1-2 目覚めると見知らぬ世界だった
同時投稿3/3です。
「【無属性】です」
「「「「「えっ⁉」」」」」
周囲が驚いた反応に気づく。
目を開けると、多くの人がいた。
見上げているせいか、全員が大きく見える。
「あう~」
声を出そうとしたが、なぜか言葉にならなかった。
どうにか動こうと手を振ると、かなり小さいことに気がついた。
まるで赤ん坊のような──
「嘘よ」
「いえ、診断は確実です」
女性の悲痛な叫びにひげ面の男性が申し訳なさそうに首を振る。
どういう状況だろうか?
まったく意味が分からない。
「もう行くぞ」
一人の男がその場から立ち去ろうとする。
格好からこの場で一番偉いのだと分かる。
周囲の人々も彼に追随する。
「待ってください」
女性が呼びかけるが、男は振り向かずに部屋から出て行ってしまった。
部屋には彼女と一人のメイドが残っているだけだった。
「うぅ」
「メリア様、お気をたしかに」
悲しみに暮れる女性をメイドは慰めようとする。
状況はわからないが、慰めたところでどうにかなるとは思えない。
気休めにもならないだろう。
「ねぇ、この子はどうなると思う?」
「それは・・・・・・」
メイドは返事をできない。
それだけであまり良い答えではないだろう。
「私はどうなっても構わないわ。でも、産まれたばかりのこの子が不幸になるのは耐えられないわ。何の罪もないのに」
「もちろんです」
女性の言葉に優しさを感じる。
子供に対する虐待がニュースになる世の中だが、こういう考えを持つ親が増えれば減るのではないだろうか?
「でも、私にはどうすることもできないの」
「メリア様、私に考えがあります」
「え?」
メイドは意を決したように伝える。
驚く女性の耳元に囁くように伝えた。
その声はこちらには聞こえなかった。
「そんなことできるの?」
「もちろん、賭けではあります。成功する可能性は低いですが、坊ちゃまが助かる道はこれしかないです」
「でも、貴女は仕事を失うことに・・・・・・」
女性は心配そうな表情になる。
仕事を失う──かなり危ない賭けなのだろう。
「その程度、私にとってなんともないです。元々、メリア様への恩義でこの仕事をさせてもらっていたのですから」
「けど・・・・・・」
メイドの強い意志を聞き、女性は何も言えなくなる。
よほど信頼しているのだろう。
その相手を犠牲にすることへ葛藤があるようだ。
「むしろメリア様の方が心配です」
「え?」
「この作戦が成功しても失敗しても、メリア様は坊ちゃまに二度と会えないでしょう」
「・・・・・・」
女性は考え込むような仕草をする。
少しして顔を上げると、その表情は真剣であった。
覚悟が決まったようである。
「この子が生きられるなら何でもやるわ。お願いできるかしら?」
「かしこまりました」
彼女の言葉にメイドは恭しく礼をする。
二人の視線はこちらに向く。
「ごめんね、レイ」
目の前で女性が謝罪をしてくれる。
近くに来たことでかなりの美人だとわかったが、そんな彼女が悲しそうな表情なのが心苦しかった。
だが、今の僕には何もできないようだ。
「あぅ・・・・・・」
なぜか急に眠気がくる。
再び視界がブラックアウトした。
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