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004

 大きな街に住んでる同じぐらいの年の連中は、放課後をどうやって過ごすんだろうか。

 何度か行ったことのある東京は、人が多くて、夜でも明るくて。

 あの賑やかな中には楽しいこともいっぱいあるのか。

 

 この街には繁華街と呼ぶほどの場所は無く、ただ駅前にこぢんまりとした商店街が開けているに過ぎない。


 ふらふらと歩き回るにしてもそんなに時間を潰せるわけもなく。


「栂坂さんはどこか行きたいお店ある?」


 女子二人に前を任せて、男子二人は後ろをだらだらと行く。


「……ネットカフェとかでしょうか」


 ……栂坂さんがある意味ぶれないのは凄いけど、さ。


「それを言ったらおしまいよ……」

「何か文句有りますか……」


 耳ざとく人の呟きを聞き咎めて、ゲームの中とは違って束ねた髪を揺らして振り返り、不満げに口元をすぼめて見せるヘルズイヤーの黒髪の同級生。


「まぁでも、ネカフェ行っても、銀剣一緒にやるんじゃしょうが無いんじゃないかなぁ」


 おしゃべりしながらゲームするのは楽しいものだが、生憎と全感覚没入型の銀剣ではおしゃべりもゲームの中のこと。隣同士でプレイしようが、何キロか離れた自宅の自室からプレイしようがなんら変わる物では無い。


「ちょっと銀剣から離れようって話で折角来たんだから、ね」

「そうですね」


 藤宮さんの言葉に、栂坂さんもネカフェ案にそんなに執着することはなかったが、でも、それ以外に案が思い浮かぶこともないようで。行き先未定ののんびりとした足取りは変わることも無かった。


 時折すれ違う同じ制服の学生が、こちらに好奇の視線を送ってくるような気がする。それはきっと気のせいなんだろう。自意識過剰、自意識過剰と頭の中で唱えても、なんとなく向こうがせせら笑っているような錯覚を消し去ることは出来ない。


 自分に自信を持てなんて、言うは易し、行うは難し。


「ほら、女の子にばっかり任せてないで、男性陣は何か意見無いのかな?」


 藤宮さんの言葉に、裕真と顔を見合わせて、肩をすくめた。


「すみませんね、こういうの慣れていないもので」

「私だって慣れてないけどなー」

「またご謙遜を、栂坂さんならともかく」

「どうして四埜宮くんはいちいち私に喧嘩を売ってくるんでしょうか」

「四埜宮くんはちょっかい出したくなっちゃうんだよねー、どうしてかは知らないけど」


 なんで藤宮さんまでそんな怖い笑顔浮かべるんだろう……。


「いつも通りのボブテイルじゃ駄目だったのか?」

「どうせ話すのは銀剣のことになっちゃうじゃ無い。中里くんもリア充っぽい雰囲気のくせに気がきかないなぁ」

「そこまで言わなくてもいいんじゃないか……」


 たぶん八つ当たりって奴ですよ。どんまい裕真。


「銀剣しか趣味の無い俺達には街歩きなんてどだい無理な話だったのでは」

「達の中に私たちを含めないで欲しいなぁ、ねぇ、栂坂さん」

「そ、そうですよね……」


 ちょっと気まずそうに目をそらしてるの見え見えですからね。

 

 もちろんそんなの、俺より余程洞察力のある委員長殿が気付かぬはずもなく。

 流石の藤宮さんも、頭痛を堪えるように額に手をやった。


 商店街もそんなに広いわけでは無い。気付けばもうアーケードも途切れる辺りだった。


「もう! 四埜宮くん!」

「お、俺だけでしょうか……」


 何故か名指しで睨み付けられて、たじろぐ。


「戦争やらクエストだとあんなに張り切って色々仕切る癖に、なんでこういう時はそんなに消極的なのかな!」

「人間には得意不得意というものがあるわけでしてね」

「ユキちゃんは女の子を誑かすのも随分得意だと思うんだけどー」

「そんな人聞きの悪い……」


 なんだか、ここのところレティシアの時に止まらず、藤宮さんもなんか俺に当たりきつくないですかね。何も悪いことなんてしてないはずなんだけど。この間のジルデール攻略戦に参加できなかったこと、未だに悔やんでたりするのかな。


「実際俺商店街に買い物に出るのって本屋とかぐらいなんだけど、藤宮さんや栂坂さんはどんなお店行ったりするのさ」

「……Amazonですかね。他には……」

「はいもう栂坂さんは答えなくて良いから」

「四埜宮くん馬鹿にしてるでしょう……」


 実はこの人俺より引き籠もり指数高いのではあるまいな……優等生ぶった見た目で誤魔化してはいるけど。


「私も本屋とかが多いかなー、あとは、時々服を買いに来たり……そうだねー、そう言われると私もそんなに色んなお店行くわけじゃ無いのかも」

「……それじゃ服屋にでも行く?」


 そんなことを言った俺を、藤宮さんはびっくりしたような目で見つめてきた。


「男の子は一番退屈で嫌がると思ったんだけどな、そういうお店」

「栂坂さんに服を買いに行く服を選んであげないとと思っ」

「……四埜宮くん?」


 底冷えする声に、あわてて言葉を喉の辺りで引っ込める。


「ま、まぁほら、別に退屈しないから女の子同士で楽しめば良いと思うよ? 俺達は隅っこで小さくなってるし、な、裕真」

「何でも良いぞ」


 俺以上に主体性の無さを発揮する悪友を横目で睨み付ける。だけど、こいつが『何でも良いぞ』にこっと微笑んで見せると女子とかはときめいちゃうんだろうな。良いな好青年は……。


「じゃあ、ちょっとまた歩いちゃうけどモールにでも行こっか。二人に暇させるのもあれなんで、四埜宮くんのお言葉通り、私たちに似合いそうな服選んで貰おうかな」

「え、いや、俺達は隅っこにいるんでどうぞお構いなく」


 とんでもないと手をぱたぱた振って見せた俺に、藤宮さんは相変わらずのレティシアの笑顔で。


「楽しみだなー。二人のセンスがどんななのか」


 ……藪蛇という奴だったかな、もしかして。

はい、また長らくお待たせしましたorz

忙しかったのと、別作品にかまけていました。すみませんすみません(五体投地


以下CM

「俺達は異世界転生ができない」

http://book1.adouzi.eu.org/n4079dy/


一応ラブコメという体の新作、連載させていただいてます。よろしければこちらもお読みいただければ幸いです!

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