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1-6 転生した少年は解決方法を聞く


「レイがこれから鍛えるべき技術は【身体強化】だ」

「【身体強化】?」


 初めての言葉に首を傾げる。

 もちろん、言葉の意味は理解できる。

 だが、どうやって行うのかはわからない。


「簡単に言うと、魔力の運用によって身体能力を向上させることだ」

「つまり、魔力を使って強い力になるってこと?」

「そういうことだ」


 かみ砕いた説明に爺ちゃんは頷く。

 間違っていなかったようだ。

 だが、問題はある。


「僕、魔力の使い方なんてわからないんだけど」


 いくら前世の知識があるとはいえ、前世にない技術などは使うことはできない。

 魔法がその最たる例である。

 当然、魔力の使い方もわからない。


「まあ、魔法を使わないようにさせたから仕方がないな。よし、私が指導してやろう」

「えっ?」


 予想外の提案に思わず驚いてしまう。

 その反応に爺ちゃんは傷ついた表情を浮かべる。


「私に教わるのは嫌か?」

「いや、そんなことはないよ。でも、爺ちゃんも子爵の仕事で忙しいんじゃないの?」

「そんなもの、後で良い。孫とのふれあいより大事なことなど、この世にはない」


 とんでもないことを言い出した。

 孫馬鹿、ここに極まれりだ。


「お父様」

「・・・・・・すまん」


 母さんの静かながら怒りのこもった声に爺ちゃんがしょんぼりと落ち込む。

 どちらが年上なのかまったくわからない。

 子爵家の当主と娘の関係なら、当主の方が格上のはずだろう。

 なのに、目の前の光景は逆である。

 一体、どうしてなのだろうか?


「孫とのふれあいの意味合いもあるが、私が指導することでレイにとっても良いことがある」

「良いこと?」


 やはりふれあいも目的の一つだったか。

 まあ、一つというより大半な気もするが・・・・・・

 しかし、良いことの内容がわからない。


「レイはいずれこのフォルテ子爵家を継ぐことになる。私が直々に指導することで、訓練と同時に当主の仕事を学べるわけだ」

「なるほど」


 良いことの意味が理解できた。

 たしかに僕の立場であれば、良いことなのかもしれない。

 自分の力を高めつつ、将来のための準備ができる。


「だが、私は強制するつもりはない」

「どうして?」


 思わず聞き返してしまった。

 子爵家の男児として、この訓練を受けるのは義務であろう。

 それなのに、当主が強制しない意図がわからない。


「魔法が使えないというハンデを克服するため、かなり厳しい修行を課すことになる。想像を絶するほどきついだろう」

「そうなんですね」

「レイが耐えられないのであれば、無理矢理させたくはない。私にとって大事な孫なのだから、傷つけたくはない」

「・・・・・・」


 爺ちゃんの気持ちは理解できる。

 大事にしてもらっていることはわかっている。

 これも爺ちゃんの愛なのだろう。


「心配しないで、爺ちゃん」

「む?」


 自信満々な言葉に爺ちゃんが驚く。

 まさかそんな返事が返ってくるとは思わなかったのだろう。


「たしかにきついかもしれないけど、僕の将来のためだよね。だったら、絶対に乗り越えてみせるよ」

「おぉ、立派に育って嬉しいぞ」


 僕の宣言を聞き、爺ちゃんが嬉しそうに抱き締めてくれる。

 嬉しい反面、恥ずかしい気持ちもある。


「そういえば、確認したいんだけど」

「なんだ?」

「その訓練を乗り越えられたら、爺ちゃんみたいに立派な体格になれる?」

「ああ、もちろんだ」


 嬉しい事実を聞き、心の中でガッツポーズをする。

 前世での後悔を晴らすことができるかもしれない。







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