1-1 青年は恋愛の対象とならない
同時投稿2/3です。
「あはは、それはないわね」
「え?」
相手の言葉に僕は言葉を失う。
そんな反応に気づかず、女性は笑顔を浮かべていた。
「私のタイプは筋骨隆々の男らしい男なのよね。あなた、正反対のタイプじゃない」
「・・・・・・」
何も言えず、自分の体を確認する。
平均身長より10cm低く、痩せ型の体格──男としてはかなり小型な部類だろう。
たしかに彼女の言うとおり、正反対のタイプである。
「でも、嫌いじゃないのよね。むしろ、好きな方だと思うわ」
「えっ」
予想外の言葉に少し期待してしまう。
てっきりチャンスすらないと思っていた。
「友達・・・・・・というか、弟ね。それがしっくりくるわ」
「っ⁉」
だが、その期待はあっさりと壊されてしまう。
一度上がってから叩き落とされた形である。
この時点で僕の心は壊れかけて──いや、壊れていた。
「なんか庇護欲が掻き立てられて面倒を見てあげたくなるのよ。お菓子とか上げたら、ものすごく感謝してくれるし」
「・・・・・・」
好きな人からお菓子でも貰えば、男なら嬉しくなって当然だろう。
感謝の気持ちも強くなる。
だが、相手にまったく脈がないのなら完全な道化であるが。
「私のタイプじゃないけど、ルックスは整っているから彼女ぐらいすぐにできるんじゃない? その時は紹介してよね」
「あ、うん」
徹底的に打ちのめされ、生返事になってしまう。
きちんと告白したわけじゃない。
世間話の流れで彼女が「彼氏が欲しい」と口にしただけなのだ。
それに冗談交じりで(うまくいったら儲けものと思って)好意を伝えた。
結果がこのざまである。
(ブーッ)
大きなクラクションが鳴り響く。
振り向くと、自動車がこちらに向かっていた。
歩道に乗り上げ、周囲にぶつかりながらもスピードを落とすことはない。
完全に暴走している。
「っ⁉」
即座に逃げようとしたが、彼女はその場から動けなかった。
いきなりの出来事に頭が追いついていないのだろう。
この状況では致命的である。
暴走車はもう近くまで来ていた。
(ドンッ)
「えっ⁉」
横からの衝撃に彼女は驚く。
意識を向けていなかったので、そのまま体勢を崩す。
「(ニコッ)」
「まっ・・・・・・」
最後に笑みを浮かべる。
彼女を助けられたことで思わずそんな表情になっていた。
彼女の好みのタイプだったら、抱えて助けることもできただろうに・・・・・・
(ドンッ)
「かはっ」
重い衝撃に苦しげな声が漏れ出る。
全身に痛みを感じるが、それも一瞬だった。
(ガシャアアアアアアアアアンッ)
大きな破壊音が耳元で聞こえるが、今の僕には気にする余裕もなかった。
視界が一気に真っ黒になった。
ちなみに主人公は告白すらできていません。
それなのに振られるなんて可哀想に・・・・・・
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