1-8 転生した少年は訓練を始める 2
「さて、【身体強化】の訓練をしようか」
「うん」
昼食を終え、午後から【身体強化】の訓練を行う。
体を鍛えるのは屋敷の外だったのに、なぜか室内に移動した。
【身体強化】をするのなら、てっきり外でやると思っていたのだが・・・・・・
「まずは魔力の流れを認識することからだ」
「魔力の流れ?」
知らない言葉を理解できず、首を傾げてしまう。
そんな僕の様子を見て、爺ちゃんは少し考えてから説明する。
「そういえば、今まで魔力の訓練をしていなかったな。魔力が体内を流れているのはわかるか?」
「言葉としては理解したけど、実際に流れているかはわからない」
嘘偽り無く答える。
そもそも前世に魔力はなかった。
それなのに流れているのか感じるのは難しいはずだ。
「ならば、まずは流れる魔力を感じることからだな。両手の人差し指だけ伸ばしてみなさい」
「こう?」
指示の通り両手の人差し指だけ伸ばして前に出す。
その指先に爺ちゃんが人差し指で触れる。
少しして、体内に何か温かいものが入ってくるのを感じる。
「どうだ?」
「なんか温かい」
感じたとおり言葉にする。
曖昧な表現ではあるが、なんとも言えない感覚なので仕方がない。
「それが魔力だ。他に何か気づいたことはあるか?」
爺ちゃんが続いて質問してくる。
何かおかしな事があるのだろうか?
自身に流れる魔力に集中してみる。
そこであることに気がついた。
「もしかして、右手から魔力が入って、左手から爺ちゃんの方に魔力が戻っている?」
「その通りだ」
僕の答えに爺ちゃんは満足そうに疑う。
てっきり僕の中に魔力が入ってくるだけだと思っていたが、まさか外に出ているとは思わなかった。
魔力の操作ができれば、相手の魔力も操作できるのだろうか?
「なぜこんなことをしているのか、わかるか?」
「僕に魔力の流れを教えるためじゃないの?」
そもそもの目的が教えることだろう。
それ以外にあるのだろうか?
「もちろんだ。そもそも魔力とは自分たちの体内で作られ、そのまま流れる」
「そうなんだね。でも、それが何か関係あるの?」
「作られる魔力は無限だと思うか?」
「え? 有限だと思う」
普通に考えれば、無限はあり得ないだろう。
どのような経路で魔力が作られるのかはわからないが、体内で作られる以上有限であるはずだ。
無限であるならば、体内に無限の材料があることになる。
そんなことはありえないはずだ。
「その通り、有限だ。作られる魔力が有限ならば、体内に流れる魔力も有限なのは理解できるか」
「うん、そうだね。・・・・・・もしかして」
説明を聞いて、ある結論に辿り着く。
僕の様子に気づき、爺ちゃんが種明かしをする。
「もし私がレイに魔力を流し続ければ、容量を超えた魔力のせいで体調を悪くしていたはずだ。だからこそ、魔力の流れとして反対側から出させたわけだ」
「そういうことか」
ようやく両方の手で接していた意味が理解できた。
たしかに入れるだけなら片方だけで良いはずだ。
魔力の流れを感じるだけで、こんなに勉強になるとは思わなかった。
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