2-7 転生した少年は命の危険が迫る
「キ、キュリテ?」
突然魔力を膨れ上がった妻に恐る恐る問いかける辺境伯。
かなり怒っているのが他人の僕でもわかるぐらいだ。
対応しないといけない彼にとって恐怖だろう。
「・・・・・・よ?」
「え?」
ボソボソと何か言ったせいで聞き取れなかった。
だが、すぐに答えは聞けた。
「お姉様を捨てた糞野郎はどこのどいつよおっ!」
辺境伯夫人の激高する。
魔力が魔法に変換され、黒いうねうねが広がっていく。
触れるだけでもまずそうな気がする。
一体、あれはなんなんだ?
(ガンッ)
「いたっ!」
だが、その暴走もあっさりと終了する。
誰かが彼女の頭にチョップをかました。
膨れ上がった魔力が霧散し、黒いうねうねも消えていった。
「落ち着きなさい」
「お、お姉様」
止めたのは母さんだった。
まさかの相手に止められ、辺境伯夫人も驚いていた。
この場で驚いていないのは爺ちゃんだけだった。
「怒ってくれるのは嬉しいけど、無駄なことは止めなさい」
「無駄なことではありません。この世で最も美しいお姉様を捨てた糞野郎は極刑ですら生ぬるいです」
「・・・・・・恥ずかしいから止めてくれない?」
辺境伯夫人はかなりの強火な信者のようだ。
たしかに母さんは綺麗だと思うが、そこまで信奉するほどだろうか?
恥ずかしがっている様から母さんが強制しているわけでもないし、どうしてここまで好かれているのだろうか?
「しかも、子供ができたせいでお姉様は仕事を辞めることになったんですよね。せっかくメリア様の・・・・・・」
「キュリテっ!」
「っ⁉」
辺境伯夫人が何か言おうとしたが、母さんが鋭く名前を呼ぶ。
それだけで彼女は口を噤んだ。
一体、どうしたのだろうか?
「そもそも私も記憶が曖昧で覚えていないの。だから、どこの誰が相手かもわからないわ」
「で、ですが・・・・・・」
母さんの記憶が曖昧であれば、相手を探すことすら困難である。
この国の男全員を手に掛けるわけにもいかないし、実質何もできない。
だが、辺境伯夫人は諦めきれないようで食い下がろうとする。
そんな彼女に母さんは優しい笑みを浮かべる。
「私は相手に感謝しているの」
「感謝ですか?」
「大事な息子──レイと出会わせてくれたわ」
母さんにそんな風に言ってもらえて嬉しい気持ちで一杯である。
「こいつにも糞野郎の血が・・・・・・」
だが、辺境伯夫人にとって僕は憎い男の血が半分入っている存在らしい。
もしかして、これが理由で先程から睨まれていた?
そう考えると、かなり怖いんですけど・・・・・・
「でも、キュリテの存在がありがたいわ」
「え?」
「だって、キュリテは二人の子供を育てているわ。私よりも育児の先輩だから、色々教えて欲しいわ」
「私がお姉様の先輩?」
母さんの言葉に辺境伯夫人の表情が変わる。
昔なじみだからか、かなり扱いがうまいな。
まさかあんな暴走している人を落ち着かせることができるとはな。
でも、彼女にはできる限り近づかない方がいいかも。
命の危険を感じるし・・・・・・
敵視されていたまさかの理由です。
信者って怖いですよね。
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