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2-9 転生した少年は辺境伯家の事情を聞く


「ああ、すまんな」


 辺境伯が申し訳なさそうに謝罪する。

 もしかすると、こうなることはわかっていたのかもしれない。


「一体、どういうことだ? 先程の反応は明らかにおかしいぞ」


 爺ちゃんも気になるのか、直球で質問する。

 初対面の少女にあそこまで拒絶されるとは思わなかった。

 何らかの理由があると思うが・・・・・・


「娘──アテルは【闇属性】なんです」

「【闇属性】だとっ⁉」


 辺境伯の説明に爺ちゃんは驚愕する。

 この世界の魔法は基本的に【四大属性】に属している。

 例外として、その枠外の属性も存在する。

 【闇属性】もその一つであり、歴史上でも数えるほどしか存在していない。


「妻──キュリテが【闇属性】だったのですが、レガンには遺伝しませんでした」

「まあ、遺伝で伝わるのであれば、もっと【闇属性】は増えているだろうからな」


 辺境伯夫人が【闇属性】と聞いて、心の中で納得する。

 ある意味、かなり深い闇を持っていた気がする。


 属性はどのように決まるのかはわかっていない。

 ある属性がとある一族に発現することが多いが、決してその一族全員が発現するわけでもない。

 まったく違うところで発現したりすることもある。

 一体、どういう要素が関係しているのか・・・・・・


「娘は【闇属性】であることを嫌がっています。世間の風潮的には仕方がないことでしょうが・・・・・・」

「あまり良いようには見られないものな」


 世間一般的に【闇属性】はあまり評判はよろしくない。

 闇という存在にネガティブなイメージがついているのだ。

 そのイメージが恐怖につながるわけだ。


「でも、夫人は気にした様子はないよね」


 思ったことを口にする。

 彼女も【闇属性】のはずだが、それを気にした様子はまったくなかった。

 むしろ、【闇属性】を利用して、目的を完遂させようとしていたぐらいだ。


「あれでも昔は【闇属性】である自分が嫌いだったんだよ」

「そうなんですか?」


 辺境伯の言葉に首を傾げる。

 とてもそうは思えなかった。

 彼女は昔からあんな感じではなかったのか?


「ルクスさんに出会って、自分を大事にできるようになったようだ。詳しいことは知らないけどね」

「どういった話をしたか聞かないんですか?」


 辺境伯夫人が前向きなったのなら、アテルの件にも役立つかもしれない。

 あんな風になるのがいいのかはさておいて、聞いておいた方が良いと思う。

 だが、辺境伯は首を横に振る。


「彼女の大事な思い出だ。踏み込むようなマネはしたくない」

「そうかもしれないですけど、大事なお子さんの話ですよ」


 奥さんのことを大事にするのも分かるが、子供のことも大事だろう。

 ならば、解決の糸口をどうにか掴むべきだと思うが・・・・・・


「正直、妻の思い出が役に立つ気がしない。基本的にルクスさんを賛美する話にしかならないだろう」

「あぁ、なるほど」


 辺境伯の言葉に納得する。

 たしかにそういう意味では彼女にろくな話は聞けなさそうだ。

 母さんへの賛美に明け暮れ、過去の自分自身については何も覚えていなさそうだ。







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