうですね」
ああ、と内心で天を仰ぐ。失敗した。また失敗した。
フィリミナの笑みが諦めのにじむさみしげなものになったことにどうして気付けずにいられるだろう。
それでもなお彼女は努めて穏やかに、いつも通りの笑みを浮かべようと努めてくれている。
その意図がどこにあるのかを、確かめるすべはない。
確かめたくないわけではないけれど、その意図が自分が望むものではなかったときが恐ろしい。
誰よりも何よりも恐れられる純黒の魔法使いが恐れるのが、なんの力もないひとりの令嬢の微笑み一つだなんて、とんだ笑い話だ。
「フィリ、ミナ」
「はい」
「この水筒は、次の休日に返しに来る。そのときには、薬草茶の葉も持ってくる。次の休日はゆっくりできるはずだ。もしお前が行きたいところがあるならば、……付き、合ってやっても、いい」
「!!」
フィリミナの瞳がまんまるになった。
明らかに驚いている彼女を前に、内心で頭を抱える。
最悪だ。何が『付き合ってやってもいい』だ。
本当は『付き合わせてくれ』だろう。
自分が彼女とどこかに出かけられたら、なんて、贅沢な望みを抱いているだけなのに。
断られても仕方のない言い回しだ。養父が時折「本当にお前は、特にフィリミナに関しては不器用になってしまうね……」と苦笑交じりに溜息を吐くのだが、まったく否定できない。
というか、『不器用』なんて言葉ではフォローし切れない。
もっと別の言い方ができたらいいのに、それができたら苦労しない。
それなのに。
「いい、のですか?」
「ああ」
「でも、せっかくのお休みですのに」
「休みだからだろうが」
「……わたくしにそのお休みをくださるということですの?」
「…………悪いか」
「いえ! いいえ、いいえ。そう、そうですの、さようですか」
うれしい、と。
それは音にはならなかったけれど、確かにそうフィリミナの唇が震えたのは、そうであってほしいと願う自分の願望だろうか。
穏やかな笑みに明らかな喜色が浮かんで、頬が夜目にすらそうと解るほど美しい薔薇色に染まって、そうして、フィリミナは。
「でしたら、我が家でお茶会をしましょう? わたくしとあなただけで、いつものように」
「……そんなことでいいのか?」
「あら、そんなことすら最近とんとご無沙汰ですが」
「…………」
「ふふ、ごめんなさい。意地悪を言いました。エディが持ってきてくださる薬草茶と、私が焼くチーズクッキーで、ゆっくりお話をしましょう。せっかくこんなにもいい季節なのですもの。中庭にテーブルと椅子を用意して、ああそうだわ、秋薔薇も飾って……。最近お気に入りの本が何冊もございますの、エディにも紹介させてくださいね、ええと、それから、それから……」
ふふ、くすくす、と楽しそうに、嬉しそうに笑いながら、両手で指折り数え始めるフィリミナの姿に、エギエディルズは唇を噛み締めた。
そうしなければ、魔力で目の前の門扉を吹き飛ばして、その勢いのままにフィリミナを両腕で掻き抱いてしまいそうだったからだ。
そんなことでいいのか、と問う自分に、そんなこと『が』いいと応えてくれる彼女が、こんなにも愛しい。
これが、エギエディルズが純黒であり一緒に出掛けるのがはばかられるからこそ屋敷の中で済ませようとしているのであれば、エギエディルズは「やはりやめておこう」と自分から提案したというのに約束を撤回しただろう。
だが、違うのだ。
フィリミナがエギエディルズに望んでくれるのは、わざわざ特別なことではなくて、当たり前の日常なのだ。
その『当たり前の日常』は、いつか本当に婚姻を結べたら、今後こそ『当たり前の日常』になる。
その日がこんなにも待ち遠しくて、だからこそエギエディルズは、フィリミナから渡されたぬくもりを感じる水筒を持つ手にそっと力を込める。
「そろそろ、帰る」
「あ、あら、そうですわよね。どうかお気をつけて。いくらあなたが王宮筆頭魔法使い様でも、こんな夜分ですもの」
「心配ない」
「ですが」
「大丈夫だ。今夜は導がある。ほら、見上げてみろ」
「え?」
エギエディルズがそっと促せば、フィリミナは不思議そうにしながらもそのまま上を向く。
そこにあるのは青く輝く大きな満月だ。
浩々と輝く青い光に照らされるフィリミナのその姿に見惚れながら、月のことなど一瞥すらせずに、エギエディルズは静かに笑った。
「月が綺麗だ」
月明りに浮かび上がる婚約者は、あの月よりももっとずっと美しいけれど、それは口には出せなかった。
けれど何故かフィリミナは息を呑んで、バッとエギエディルズのほうを勢いよく見つめてくる。
何故か顔が赤くて、何かを言いたげにはくはくとその唇を開閉させ、そして彼女は、不思議と気恥ずかしげにはにかんだ。
「そうですね。でも、エディ。でも、ですよ」
とっておきの秘密を打ち明けるように、フィリミナは、月よりも美しく笑みを深めた。
「月は、ずっと、ずぅっと前から、本当に綺麗でしたよ」
知らなかったでしょう? と暗に続けられ、ああ、とエギエディルズは嘆息し、全身全霊で素知らぬ顔を装って、噛み締めるように言の葉をつむぐ。
「――――そう、だな。ああ、そうだった」
――お前と出会ってから。
――月ばかりではなく、何もかもが。
そしてエギエディルズは屋敷の中に戻るフィリミナを最後まで見送って、自らもまた歩き出した。
転移魔法ではなく、自分の足で帰ろうと、改めて思った。
理由など言うまでもない。
月が、こんなにも、とても綺麗だったのだから。




