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第6話 ジパング防衛戦①

「そろそろこの町から出発しないとね」

夜がそう言いだした。

「クランは本当についてくるのか?」

俊はクランに確認する。

「今更何言ってるんですか……?」

「一応確認だよ」

「大丈夫……私はご主人様についていきます……一生」

クランはそう言った。

「さて、雫もいるし一気にジパングまで行きたいんだけどそれでいいかな?」

「俺は別にかまわない」

「…………」

「雫さん?」

なぜか朝から元気がない雫に俊は心配そおうに声をかける。

「あの……ジパングは滅びていませんよね……?」

雫が不安そうに訊いてくる。

「「「?」」」

皆、一斉に首をかしげる。

「いや、おかしいこと言ってるのはわかってるんです……でも、滅びるシーンを見てしまったんです……」

「っ……!雫!君はまさか……!」

夜が雫にいくつか質問を始める。


いくつかの質問が終わったあと夜は驚いた顔で言う。

「……やっぱり。雫の能力は生命感知なんかじゃない……『未来予知』だ」

「未来予知……!?」

珍しくクランが驚いた表情をする。

「でも、未来予知なんて……」

「そうだね、ありえない。まだ発現したことのなかった能力だ。でも実際にこうやって現れた」

「本当に未来予知の可能性は……?」

「雫の言っていることが本当なら100%だろうね」

「じゃあ、雫さんのさっき言ったことは……」

「近いうちにジパングが滅びる」

夜はそう言い放った。


「ちょっと急ぐよ」

先行する夜はさらに速度をあげる。

雫の予言を聞き、急いでジパングに行くことに決めた夜は、能力を使ってジパングに行くことにした。

人が少ない道を通っているので見られる心配はない。

感知能力者対策もちゃんとできている。

「雫さん、しっかりつかまっててくださいね」

「はい!」

能力的に速く走れない雫は俊がおぶっている。

通常神京から馬車で2日かかる距離を3時間で移動する。


そしてジパング。

「まだ大丈夫みたいだね」

ジパングはまだ滅びてなどいなかった。

「でもなんか暗くないか?ここって首都なんだろ?」

ジパングは神京よりも暗い雰囲気だった。

「いつもはこんな雰囲気じゃないんですが……」

雫も心配そうだ。

「雫様が亡くなられたことになっているみたいです……」

いきなりクランが言う。

「どういうことだ?」

俊は詳しい説明をクランに催促する。

「先ほど町の人に聞いたところ……雫様からの連絡が途絶えたと」

「あー……連絡入れてなかったもんな」

「まずは王様に会いに行った方が無難だろう」


「王様に会いたいんだ」

「今はお会いできません」

憲兵に門のところで拒否されてしまう。

「どうしてだい?」

「お前……知らないのか?姫様が亡くなったんだぞ?」

もう1人の憲兵がそう言う。

「そのお姫様が生きているとしてもかい?」

夜が雫がかぶっていた布を取る。

「「っ!!」」

「さあ、王様に会わせてくれ。伝えたいことがある」


「君たちが……雫を救ってくれたのか……?」

謁見の間に姿を現した王様は見るからにやつれていた。

「そういうことになるね。でも今はそんな話をしてる場合じゃない」

「貴様!王に向かって無礼だぞ!」

憲兵の1人が夜に剣を構える。

それを王様が片手をあげて止める。

「どういうことだね……?」

「このままだとこの国は亡びる」

「「「っ!!」」」

夜の発言に謁見の間にいた者たちはざわつく。

「滅びるだと……?」

「ああ、そうだ。まあ信じる信じないは別だけどね。近いうちにここに必ず魔物の襲撃があるよ。そして首都が滅びたジパングはすべて滅びる」

その話はちょっと前だったら信じられなかっただろう。しかしここ最近魔物の動きが活発化している。

「すぐに警戒態勢を……」

王様は近くにいた憲兵に指示する。

「信じるのですか!?」

「ああ。この者からはなにか不思議な力を感じる……」

「いい判断だ」


「ジパングが警戒態勢をしくそうだ」

別室にいた俊とクランにあったことを話す夜。

雫は違う部屋に連れて行かれてしまった。

「信じてもらえたのか?」

「ああ。あの王様なかなか鋭い」

「私たちはどうします……?」

「雫。君はどうしてほしい?」

がたっ。

ドアの付近から物音が聞こえた。

「き、気づいてたんですか?」

「もちろん」

「うぅ……気づいてたなら言ってくれても……」

「君は気づかれたくなかったみたいだからね」

「別に隠れてたわけじゃありません……」

「怖いんだろう?」

「え……?」

「自分の能力がまだ本当かもわからないのに国が動く、そして本当だったとしても国は傷を負う」

「…………」

「大丈夫だよ。君は自信を持っていい」

「本当……ですか……?」

「ああ。だって君はボクたちの仲間だろう?」

「うっ……うぅ……」

「もう、お姫様が泣いたらだめだろう?」

そう言って夜は雫を抱きしめる。

「それで、仲間の雫に訊くよ?君はどうしてほしい?」

「国を……国を守ってほしいです」

「仲間の頼みだよ。君たちも全力で応えてあげなね」

夜は俊とクランに言う。

「仲間なら報酬ももらえないな」

「がんばる……」

「みなさん……ありがとうございますっ」

雫は頭を下げた。


「長期戦になる……?」

「そうだね。首都が滅びるほどの戦力だ。長期戦になる。だからクランにはボクが直々に稽古をつけてあげよう」

「うん……」

「俺はどうしようかなー」

「君は雫と一緒にいてあげな。雫はなんとか立て直したけど危ないからね」

「了解」

「あ、でもえっちぃことはするなよ!?」

「しねえよ!てかしたら殺されるわ!」



「能力は使う量で体力の消費量も決まる。なら、いかに能力を使わないで相手を攻撃するかが大事になるね?」

「うん……」

城の中の訓練場。そこに夜とクランはいた。

周りには警戒態勢中だが何人かの勇者の姿も見えた。

「おいあれ『疾風の戦巫女』だよな?」

「ああ、そうだな。でもあの教えてる感じのお嬢ちゃんは誰だ?」

「見たことないな……」

そんな声が聞こえる。

「そこでこれを使う」

夜が取り出したのは小型ナイフだった。

「君は足に風をまとわせて攻撃するだろう?それと同じだ。このナイフに風をまとわせるんだ」

夜はクランにナイフを渡す。

「これを何本も持っていれば投擲も可能だからね。君の速さにはもってこいだ」

「まとわせる……」

ひゅぅぅぅぅぅ……

ナイフに風が集まる。

「まだ無駄があるね。もっと収束させてごらん?どうせ相手にあたるのはナイフの先だけだ。そこだけに収束させるんだよ」

「もっと……」

ナイフの先に風が尖ったような形に集まる。

「いい感じだ。じゃあそれをあそこの的に投げてごらん?」

「…………」

ヒュッ!

ドッ!

クランが投げたナイフは的から5メートル横の城壁に穴をあける。

「…………」

「……失敗」

「君ノーコンだろう……」

「否定できない……」

「ナイフにまとわせる感じはよかったから今度はそれを風で操作してごらん?」

ヒュッ!

今度は正確に的に収まる。

「的を壊しちゃったけどまあ大丈夫だろう」

「大丈夫……」

それからクランは自分なりに応用し、何度も練習した。


「雫さんっ」

「俊様……」

「大丈夫ですか?」

「正直まだ不安です……夜さんはああ言ってくれましたけど……」

「大丈夫ですよ」

「え……?」

「だって俺たちがいるじゃないですか?」

「でも、私はなにもできません……」

「じゃあそうですね……雫さんって料理できますか?」

「料理……ですか?」

「ええ。そうです」

「一応……」

「だったら戦いになって無事だったらおいしい料理でも作ってくださいよ」

「え?」

「雫さんの料理が待ってるって思えば俺がんばれますから。だからそれまでおいしい料理を作る練習でもしてください」

俊は笑顔で言う。

「俊様……」

「もちろん雫さんのことは俺が守りますから」

「はいっ」

雫はやっと笑顔を見せてくれる。


そして5日後。雫の未来予知通り魔物はやってくる。

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