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1-18 転生した少年は強敵に反撃する


 とある作戦を思いつく。

 一か八かになるが、やらないよりはマシだろう。


(ダッ)

「っ⁉」


 僕が走り出すと、音に気づいた熊がこちらを向く。

 背後から勢いよく近づいてくるのがわかる。

 一瞬で距離を詰められるのはかなり恐怖がある。


(ダ、ダンッ)


 追いつかれる前に僕は地面を蹴る。

 さらに、木の幹を蹴って宙を舞う。


(ブオンッ)

「?」


 僕を見失った熊はキョロキョロと周囲を見る。

 音で判断するのなら、音を出さなければ良い。

 蹴った音でカモフラージュもした。


(ゴスッ)


 【身体強化】した脚で熊の脳天に膝蹴りを入れた。

 いくら子供とはいえ、全体重がかかれば流石の熊でもキツいはず──そう思ったのだが・・・・・・


(ドゴッ)

「がふっ」


 全身に鈍い衝撃が伝わる。

 そのまま吹き飛ばされ、少し離れた木にぶつかった。

 頭がグラグラし、視界が揺れる。

 一体、何が起こった?


「グオオオオオオオオオオッ」


 熊が雄叫びを上げる。

 先程、木にぶつかったときに音が鳴った。

 立ち上がろうとするが、身体に力が入らない。

 絶体絶命のピンチだった。


(ドスッ)

「きゅうっ!」

「グアアアアアアアッ」


 可愛らしい声と共に何かが熊の目の辺りに刺さる。

 折れた角だとすぐにわかった。


「あれは・・・・・・」

「きゅっ!」


 逃げたはずのホーンラビットがいた。

 自慢の角を熊の顔に刺し、誇らしげな表情だった。


「早く逃げ──」

(バキッ)


 注意を促そうとしたが、遅かった。

 熊が顔を激しく動かしたせいでホーンラビットは振り落とされ、横薙ぎに払われた前足で吹き飛ばされる。

 僕から少し離れたところに吹き飛ばされた。


「きゅ・・・・・・」


 ダメージがあるのか、弱い声で鳴いている。

 頭から血を流しており、すぐに治療しないとまずいかもしれない。


「グオオオオオオオオッ」


 だが、そんな余裕はまったくない。

 怒った熊がホーンラビットに向かって突撃する。

 その状況を認識した瞬間、咄嗟に身体が動いていた。

 最後の力を振り絞り、ホーンラビットに覆い被さった。


「・・・・・・あれ?」


 だが、あるはずの衝撃がなかった。

 ゆっくり顔を上げる。


「自分の命を無駄にするのはもってのほかだ。だが、他者のために咄嗟に行動するのは評価できるな」

「爺ちゃんっ!」


 そこには優しげな笑みを浮かべる祖父の姿があった。

 片手で熊の突進を押さえていた。








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