1-16 転生した少年は仲間意識が芽生える
走って数分、木の下で落ち込んでいるホーンラビットの姿を発見した。
「きゅぅ」
落ち込んでいる姿はとても可哀想である。
まあ、自慢の角が折れて、仲間はずれにされれば落ち込むのも仕方がない。
「ねぇ」
「きゅっ!」
いきなり声を掛けると、ホーンラビットが飛び上がる。
驚かせてしまっただろうか。
戦闘になるかと警戒したが、そんなことはなかった。
「きゅ・・・・・・」
怯えた様子でこちらをじっと見つめる。
角という攻撃手段がなくなったのだ。
僕ですら恐怖の対象になったのだろう。
「はい」
「きゅ?」
ホーンラビットの前に折れた角を置く。
突然の行動にホーンラビットは首を傾げる。
言葉が通じずとも、何を考えているのかわかった。
「大事なものでしょ?」
「きゅっ」
ホーンラビットは嬉しそうに角を抱きかかえる。
折れたとはいえ、自慢の角である。
大事であることには変わりない。
「これから大変かもしれないけど、頑張ってね」
僕はその場から立ち去ろうとする。
戦った相手だけど、死体蹴りをする趣味はない。
今の僕にできるのはホーンラビットが元気に過ごせるように願うだけだ。
(バキバキッ)
「っ⁉」
近くで何かが割れる音が聞こえる。
振り向くとホーンラビットよりもかなり大きな影が現れる。
そこにいたのは──
「グオオオオオオオオッ」
「熊っ⁉」
一頭の熊だった。
黒い毛並みで人間の大人よりも明らかに大きい。
小さな僕なら見逃される可能性があるかも、そんな期待をうっすらしたが・・・・・・
(バキッ)
「っ⁉」
熊が前足で木を攻撃する。
かなり太い木の幹が3割ぐらい抉れていた。
それだけでどれだけ凄まじいかわかった。
「きゅぅ」
いきなり登場した化け物の存在にホーンラビットが萎縮をしていた。
明らかに食物連鎖の上位に位置している相手にビビらない方がおかしい。
「逃げろっ!」
「きゅっ⁉」
思わず叫んでいた。
本来は自分の身を守る方が先決だろう。
だが、僕にはあのホーンラビットを見捨てることができなかった。
弱者である点にどこか共感をしてしまった。
「きゅぅ」
「早く行けっ!」
悩んでいるホーンラビットに僕は再び叫ぶ。
その声にやっと駆け出した。
今回はしっかりと大事な角を持って行った。
これであの子は大丈夫だろう。
「ぐおおおおおおおおおおおっ」
「さて、僕はどうしようか?」
雄叫びを上げる熊を見て、僕は苦笑するしかなかった。
余裕そうな反応をしているが、全身の震えが止まらない。
とんでもない強敵が登場しました。
果たしてレイはどうなるか?
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