1-22 転生した少年は新たな家族を得る
「きゅう?」
ホーンラビットが目を覚ます。
ぼんやりした様子が可愛らしい。
僕に気がつくと、身体をすり寄せてくる。
お返しに撫でてあげると、とても気持ちよさそうにする。
「かなり懐いているな」
「僕もびっくりだよ」
いくら死線を共に乗り越えたとしても、野生動物にここまで懐かれるとは思わなかった。
恩義を感じてくれているのだろうか?
「まあ、当然だな」
「当然?」
思わず首を傾げてしまう。
どうして懐いてくれるのが当然なのだろうか?
「そのホーンラビットはレイと繋がりがある」
「繋がり?」
「魔力によって繋がっているということだ。レイが【身体強化】で回復させた際、魔力を薙がしたことが原因だろう」
「あの時か」
説明を聞き、状況を理解できた。
この子の中に僕の魔力があるおかげで、親近感があるということか。
「良いことなのかな?」
「何がだ?」
「元々、この子は野生で生きてきたでしょ。僕の魔力のせいで野生に戻れないかもしれないよ」
ここまで懐かれるのは嬉しいが、野生に戻るのを考えるとあまりよろしくはない。
それぞれの住処があるのだから、変化させるのも申し訳ない。
「それも難しいだろうな」
「難しい?」
理由が分からず、首を傾げる。
爺ちゃんは説明を続ける。
「そのホーンラビットは角が折れているだろう。おそらく、群れから爪弾きにされるはずだ」
「あっ⁉」
そういえば、この子は群れから追い出されていた。
自慢の角を失ったのだから、ホーンラビットの群れにはいられないのだ。
つまり、仲間を失ったこの子は一人ぼっちなのだ。
野性に帰っても孤独になるのだ。
「一緒にいてくれるか?」
思わずそんな言葉が口から出た。
僕のせいで居場所がなくなった、この子にできる限りのことをしてあげたい。
「きゅいっ!」
ホーンラビットは元気に返事する。
大怪我をしていたとは思えない。
可愛らしい様子に笑みがこぼれる。
「一緒に過ごすなら名前を決めないとね。安直だけど、ラビなんてどうかな?」
「きゅいっ!」
ぱっと思いついた名前を口にすると、再び元気に反応する。
どうやらOKのようだ。
「爺ちゃん、ラビと一緒に住んでも良い?」
「まったく、そういうのは名付ける前に言うものだぞ?」
「ごめんなさい」
爺ちゃんの言っていることはもっともである。
動物を育てるのは難しいので、簡単に決められることではない。
「しっかり世話をするんだぞ」
「うん!」
爺ちゃんは許可を出してくれた。
僕は元気に返事をした。
笑顔でラビを撫でると、身体をすり寄せてくれた。
なんとも幸せな気持ちになった。
作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。
★5でも★1でもつけていただけると幸いです。




