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1-21 転生した少年は自室で目覚める


「うぅ」

「目覚めたか」


 意識を取り戻すと、爺ちゃんが声を掛けてきた。

 だが、森の中ではなかった。

 なぜか僕の部屋に戻っていた。


「ホーンラビットは?」


 すぐに爺ちゃんに問いかける。

 ホーンラビットを助けようとしたことは覚えている。

 あの後のことが気になる。


「そこだ」

「え?」


 爺ちゃんが指さす方を向く。

 僕の横で丸まって眠るホーンラビットの姿があった。

 すやすやと眠る姿はとても可愛らしい。


「まさか野生の獣にここまで懐かれるなんてな。これもレイの凄いところか」

「この子の境遇が他人事にも思えなくてね」

「ん?」

「いや、なんでもない」


 弱者であることに共感したとは言いづらい。

 優しくホーンラビットを撫でてあげる。

 気持ちよさそうに寝息が漏れる。


「そういえば、試験はどうなるの? 不合格だよね」


 気持ちが落ち着き、試験のことを思い出した。

 本来は目標地点にある目印を持って、往復することだった。

 だが、その目的は達成できなかった。


「たしかに本来は不合格だ」

「そうだよね・・・・・・って、本来は?」


 おかしな言葉に気づき、聞き返してしまう。

 一体、どういう意味だろうか?


「だが、今回は不測の事態が起きた。本来はもっと森の奥にいるクレイジーベアが現れた。あれは今のレイでは太刀打ちできないはずだ」

「そうなんだ」


 あの辺りにクレイジーベアがいることがおかしかったのか。

 たしかに不測の事態である。

 爺ちゃんも予測していなかったようだ。


「クレイジーベアと戦っていたことなど色々言いたいことがあるが、レイは十分に力を見せてくれた」

「まったく歯が立たなかったよ」


 僕の攻撃はクレイジーベアに効かなかった。

 相手の特性を判断し、攻撃するまではできた。

 だが、まったくダメージが通っていなかった。

 完全な実力不足だと思うけど・・・・・・


「そこは仕方がない。私が言いたいのは新たな【身体強化】の可能性のことだ」

「【身体強化】の可能性?」


 僕は首を傾げる。

 一体、何のことを言っているのだろか?


「そこのホーンラビットの治療をしたことだ。あれはホーンラビットの本来の回復力を強化させたのだろう」

「うん、そうだよ」


 質問にあっさりと答える。

 さすがに爺ちゃんも理屈はわかってくれたようだ。

 怪我をしたとき、生物の身体はその傷を治そうとする。

 僕はそれを強化したのだ。

 一か八かの賭けだったが、うまくいって良かった。


「そんなことができるとはな」


 爺ちゃんが感心してくれる。

 まさかそこまで評価されるとは思わなかった。


「今回は不測の事態があったが、新たな可能性を見せてもらった。よって、試験は合格だ」

「やった」


 特例ではあるが、試験には合格できた。

 思わずガッツポーズをしてしまった。







作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。

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