2-11 転生した少年は少女を心配する
辺境伯邸に滞在中、僕はアテルと交流しようとした。
友達になるためにはまず話をしないといけない。
「一緒に遊ばない?」
「・・・・・・」
「何の本を読んでいるの?」
「・・・・・・」
「好きな食べ物ってある?」
「・・・・・・」
だが、会話はまったくできなかった。
いくら話しかけようとも、彼女は僕を無視していた。
正直、かなりショックだった。
前世で僕は友達が少なかったし、女友達にいたっては一人しかいなかった。
まあ、その女友達を相手に恋心を抱き、告白もできずにフラれてしまったわけだが・・・・・・
とりあえず、僕の経験値で彼女と友情を育めるのだろうか?
数日が経ち、そんな不安が頭をよぎる。
「ねぇ、話ぐらいしようよ」
「・・・・・・」
辺境伯邸の庭に一人でいる彼女に話しかける。
話す内容が尽きてしまい、そんなことしか言えなかった。
当然、反応は返ってこない。
だが、ここまで無反応なのはこっちとしてはあまり面白くない。
「会話すらしないなんて、貴族令嬢としてどうかと思うよ?」
「・・・・・・」
「【闇属性】というよりも、人として問題があるんじゃないかな?」
「っ⁉」
ようやく反応してくれた。
だが、これは果たして成功なのだろうか?
明らかに酷いことを言ってしまった気がする。
「あんたに何が分かるのよ」
「はい?」
ようやく話をしてくれたが、予想外の強い言葉に驚いてしまう。
おとなしそうな雰囲気の彼女とは思えない口調である。
いや、それほど怒らしてしまったのだろうか?
「【闇属性】のせいで、みんな私のことを敬遠するの。だから、誰も私に近寄ろうとしない。近づいてくるのは私を利用しようとする人だけよ」
「そんなことはないでしょ」
思わず否定してしまった。
どんな経験をしたら、そんな風に考えるようになるのだろうか。
いくら【闇属性】だとしても、考えまで暗くなる必要はないだろう。
「あなただって、私のことを利用するつもりでしょ」
「利用って、ただ友達になりたいだけだけど?」
「信じられないわ」
「・・・・・・」
正直な気持ちを伝えたが、あっさり拒否される。
信じてもらいたいが、この調子では難しいだろう。
だが、この状況をどうにかする手段がまったく思いつかない。
それがわかれば、前世の僕は友達が多かったはずだ。
(ザザッ)
「ん?」
誰かの足音が聞こえた。
辺境伯邸の中なので、それ自体はおかしくない。
だが、音が鳴らないように歩いており、明らかに普通ではない。
「お迎えに参りました、アテル様」
誰かが声をかけてきた。
振り向くと、そこには一人のメイドがいた。
30代ぐらいのベテランメイドで、この屋敷で過ごしていて何度か見かけた覚えがある。
彼女がこの場にいること自体は別におかしくはない。
そんな彼女の背後に黒いローブを着た集団がいることがおかしいのだ。
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