2-6 転生した少年は秘密を知る
「では、さっそく本題に入らせて貰いましょう」
一旦全員が席につくと、辺境伯が話を始める。
果たしてどういう用件で僕たちは呼び出されたのだろうか?
「レイ君のことです」
「僕?」
いきなり話題を振られ、驚いてしまった。
だが、別に僕に話を聞くわけではないようだ。
「年齢は8歳ですか、ウチの娘と同い年ですね」
「まあ、そうだな」
辺境伯の言葉に爺ちゃんが頷く。
別に否定することではない。
だが、娘さんの年齢は関係あるのだろうか?
「それなのに、どうして今まで隠していたんですか?」
「隠していた?」
予想外の言葉に反応してしまう。
隠していたとはどういうことだろうか?
「貴族同士は繋がりが大事です。隣接する領地を持つ者同士ならより大事で、それこそ家族ぐるみの付き合いになるでしょう。ですが、俺は子爵家からレイ君が生まれていることを聞かされていませんでした」
辺境伯から少し怒りの感情が見える。
たしかに言い分はもっともである。
隣の領地なので、仲良くやっていきたいのは本当だろう。
だからこそ、子供がいるという重要な情報は聞きたかったに違いない。
しかし、爺ちゃんも母さんもどうして僕のことを隠したのだろうか?
「すまないな。こちらにも事情があってな」
「どういう事情ですか?」
爺ちゃんが謝罪するも、辺境伯はさらに追求する。
しっかりした理由じゃないと納得しなさそうだ。
「ルクスについて気になることはないか?」
「気になること、ですか?」
爺ちゃんの質問に辺境伯は母さんの方を見つめる。
他の人たちも一斉に見る。
視線がすべて集まったが、母さんはまったく気にした素振りもなく落ち着いた様子だった。
こういう物静かな雰囲気の女性が好みの男性も多いだろう。
「そういえば、旦那さんはどなたですか?」
質問の意図に辺境伯は気づいたようだ。
正しく伝わったと理解したのだろう、爺ちゃんは話を続ける。
「わからない」
「わからない?」
予想外の回答に辺境伯はきょとんとする。
そんな回答が返ってくるとは思わなかったのだろう。
初めて聞く僕も同様である。
「ルクスが酒に酔った勢いで一夜を共にした男らしい。だが、あまりに酔っていて記憶も曖昧らしい」
「あの真面目なルクスさんがですか?」
家族以外の評価も真面目らしい。
普段の母さんを知っていれば、そうなるのも仕方がない。
だからこそ、爺ちゃんの話が信じられない。
「いくら真面目な娘でも、羽目を外すことはある。私はそこを責めるつもりはない」
「そうですね。彼女は少し真面目すぎますから、羽目を外すぐらいがちょうど良いでしょうね。ですけど、どうして今は子爵家に?」
辺境伯の疑問はもっともである。
一夜の過ちで子供ができたのは理解できた。
だが、子爵家に戻る理由がわからない。
「相手に頼ることができない以上、ルクスは一人で育てないといけなくなる。それは無理だということで、実家を頼りにしたのだ」
この世界の事情はそこまで詳しくないが、前世でもシングルマザーの生活は大変だと聞く。
そういう女性への支援などもあまり潤沢ではなさそうで、母さんが実家を頼りにしたのも理解できる。
(ボウッ)
突然、辺境伯夫人の魔力が膨れ上がった。
全員が振り向くと、そこには怒りのオーラに包まれた姿があった。
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