2-12 転生した少年は襲撃者と戦う
「アテルお嬢様、行きましょう」
「え?」
ベテランメイドの突然の言葉にアテルは驚く。
状況が理解できないのだろう。
それは僕も同様だった。
「どこに連れて行くつもりかな? 散歩とかの雰囲気には見えないけど」
「私たちが用があるのはアテルお嬢様だけよ。部外者は引っ込んでなさい」
僕の問いかけに冷たい反応をするベテランメイド。
どうやら狙いはアテルのようだ。
だが、どうして狙っているかまではわからない。
しかも、辺境伯家に仕えているはずの彼女がこんなことをしているのだろうか?
「行きたくないっ!」
「だってさ」
アテルは拒絶する。
彼女は元々あまり外出をしない。
僕がトネル辺境伯領に来て、彼女が屋敷から出たのを見たことがない。
そもそもほとんど自室で過ごしていた。
引きこもりなんだろうか?
「仕方がありません。手荒なまねはしたくないのですが・・・・・・」
ベテランメイドがため息をつき、片手を上げる。
後ろにいたフードの男達が一斉に襲い掛かってくる。
「ひっ⁉」
一人が真っ正面から手を伸ばし、アテルはその場にしゃがみ込む。
大人の男が近づいてくれば、恐怖を感じて当然である。
(パンッ)
「っ⁉」
相手の腕をとって、足払いをかける。
アテルに集中していたせいで、足下が疎かだった。
そのまま【身体強化】をかけて回転し、相手を投げ飛ばす。
男は少し離れた木にぶつかる。
「子供だと思って、甘く見ない方がいいみたいね」
僕の動きにベテランメイドが評価する。
あまり嬉しい状況ではないが・・・・・・
((スッ))
僕を挟んで対角線上に位置する男達。
片方に集中すれば、反対側から攻撃されるわけだ。
「少し離れて」
「う、うん」
アテルに指示を出す。
彼女がいれば攻撃されることはないが、こちらも動きを制限される。
流石に守りながら戦うことは難しい。
((ダッ))
二人が同時に襲い掛かってくる。
タイミングはバッチリである。
(ヒュッ)
「っ⁉」
いきなり目の前に現れた僕に男が驚く。
まさか近づいてくるとは思わなかったのだろう。
だが、同時攻撃に対処するのなら、どちらか片方に寄ることでタイミングをずらすのが良い。
一番悪いのはどちらを対処するのか悩み、その場に留まることである。
僕の動きに驚き、男の身体が硬直する。
(ガッ、グルッ)
右手で男の首元を掴み、体勢を低くして懐に潜り込む。
スピードも相まって、男の身体が宙を浮く。
パッと手を離すとそのまま飛んでいき・・・・・・
((ドサッ))
反対側の男に直撃する。
いきなり飛んできた男を相方は避けることができなかった。
巻き込まれて、地面をゴロゴロと転がる。
「そこまでよ」
「っ⁉」
少し離れたところから話しかけられる。
振り向くと、アテルの首元にナイフを突きつけるベテランメイドの姿があった。
僕から離れさせたせいで、接近する隙を作ってしまったようだ。
人質を取られた状況でうかつに動くことができない。
(ガンッ)
「ぐっ⁉」
後頭部に強い衝撃が加わり、視界が一瞬で黒くなった。
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