2-1 転生した少年は訓練をする
「はあっ!」
左脚を前にして、右の拳を放つ。
【身体強化】のおかげでかなりの速度がある。
「甘い」
その攻撃もあっさりといなされる。
やはり真正面からでは簡単に対処されるようだ。
だが、それもわかっていた。
いなされた右手を地面につけ、軸にして回転する。
(バシッ)
「単発ではなく、流れで攻撃したか。悪くはないが、まだまだだな」
回転の勢いで放った蹴りはあっさりと受け止められる。
いなした状態で視線をそらしたところを狙ったのだが、爺ちゃん相手にはまったく意味がなかったようだ。
「はぁ、やっぱりまだ一本は取れないか」
大きくため息をつく。
修行を始めて2年の月日が経ち、僕も8歳になった。
身体能力も向上し、【身体強化】の練度も高くなった。
相乗的に強くなっているはずだが、それでもまだ爺ちゃんの足下にも及ばない。
年齢的には仕方がないことだが、多少は驚かせてみたいものだ。
「私の死角から攻撃しようとしたのだろう。並の相手だったら、一本取れていただろうな」
「例えば?」
「オークなら対応できないだろうな。オーガになってくると食らったとしても耐えられて反撃されるだろうな」
「そのレベルか」
爺ちゃんの評価にがっかりする。
結構良い線をいったと思ったが、大した評価はされていない。
ちなみにオークは豚顔の魔物、オーガは日本で言うところの鬼のような魔物である。
魔物にはランクがあり、下から順にG、F、E、D、C、B、A、Sと上がっていく。
オークはFランク、オーガはEランクに分類される。
つまり、評価的にはあまり高くないのだ。
爺ちゃんとしては褒めているつもりだろうが・・・・・・
ちなみに、以前戦ったクレイジーベアはCランクに分類されている。
当時の──いや、今の僕でも相手するのは難しい。
あの時はよく生き残れたな。
「順調に成長しているな」
「でも、爺ちゃんにはあっさりいなされてるよ」
褒めてくれているが、素直に受け取れない。
できることは増えているが、あまり自分では成長を感じられない。
「流石にまだまだ孫に遅れを取るわけにはいかないからな。それとも、手加減をされたいか?」
「いや、それはいい。負けた気がするから」
爺ちゃんの提案を拒否する。
僕は実力で爺ちゃんから一本を取りたいのだ。
手加減されてしまえば、まったく意味はない。
「なら、もっと努力をしないとな」
そんな僕の答えに爺ちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべる。
彼は努力をする者が大好きだ。
だからこそ、僕に訓練をつけてくれるのだ。
けど、そろそろ目に見える成果が欲しい頃だ。
このままじゃ、やる気が萎えてしまいそうだ。
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