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閑話 父と娘は心配する


「父さん、何を考えているの?」


 ルクスは鋭い視線で睨み付ける。

 明らかに怒りの感情が見て取れる。


「そんな軽蔑した目で見るな。私にそんな趣味はない」

「はぐらかさないでください」


 冗談めかすフォルスだが、ルクスはさらに語気を強める。

 フォルスは大きくため息をつく。


「はぁ。今回の件は私も予想外だった」

「クレイジーベアが出てくる可能性はもともとあったでしょ。試験だったら、もっと安全なところでも良かったじゃない」

「【身体強化】の練度を確認するのにあの森が一番良いんだ」

「その結果がレイの怪我よ」

「ぐ・・・・・・」


 フォルスは言葉を詰まらせる。

 レイを怪我させた負い目があるのだろう。


「今回は命があったから良かったけど、万が一のことがあったら一生恨んでたわよ」

「万が一のことが起こらないように注意はしていた。レイの魔力を感知していたから、ピンチには助けにいけるようにしていた」

「その割には結構ギリギリだったわね」

「あくまでレイの魔力しか感知していなかったからな。クレイジーベアがいたとは思わなかった」


 フォルスは言い訳をする。

 言葉の通り、危険があれば助けに行けるように準備をしていた。

 今回はクレイジーベアの出現により、予想以上にヤバい状況だったのだ。

 その可能性を予想していなかったことに問題はあるが・・・・・・


「はぁ、メリア様に申し訳ないわ」

「・・・・・・連絡はつかないのか?」


 ためいきをつくルクスにフォルスは聞き返す。

 彼としても思うところがあるのだ。


「連絡できるわけがないじゃない。秘密を護るためにはね」

「・・・・・・少しぐらいはいいんじゃないか?」


 フォルスは食い下がる。

 秘密を守ることは大事である。

 だが、それよりも大事なことはあるとも思っている。


「メリア様は覚悟をして私に託してくれたの。その意志を無視するわけにはいかないわ」

「・・・・・・お前がそこまで言うのなら、私も従うしかないな」

「・・・・・・ありがとう」


 ルクスの意志が固いことにフォルスも納得するしかなかった。

 彼ができるのは、大事な娘と孫を自分の庇護下で守ることだけだ。







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