1-3 異世界で貴族として転生する
主人公が異世界転生したあとの境遇についての話。
この世界で目覚めてから、6年の月日が経った。
どうやら僕は異世界に転生してしまったようだ。
この世界での僕はレイ=フォルテ──フォルテ子爵という貴族の家に生まれた子供、となっている。
「ぼっちゃ──レイ」
「なに、母さん?」
廊下で女性に呼びかけられる。
ルクス=フォルテ──フォルテ子爵家の娘であり、僕の母親である。
黒く長い髪に鋭い目つきが特徴の綺麗系の美女である。
スラッとした体型であるが、しっかりと筋肉はついている。
その動きには一切の無駄はなかった。
「お父様が呼んでいるわ」
「爺ちゃんが?」
予想外の言葉に思わず驚いてしまう。
彼女の父親──僕の祖父はフォルテ子爵の当主である。
毎日食事を一緒に取っているが、それ以外は仕事熱心で中々一緒に過ごすことはできない。
そんな彼がわざわざ食事以外の時間に呼び出してきたわけだ。
驚かない方がおかしい。
「一体、何のようなんだろう?」
「私からは言えないわ。お父様が話すことよ」
僕の疑問に母さんは答えなかった。
答えられなかった、の方が正しいだろうか?
「わかった。爺ちゃんの部屋に行けば良いんだよね」
「ええ。でも、私も一緒に行くわ」
「母さんも?」
まさか着いてくるとは思わず驚いてしまった。
てっきり僕だけ行くものだと思っていた。
「息子についての大事な話よ。母親が着いていくのは当然でしょう」
「まあ、そうなんだけど・・・・・・」
言い分はもっともではあるが、少し違和感がある。
だが、それを口にするのは憚られるので、何も言えなくなってしまう。
「じゃあ、早く行きましょう」
「わかったよ」
急かされたので、僕は母さんと一緒に歩き始める。
当主である爺ちゃんを待たせるわけにはいかないのだろう。
「あ、そうだ」
「何?」
「そろそろ言葉遣いを直さないとね」
「え?」
母さんがおかしなことを言い始めた。
今まではそんなこと言ったことがないのに・・・・・・
「レイもフォルテ子爵家の人間でしょう。貴族として、マナーや礼儀をしっかりとできるようにならないとね」
「僕はまだ子供だよ?」
「子供でも早いことはないわ。いずれはフォルテ子爵家の人間として、他の貴族の子達と交流することもあるの。そのとき、目上の人に無作法を働いたら大変なことになるわ」
「う~ん」
彼女の言い分はもっともである。
でも、6歳の子供に勉強させることなのだろうか?
現に僕は同年代の貴族の子供と出会ったことはない。
一生出会わないのでは、と思っているぐらいだ。
「でも、爺ちゃんは砕けた口調の方が喜んでいるよ」
「孫に甘いからよ。まったくお父様は・・・・・・」
僕の言葉に母さんは怒りの表情を見せる。
ごめん、爺ちゃん。
変に怒りをたきつけちゃった。
心の中で謝罪をし、他に失言しないように最低限の相槌だけして着いていくことにした。
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