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1-21 転生した少年は自身の能力に懸ける


「きゅぅ」


 抱きかかえていたホーンラビットの声に気づく。

 だが、その声に力は無かった。

 左側に大きな傷があり、これが原因のようだ。

 クレイジーベアに攻撃を受けたときにできたのだろう。


「爺ちゃん、ポーションを持ってない?」

「すまない。私には必要ないから持っていない」


 爺ちゃんは申し訳なさそうな顔をする。

 傷を治すポーションがあれば欲しかったが、そもそも怪我をしない爺ちゃんには必要ないようだ。

 改めて凄まじい人である。


「きゅ・・・・・・」

「元気を出して」


 ホーンラビットの声が弱い。

 声を掛けるが、徐々に反応が薄くなっている。

 このままでは確実に命を落とすだろう。

 最初は敵として戦った相手だが、大事な物が壊れ、仲間はずれにされた弱者の姿に共感を覚えた。

 そんな相手を見捨てられるはずがない。


「僕が魔法を使えれば・・・・・・」


 自分の実力のなさに後悔する。

 傷を癒すことはできなくとも、傷を塞ぐことができれば可能性があっただろう。

 今の僕にできるのは【身体強化】だけで・・・・・・


「【身体強化】? 身体を、強化する?」


 あることに気がついた。

 もしかしたら、どうにかなるかもしれない。

 ホーンラビットの頭に手を当てる。

 そして、体内の魔力を集中させる。


「レイ、何をして・・・・・・」

「【エンチャント・リカバリー】」


 集中させた魔力を変換する。

 変換した魔法はホーンラビットに入り込み、白い光で包み込む。

 少しして、再びホーンラビットが姿を現す。

 先程と同じような姿だった。


「失敗・・・・・・いや、これは」


 何も起こっていないと思ったが、ある現象に気がつく。

 ホーンラビットの傷が徐々に癒えていく。

 普通ならあり得ない速度でだ。


「な、これはっ⁉」


 目の前の光景に爺ちゃんも驚く。

 初めて見る光景だったのだろう。

 【身体強化】を魔法扱いされていない世界なら当然だろう。

 僕だってできるか半信半疑だった。

 だが、成功して良かった。


「きゅぅ」


 ホーンラビットは弱々しいが、先程よりも元気に鳴く。

 まだ予断は許さないが、それでも峠は越えたようだ。

 休んでいれば、助かる見込みもあるだろう。

 僕は安心して、息を吐く。


(フラッ)

「あ、れ・・・・・・?」


 視界が突然斜めになる。

 なんだかとても眠い。


「レイっ!」


 慌てたような爺ちゃんの声が聞こえてきたが、僕は反応できなかった。

 そのまま視界が黒く染まった。







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